先日、自治体と連携して遺贈寄付の仕組みを整えている、SAMURAI Security株式会社の濱川智社長にお会いしました。こちらは東京都葛飾区や世田谷区、京都市などと連携し、平均単価約5000万円の遺贈相談を年間200件以上発生させたAIを開発している会社です。

遺贈寄付とは家族や親族といった法定相続人(一般的な相続)以外の、法人や団体、知人などに遺産の一部を贈れる制度です。例えば自分がお世話になったNPOに恩返ししたいとか、興味ある分野の活動を支えたいといった気持ちを寄付の形で表すことができます。
また仕組みとしては亡くなった後にお金が贈られるため、生きている間は当然ながら自分のために使えます。お金持ちだけが利用できる制度と誤解されることもありますが、金額の多寡も関係ありません。さらに法人などへの寄付は、非課税として優遇されてもいます。
そしてこの制度やSAMURAI Securityさんの活動は、寺社とも相性が良いのではとお話しを伺ってきました。
遺贈寄付を行いたい人は増加している
そもそもですが、現代社会は未婚率がどんどん上がり、単身世帯が増加しています。そしてこれから2050年頃まで、一人暮らしをする65歳以上の方も増えていきます。これを内閣府から出ていたデータを元に、ほーりーがグラフ化した図がこちらです。

1990年に162万人(男性:31万人、女性:131万人)だったものが、2020年には672万人(男性:231万人、女性:441万人)まで増えました。そして2050年には1084万人(男性:451万人、女性:633万人)になると予測されています。
傾向は知っていましたが、改めてグラフ化するとすごい増加速度ですね。
しかも今後の高齢者は、今までとは属性が異なります。現在は別居していても子どもがいますが、これからの高齢者は相続相手もいなくなります。そしてこうした方が亡くなった場合、何もしなければその財産は大半が国のものになります。
もちろん国が適切にお金を使ってくれるなら、それでも構わないと思われる方もいるでしょう。ただ税金の使われ方に全幅の信頼が置かれているとは言いがたいですし、自分のお金が社会にどのように役立っているかは見えにくいものがあります。また当たり前のように徴収されて、感謝されることもありません。このため自分の死後は想いを持った相手に財産を託したいという方が、今後は増えるだろうと予想されます。
実際にSAMURAI Securityさんから頂いた資料にも、こうしたデータが示されていました。

単身世帯の増加で深刻化する孤独・孤立問題
一方でおひとり様が増えると目立っていくのは、孤独・孤立問題です。これは大きくは生活面と精神面の2つに分かれます。
生活面では、例えば身近なところでは買い物があります。近所のスーパーからお米を持ち帰るのは、高齢者にとって一仕事です。家の中で電球が切れた時、それを新しいものに変えるのだって苦労します。転んでけがをすれば、そのまま寝たきりになることもありえます。
またもうちょっと制度的なことでは、金銭管理や病院での手続きなど、高齢者特有の差し迫った問題はたくさんあります。ほーりーも親が入院した時、病院から付き添いに来るよう言われましたが、身寄りがなければそれも不可能になるでしょう。
そして精神面ではやはり、話し相手の不在です。日常的な会話からいざという時の相談など、誰とも話せない環境は心を摩耗させていきます。

孤独・孤立は一日にタバコを15本吸う程度の、健康リスクに匹敵するとも言われています。また高血圧、アルコール依存症、うつ病、狭心症、糖尿病、認知症など、様々な病気を誘発する危険性も指摘されています。これは明確な社会問題ですし、遺贈寄付とは関係なく宗教としても乗り出していくべきものでしょう。
しかし現実には檀家さんや氏子さんが減っていたり、葬儀や法要、ご祈祷なども簡略化され、すべてが無償の精神だけでは寺社がつぶれかねません。
そこで積極的にコミュニティを作って人と関わり、その中で遺贈寄付の窓口も設けておくことは、苦しんでいる人を助けつつ寺社の存続にも寄与する手段になり得ます。またお布施や喜捨という文脈から考えれば、寺社がこれまで培ってきた精神性とも親和性の高いものです。
濱川社長も仰っていましたが、遺贈寄付とは生きている間に丁寧な関係を結んでいなければ生まれません。都合の良い集金手段ではありませんし、人を救う活動の結果として寄付されることもあるというものです。
その意味では年配者層と密接なお寺や神社にとって、遺贈寄付はこれからさらに深く考えるべきものになっていくのではとのことでした。
自治体による遺贈寄付増加の流れ
再びSAMURAI Securityさんの事例ですが、これまでの自治体と連携したケースでは、AIを活用したコミュニケーションが用意されていました。
この中で日々の挨拶や悩み相談などが行われ、ツールの一つとして寄付の窓口も用意されています。

遺贈寄付は制度上は少額からでも行えるものの、やはりまとまった金額になることが多いです。また仕組みとしても人生最後の寄付となるため、いきなり遺贈寄付から始まることはあまりありません。
このため小さな寄付から帰属意識が醸成され、そこから自治体であれば地元に貢献したいとか、寺社であればお堂を次世代に伝えたいといった気持ちにつながっていきます。
そしてSAMURAI Securityさんのシステムが優れているのは、AIによる日常会話がとても自然になってきていることです。ほーりーも試してみましたが、過去の会話も記録しながらパーソナルに寄り添ってくれます。
実際にまねたまというキャラクターの場合は2026年6月末にリリースして以降、利用者や利用時間は着実に伸びています。このまねたまを導入する場合は、寺社が負担する費用はありません。
また独自にアレンジする場合は料金がかかりますが、キャラクターをお坊さんにしたり、会話の中身を特定宗派に限定した言葉のみにするなどといったことも可能です。

もちろんすべてがAI任せではいけませんが、住職が毎日一人一人に挨拶し続けることも時間的に不可能です。なので日常の細かな接点はAIに補助してもらい、節目節目でお参りに足を運んで頂いたり、お坊さんや神主さんと話す機会を作りつつ、寺社を支える仲間となって頂くことはひとつの方法でしょう。
と、いうことで、、、
SAMURAI Securityさんでは、まねたま利用者の分析から新しいAIの需要予測も行われています。主な利用者ニーズは「話し相手が欲しい」「悩みや不安を解決したい」というものでした。

その中で遺贈寄付は、自分が未来において何を望んでいるか、そしてその実現に向けた次の一歩につながると言えるものかもしれません。
「うちに遺贈寄付してよ」なんて簡単に言える言葉ではないですし、人間を介さないから提案できることもあります。その意味でも、AIキャラクターはリアルなコミュニティ作りを支えるツールとなってくれるでしょう。
