西国三十三所1300年事業の記者発表会に行ってきました!
地獄に来る人が多くなりすぎて困ったえんま様が、罪の軽い人は地獄に来ないようにと、奈良・長谷寺を開基した徳道上人(とくどうしょうにん)に、観音様とご縁を結ぶための三十三個の宝印を授けられました。
そして得道上人が定めて(伝説ではいろいろ紆余曲折は経たものの)始まったのが、日本最古の巡礼所として知られる西国三十三所です。この徳道上人がえんま様に出会ったのが、養老二年(718)のこと。このため西暦2018年は、西国三十三所1300年の記念の年となります。
うん、すごい歴史ですね。四国霊場が2014年に開創1200年を迎えましたが、それより100年近く古いということで、最古の巡礼所の名は伊達ではありません。寺社コンにもよく「西国回っていまーす!」とか、「実は私、先達です」なんて人もよく来ますし、やはり四国と並んで抜群の人気を誇る巡礼所ではあります。
現在では総距離約1000km、和歌山県・大阪府・奈良県・京都府・滋賀県・兵庫県・岐阜県と、関西一円をぐるっと回るように札所が広がっています。三十三という数字も観音菩薩が人々を救う時に変化する姿の数とされ、観音様と共に深く信仰されるようになっています。
ということで、草創1300年まであと2年に迫っているわけですが、2016年1月26日に日本最古の巡礼札所「西国三十三所草創1300年」記者発表会があったので、参加させて頂きました。
場所は東京・浅草にある浅草寺(関東の観音信仰の一大拠点!)
そして会場はなんと、五重塔の中ですよ。正直、ここに入れる日が来るとは思わなかった。今回のイベントのお誘いを頂いた時、塔の中に入れるの! という脊髄反射で申し込みしちゃいました。
へへーん。いいでしょ。浅草寺の五重塔の前を歩いた人はたくさんいても、中に入ったことある人はそんなにいないんじゃないでしょうか。私も何十回も前を通っていましたが、一般公開された話は聞いたことがないですし。
ということで、こっそりと内部を大公開。こんな感じになっております。
広いホールになっているんですね。階段がありましたが、さすがにそこからは登れませんでした。いつか、登れる日は来るでしょうか。
西国三十三所1300年事業・記者発表会開催!
そんな感じで、塔内見学しながらしばらく待っていると、いよいよ記者発表会が始まります。テレビカメラも入っているのかな? 新聞社や雑誌などの各種メディアの方や、旅行会社、私のようなフリーで寺社旅に関わる人など、様々な方が詰めかけていました。100人近くは来ていたでしょうか。
そしてまずは各霊場から集まった僧侶による読経です。今回はそれぞれの札所となっているお寺からも、お坊さんが勢ぞろいしていました。私の知り合いのお坊さんもいましたね~。いやいや、33人もいると迫力あります。
法要の次は、主催者挨拶。石山寺座主・西国三十三所札所会の鷲尾遍隆会長からお話がありました。冒頭に書いたえんま様が困って巡礼所を作らせたというお話は、鷲尾会長がお話しされたもの。会場に笑いが広がり、和やかムードでスタートです。
そして、気になる記念事業の内容は?
今回発表されたプロジェクトは、大きく分けると6つあります。
○ロゴマークの作成
○建物や秘仏・文化財などの特別公開
○月参り巡礼
○西国札所 古道徒歩巡礼
○スイーツ巡礼
○アメリカ人僧侶による巡礼発信
順々に紹介していきまーす!
ロゴマークの作成
今回の記念事業に当たり、観音様をデザインしたロゴマークが作られました。
蓮の花に立つ観音様を図案化したもので、身体にまとった羽衣はそれぞれの霊場を結んだコースをなぞるように描かれています。このロゴは、旅行会社や各札所のスイーツ(後述)など、協力地域や企業などにフリー提供されます。
建物や秘仏・文化財などの特別公開
今回は何が公開されるという具体的な名称はありませんでしたが、西国三十三所は以前からいろんな形でご開帳や特別公開が行われていますし、構成されているお寺も歴史が古く、貴重な文化財を所蔵しているお寺が多くあります。
今回は記念事業ということで、これまで以上に様々なものが見られるでしょうし、これはやはり注目したいですね。
月参り巡礼
2016年4月から、月替わりで指定されるお寺で特別な御朱印が押されます。うーん。これは御朱印好きを狙った企画のようですが、6つのプロジェクトの中では私の位置づけはちょっと微妙ですね。
何より厳しいのは、それぞれのお寺で一日限り、しかも時間まで指定して行われることです。さらに注意書きとして、「諸事情で変更される場合があります」と書かれてますし。
ちなみにこれが、今のところ発表されている日程です。
いや、西国の札所って、けっして交通の便が良いところばかりではないんですよ。むしろ、行って帰るだけでもちょっとした旅行な立地も多いわけです。
そんなところで時間まで指定されると、わざわざ遠出して狙っても、もらえない可能性があります。これじゃかえって、お参りに二の足を踏む方も多くなるんじゃないでしょうか。
せめて1カ月間はずっととか、難しければ1週間は余裕を持たないと、ちょっとユーザーフレンドリーじゃないなというのが私の感想です。まあ、京都の清水寺や街中にある六角堂なんかは、このくらい厳しくても良いですが。
とりあえずこの試練を乗り越えてでも、頂きたくなるようなプレミアム御朱印を出せるか、そこが見どころではあります。
西国札所 古道徒歩巡礼
ライトなプロジェクトが多い中で光る、硬派な企画です。1300年前の巡礼を再現し、徒歩でお寺を回っていきます。
今回は西国三十三所の先達さんが、リードされるようです。西国三十三所の創始者である徳道上人ゆかりの法灯を携えて歩き、各寺院に分燈されます。
法灯はこんな形で持ち運ばれるようですよ。
そしてこの徒歩巡礼は、一般の人も参加できます。参加ルートは規定なし。一部だけでも歩けるだけの距離でもOKで、参加費も無料(ただし交通費・宿泊費・飲食費などの実費は各自負担)
先達さん達は西国札所を何度も歩いて行程を熟知されていることはもちろん、NPOを作って巡礼地図を作ったり、巡礼道に道標をおいたり草刈りをしたりなどしながら、西国三十三所の整備・普及に務められている方々です。
一緒に歩けばご利益も増しそうで、面白そうな企画ですね。
スイーツ巡礼
今回、最も報道陣の目を引いたのが、このスイーツ巡礼かもしれません。質疑応答でも質問が一番集まっていましたし。会場内にはずらりとお菓子が並べられ、事務局からも最も力を入れて売り込みたいという意気込みが伝わってきます。
これは各札所やその近辺のお土産物屋さんで販売しているスイーツを認定し、女性やファミリー、カップルなどに楽しみながら巡礼してもらうことを目的としたものです。
現在でも100種類以上、そして今後ますます増えていくとのことで、うーん、やっぱり甘いものは正義な方にとっては、見逃せない企画でしょう。
映像的にも映えますし、地元経済にも分かりやすく波及しますし、いろんな意味でこのスイーツ巡礼は、今回の記念事業の目玉になっていくでしょうね。
写真もガシャガシャ撮ったので、このスイーツ巡礼だけで、もう一本記事を書いても良さそうです。全部載せたら、ディスプレイが糖分で満たされますよ。
アメリカ人僧侶による巡礼発信
西国三十三所巡礼は、日本のみならず海外の方にも広まっています。私が行っている宿坊創生プロジェクトもこうした訪日旅行者を大きく見据えたものですが、西国三十三所としてもインバウンド需要は積極的に狙っていきたい分野のようです。
そこで今回大々的に行われるのが、アメリカ人僧侶 ジェシー・ロバート・ラフィーバーさんの巡礼発信です。
この方はもともと、2002年から13年間日本で修行を重ね、2015年6月に真言宗豊山派の権大僧都となられた方です。現在はハーバード大学で仏教や密教を専攻しながら長期休暇を利用しては来日し、西国三十三所巡礼しながらSNSで国内外にその魅力を発信しています。
こうした方をクローズアップすることで、外国の方にも西国三十三所を身近なものに感じてほしい。また海外の方の目を持って、新たな魅力発掘をしていきたい。そんな想いがあるようです。
さらに外国人向けの英語で説明が書かれた御朱印帳も展示されていました。この御朱印帳も仕掛けがちょっと面白いので、別記事で紹介します。簡単に言うと、付属のライトで光を当てると絵が浮かぶ仕組みです。
ということで、、、
盛りだくさんの西国三十三所草創1300年記念事業。2018年を中心に2016年から2020年までの5年に渡ってこれから展開されていきます。
今回は概要紹介でしたがこれから長期に渡って展開されるので、さらに多くのプロジェクトが生まれていくと思います。
西国ビギナーも、いくつか回ったけどまだいろいろ抜けがあるなという方も、全部回ったけどもう一度回りたいという方も、これを機会にじっくりお参りしてみてはいかがでしょうか?
伊勢神宮と出雲大社の式年遷宮に始まり、高野山開創1200年、そしてここからは西国草創1300年へと話題が続きます。
ますます目が離せない寺社巡り。私も寺社旅研究家として、動き回っていきまーす!