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これ以上仏像を盗まれないために、日本が今できること

韓国人には知り合いもいるので、この話題に積極的にふれるのは避けていたんですが、そろそろそうも言ってられなくなってきました。

もともとほーりーは韓国のお寺巡りのサイトも作っていたくらい、韓国には興味を持っていた人間だったんですけどね。さすがにここ5年で心が折れた。

と、いうことで対馬の仏像盗難の話題です。

時事通信の報道では、以下のように伝えられています。

長崎県対馬市の観音寺から2012年に盗まれ、韓国に運び込まれた県指定文化財の仏像「観世音菩薩坐像」について、「かつて所蔵していたが略奪された」と主張する韓国の寺が韓国政府を相手取り、仏像を引き渡すよう求めた訴訟で、大田地方裁判所は26日、韓国の寺の所有権を認め、仏像を引き渡すよう命じる判決を下した。

日本政府は日本への返還を求めてきたが、一層遠のく見通しだ。

正直言ってほーりーは、この件に関して甘い希望を持ちません。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の文化財不法輸出入等禁止条約では、盗難文化財の原則返還を定めていますが、ルールより日本憎しが優先される空気があるわけです。

対馬の仏像盗難で本当に考えるべきこと

今後の展望に希望が持てないとはいえ、返還を求め続けることはもちろん大切です。ごねればごねるほど得だと考えている相手に、ごね得を許すことほどの下策はありません。

が、一方でこれから本当に考えなければならないのは、地方に数多ある無人、もしくはそれに近いお堂から(韓国人相手に限りませんが)仏像をどうやって守っていくかです。

下の写真も仏像がなくなり、お札をお祀りしているお堂です。ここなんて東京のど真ん中にあるお寺なんですけどね。

宝珠院の仏像がなくなったお堂

そもそもとして、盗まれた仏像の統計データはあまり出回っていないようです。なのでまずはあれこれ回って仏像盗難がどの程度起きているか、推察できそうなデータを集めてみました。

文化庁の調査

文化庁では『国指定文化財(美術工芸品)の所在確認の現況について』という調査を発表しています。

国宝・重要文化財という大本丸のみですが、10524件の所在調査を行ったところ、172件が行方不明となっていました。このうち仏像が所属する彫刻は17件の行方が分からず、そのうち14件が盗難です。

ちなみに彫刻以外の紛失文化財を合算すると、155件中盗難は13件のみです。つまり

彫刻の盗難紛失率   82.3%
彫刻以外の盗難紛失率  8.4%

と、仏像(と、神像)は他の文化財に比べてダントツで狙われやすい状況がよく分かります。

守りが固く、売りさばけば足もつきやすい国の指定文化財ですらこんななので、他は推して知るべしですよ。

警察庁の調査

警察庁では犯罪情勢という統計情報を発表しています。こちらの平成25年(2013年)版に、神社仏閣での犯罪件数が載っていました。これによると神社仏閣で起きた侵入盗は1992件でした。

ちなみに住宅では63056件です。日本の住宅戸数が約6000万戸(国土交通省のデータ参考)、日本の寺社が約16万(共に約8万)あることを考えると

住宅の侵入盗率 0.1%
寺社の侵入盗率 1.2%

と、寺社は普通の住宅に比べて10倍以上も盗難に遭う確率が高いと言えそうです(大ざっぱな概算ですが)。

仏像の盗難状況

仏像の盗難状況をまとめたサイトでは、神社・仏閣・文化財の放火・破壊・盗難まとめ が詳しいです。こちらは仏像の盗難だけではありませんが、見ると日本各地で文化財が多数失われている状況がよく分かります。

また、仏像の盗難が多い地域と言われる和歌山県では、和歌山県立博物館で『防ごう!文化財の盗難被害』という企画展も行われていました。

こちらの記載では

和歌山県でも、平成22年(2010)~23年春にかけての1年間で、約60か所のお寺やお堂から、まつられていた仏像など160体以上が盗まれるという、過去に例のない連続文化財盗難被害が発生しています。

と、痛ましい状況が説明されています。

仏像盗難には何が有効か?

そんなわけで上記3つをまとめると、

・仏像は窃盗犯に狙われやすい
・お寺は窃盗犯に狙われやすい
・その結果、仏像はたくさん盗まれている

ということです。

こうした仏像盗難の被害状況はもっと数字で整理して、広く世間に知らせていくことがまずは何より大切でしょう。私が2006年に取ったアンケート(超古くて恐縮)ですが、

最近各地で仏像の盗難が横行しています。あなたの考えは?

○拝観を制限しても、セキュリティを強化するべき 26%
○拝観しやすい環境は維持して欲しい       63%
○どちらとも言えない              11%

でした。今、取ったら全く異なる結果かもしれませんが、こうした啓蒙がないといつまでたっても盗まれ放題です。

そしてこれからほーりーが仏像盗難に有効と考える手段は、

(1)秘仏も含めて写真を撮影しておく
(2)監視カメラを仕掛ける
(3)GPSトラッカーを仏像につける
(4)3Dプリンターによるお前立の制作
(5)仏像のLIVE映像配信による、ネット参拝の促進
(6)過疎地に宿坊を作り、人の出入りを活発化させる

などです。

(1)は抵抗ある方も多いですが、失ってしまっては手遅れです。これは早急に進めていくべきでしょう。

(6)の宿坊は、現在私が顧問を務める宿坊創生プロジェクトで進めていきたい方向です。が、過疎地まで展開していくのは、まだまだハードル高いです。(5)はあちこちで仕掛けて盛り上がればという感じですが、これまたハードル高いかな。

なので今後、注意して見ておきたいのは(2)(3)(4)の技術革新です。特に(2)(3)は世の中のあらゆるものに通用しますし、安価で手間が少なく初心者でも扱える技術がどんどん出てくることが予想されます。

現在、防犯設備の設置が進んでいないのは、費用面が大きな理由でもあります。なので新たな製品の登場によっては一気に解決に向かうと期待したいですね。

方向性としては下のような商品でしょうか。これがめっちゃ小型化・機能向上してくれたら、面白そうです。今はまだパクられた自転車を探すには使えそうですが、仏像盗難には力不足ですしね。



 TrackR bravo Item Tracker ブラボーアイテムトラッカー シルバー[並行輸入品]

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また、防犯とは方向性が異なりますが、先日見てきたIoT関連の開発者プレゼンでは、商品にひとつひとつタグを取り付けて状況を記録するような技術開発も行われています。

Pack-Logger

数百円で10年は使える超小型GPSトラッカーなんて開発されたら、仏像に限らず世の中の盗難自体が激減しますよ。この辺はもっといろいろ研究したいと考えていますし、技術動向に詳しい方がいたらお話を伺いたいです。

ということで、、、

以下の記事にも書きましたが、こうした仏像盗難防止分野で誰か専門家が出てくれないかということは、切に期待しています。

プロの寺社旅研究家を目指すなら、仏像だけは手を出さない方がいい

とりあえず詳しそうな本はこちらかな。私もまだ未読なので、基礎資料として、読みたいです。



 韓国窃盗ビジネスを追え―狙われる日本の「国宝」

 菅野朋子 著

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宝珠院の仏像がなくなったお堂

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