精進料理はここまで来た。東西宿坊のイタリアン精進料理対決!
精進料理。
それは肉や魚を使わず、地域の旬の食材を用いて、
作ることも食べることも修行とみなしてお寺に伝えられてきた食事。
ともすれば一汁一菜の質素な料理と思われがちですが、
宿坊では古くは遠くから旅をしてきた参拝者に
いよいよお寺に着きましたとその満願をお祝いする料理として、
華やかで手の尽くされたもてなしの食事が伝えられてきました。
そして去年の秋と今年の春。
奇しくも二つの宿坊で、それぞれ工夫を凝らしたイタリアン精進料理を
頂く機会があったのでご紹介致します。
まず、一軒目は長野にある善光寺の宿坊・玉照院。こちらは今年の春に泊まった宿坊です。
季節野菜のピクルス、南瓜の豆乳スープ、生のりこんにゃくのカルパッチョ、
特製胡麻豆腐、カポナータと黒胡麻パン、蕪・エリンギ茸・蕎麦米のリゾット、
柚子シャーベット、有機豆のコーヒー。
これは一瞬見た瞬間、おお! と、のけぞります。
特に珍しかったのは胡麻豆腐。富有柿が添えられ、
12年熟成させたバルサミコがかかっています。
なんというか、すっぱうまい!
そして、胡麻豆腐のもちもちと香ばしい胡麻の香り。
ミスマッチなようで、なぜかはまる。
素晴らしい料理でした。
そしてもう一軒は鳥取の宿坊・光澤寺。
実はこの宿坊は2012年にオープンしたばかりの、
まだ一年しか経っていない宿坊です。
善光寺永代宿坊として古くから受け継がれてきた玉照院とは、
ある意味対照的でもありますが、
宿坊と地域活性をテーマに講演を依頼されたこともあり、
3泊もさせて頂いてしまいました。
そこで出たのが、写真のイタリアン精進料理。
季節は秋。ぎんなんときのこのリゾット、油揚げと水菜のパスタ、ひじきとペンネ、
大根の粒マスタード添え、さつま芋とオレンジ、
豆乳ときのこのスープのオリーブオイル添えです。
こちらも並べられた瞬間、拍手喝采でした。
ちなみに私のおすすめは、豆乳ときのこのスープのオリーブオイル添え。
きのこがすり潰されているのでしょうか。口に含むと香りがふわっと漂います。
精進料理には志を持ち、
工夫を凝らして料理に取り組むことが説かれています。
ちょっと見るとあれ? と思うかもしれませんが、
こんな珍しい精進料理にも、いやだからこそ、
その精神は如何なく発揮されているのです。
玉照院の奥さんは宿坊を盛り立てるために、
何か新しいメニューを作りたかったと、
イタリアに詳しい方からアイデアを頂きながら一年かけて開発。
また光澤寺の奥さんも来た方に喜んで頂けるならと、
考え抜いてこの料理を作られたそうです。
ちなみに以前に高野山の宿坊を紹介するテレビ番組でガイド役を務めさせて頂いた時には、
総持院にてイタリアンの梅だれ精進パスタや中華風おこげ、
フレンチ風の生春巻きなどを頂いたこともありました。
そして今、イタリアン精進料理は、本としても出版されています。
精進料理はどこも心の込められた美味しい宿坊が多いですが、
時にはこんな変わったメニューを試してみるのもいかがですか?