石仏や石神像がもっと面白くなる! 吉田さらささんの『石仏・石の神を旅する』
石仏・石の神を旅する (楽学ブックス) 吉田さらさ 著 |
お寺や神社についての様々な著書を持ち、私の旅仲間でもある吉田さらささんが書かれた、石の神仏像の魅力を追った本です。
私もフェイスブックで仏像研究会などを運営していますし、各地の寺社を旅しながら、あちらこちらで石仏写真も撮影しています。そんな中でやはり日本には本当に無数の石仏が作られていると感じています。
また石神像は石仏よりは数が限られますが、それでも素朴で、時にははっとするほど精緻な像に巡り合いました。
そんな中で手に取った本書。読んでみて感じたことは、石神仏は改めて並べると本当に奥が深いなということです。
この本では東北・青森から九州まで、日本を縦断しながら132箇所もの石像が紹介されています。
とにかくその情報量は圧倒的です。吉田さらささんと一緒に旅をすると、いつも石仏に食いついて離れなくなりますが、そうした情熱が思いっきり本の中にも詰め込まれていました。
まずは「全国石の神仏10選」。各地に残る石神仏の中でも、川越喜多院の五百羅漢(埼玉)や国宝の臼杵石仏(大分)など、特に見ておきたい像がエントリーされています。
そして後はひたすら石神像・石仏オンパレード。吉田さらささんの解説と、長年石仏写真を取り続けたカメラマンの宮本和義さんによる写真で、これでもかというほど石神仏尽くしです。
ちなみに石仏で最も多いのはお地蔵様ですが、お寺の境内を歩くと、如来、菩薩、明王、天など、多くの種類が存在します。
また神像に至っては、長野県や群馬県でよく見られる道祖神や、鹿児島県や宮崎県の田園地帯で豊作が祈られた田の神さぁ(たのかんさぁ)など、民間信仰に基づく像も数多く祀られてきました。
そんな特徴的な分類が学べつつ、東京石仏傑作選や鎌倉の石仏めぐり、京都の様々なお寺で見られる美麗な石仏など、石仏歩きのガイドブックとしても役にたちます。
前書きの中で吉田さらささんは「鉱物の塊である石は、長い歳月の間に少しずつ風化して角が取れる」と、書かれています。
石工の想いと、像を拝んできた多くの人の祈り、そして時の流れが作り上げた芸術。それが石の神仏像なのかもしれません。
これまであまりなかった石神像や石仏のガイドブック。たまには変わった寺社巡りのお供にいかがでしょうか?
石仏・石の神を旅する (楽学ブックス) 吉田さらさ 著 |