円空仏の決定版とも言うべき書籍『円空 微笑みの謎』
円空 微笑みの謎 (ビジュアル選書) 長谷川公茂 著 |
日本各地を放浪しながら、生涯に十二万体の仏像を彫ったと云われる円空。
粗くノミ跡を残した力強い彫法や静かに微笑む穏やかな眼差しなど、
その異彩を放つ仏様は「円空仏」と呼ばれて多くのファンがいます。
私もその円空ファンの一人ですが、
私が初めて円空仏と逢ったのは、岐阜県の千光寺に伝わる両面宿儺像でした。
正確には仏像ではないかもしれませんが飛騨の英雄的怪人を彫ったもので、
円空の最高傑作のひとつとも言われる像です。
どっしりとした体つき。優しくも厳しくも見える微笑み。
その全身から放たれる近寄りがたさすら覚える威圧感には、
あっという間に虜になりました。
本書はそんな円空仏の決定版とも言うべき書籍で、
私にとっての円空バイブルです。
まず最初に紹介されるのは代表的な円空仏30選。
そして円空の生涯や日本各地に残された地域ごとの円空仏。
写真がふんだんに掲載されていて、
温かみのある仏様や威厳を感じる仏様など、
円空の魅力をたっぷり楽しむことができます。
さらに千七百首以上も歌われた円空の和歌についての解説もありました。
これは円空の和歌について全く知らなかった私には、かなり勉強になりました。
幼い頃に母を亡くした円空が、旅の中で何を想い、どのように修行に入り、
そして多くの仏像を彫っていったのか。
円空の和歌を読んでいると、
月や玉、円(まどか)という言葉がたびたび出てきます。
亡くなった母がどこに行ったのか。
それを経典の中に発見した円空は、ついに悟りの境地を得ます。
今に伝わる円空仏の心にもっともっと触れてみたい方は、
本書を強くお勧めします。
円空 微笑みの謎 (ビジュアル選書) 長谷川公茂 著 |