昭和から平成にかけての時代の回顧が、狛犬には凝縮されている!
THE 狛犬!コレクション―参道狛犬大図鑑 三遊亭円丈 著 |
狛犬研究家としても名高い、落語家の三遊亭円丈さんが書いた本です。
訪ねた寺社は二千数百。その先々でひたすら
狛犬写真とデータを取ったという情報量は半端ではありません。
狛犬の分類、地方別、時代ごとの特徴、
美狛犬や個性的な狛犬、そして狛犬がたどった歴史やエピソード。
流石に新作落語の鬼才と呼ばれる落語家さんだけに、文章は軽妙でネタも豊富。
しかしそれぞれの狛犬紹介は実際に読んで頂くとして、
ここでは本書の狛犬分類を紹介します。
関東中心に尾の下がった江戸タイプ。
岩で山を作り、親子獅子を置く獅子山。
近畿・東海・北陸に分布し、尾を立てて体がコロッとした京タイプ。
パンチパーマでまっすぐ座る仙台タイプ。
広島や尾道で流行った大きな玉に乗る玉獅子。
同じく広島に見られるかまえ獅子。
岡山を中心に拡がった備前焼の狛犬。
アゴがなくストンと胸になっている熊本タイプ。
他にもまだまだありますが、それぞれ地方色豊かだった狛犬。
本書の中では狛犬制作に活躍した石工列伝も紹介されていましたが、
これが昭和の工場生産時代に入ると状況が一変します。
すべてが同じ顔の昭和タイプ。
その後、バリエーションが増えた新昭和タイプも登場しますが、
やはり手作りの不均一さには敵いません。
画一のものを作ることが不可能だった手作り時代。
そこから技術が上がって大量生産が可能になったものの、
そこには省かれたコスト分だけ失われた個性があります。
昭和から平成にかけての時代の振り子が、
狛犬にはまさに凝縮されているのかもしれません。
まあこれは私が本書を読んで勝手に思ったことですので、
時代云々のセンチメンタルな内容はありませんが、
しかし狛犬を楽しく見ていきながら、
その特徴や歴史まで学べることは確かです。
ひとりの狛犬狂いによる狛犬ワールドに触れてみたい方は、
ぜひ本書をおすすめします。
私もこの本を読むまでは、狛犬がこんなに表情豊かであることを知りませんでした。
寺社巡りがもっと楽しくなる一冊ですよ!
THE 狛犬!コレクション―参道狛犬大図鑑 三遊亭円丈 著 |