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宿坊を開く3つのハードルが、これからどんどん低くなる

01.宿坊
 

宿坊の文字

ここ数日、宿坊界の未来を探る、大きなニュースが2つ出ました。

一つは民泊について。これまで民泊普及に高いハードルとなっていた宿泊日数の規制緩和が、閣議決定されました。

政府は25日、マンションなどの空き部屋を宿泊施設として活用できる「民泊」の宿泊日数について、現行の「6泊7日以上」から「2泊3日以上」に緩和する国家戦略特別区域法施行令改正案を閣議決定した。短い滞在の場合も利用しやすくし、外国人観光客の受け入れ拡大につなげる

産経新聞

そしてもう一つは、積水ハウスと東急電鉄による宿坊建設計画の発表です。

積水ハウスと東京急行電鉄は2019年にも、境内を気軽に散策するなど仏教を身近に感じられる寺院一体型のホテルを大阪市内に開業する。寺院の敷地に積水ハウスがビルをつくり、東急がホテルを運営する。

日経新聞

宿坊はこれから数年で、これまででは考えられなかった世界へと足を踏み出します。そこで宿坊を17年研究しているほーりーが、今後の宿坊展望を予測してみます。

これまで宿坊は数を減らしていた

まず、現状について。宿坊はこれまでブームと言われながらも、緩やかに数を減らしていました。主な理由は宿泊者数減少と後継者不足です。

「宿泊者数減少」は、これまでのメイン顧客だった講中や信仰団体の激減が影響しています。絶対数も減っていますし、高齢化に伴う参拝旅行の短縮・日帰り化など、定例化していた宿泊を取りやめる事例も多発しています。

また人気があった宿坊でありながら、後継者がいなくて廃業したところも私はいくつか知っています。他にもあと数年すれば、終了するかもしれないと危惧する宿坊も複数あります。

地域で言えば、「京都」と「四国」の宿坊閉鎖が激しいですね。

しかし減っていく一方、新たなオープンは限られています。私は宿坊を開設するための3つのハードルとして「初期費用」「旅館業の営業許可取得」「宿泊業を営むための技術・ノウハウの習得」を挙げていましたが、これらを専門家ではないお坊さんや神主さんだけでクリアするのは容易ではありません。

宿坊を開設するための3つのハードル。これを超えるために知恵絞っています

しかしここにきて、このハードルがどんどん下がり始めています。

宿坊を開く3つのハードルが、これからどんどん低くなる

宿坊を開設するための3つのハードルをそれぞれ順番に見てみますが、ひとことで言えばインバウンド需要の増加に伴い、ビジネス投資の損益分岐点を超えたことがハードルの下がった理由です。

初期費用

私が顧問を務める宿坊創生プロジェクトでは、ファンドを組んで数億円の資金を集め、大阪に宿坊を建設しています。

宿坊とファンドは軋轢を生みながらも、爆発的に広まる

上記の積水ハウスと東急電鉄の宿坊はどのような形か分かりませんが、同じような仕組みを取っているかもしれません。

宿坊創生プロジェクトで建設中の建物も積水ハウスが建てていますし、東急電鉄の野本弘文社長は、全日本社寺観光連盟(宿坊創生プロジェクトを推進する全国寺社観光協会の関連団体)の理事も務められています。少なくとも宿坊ファンドの仕組みは知っているはずです。

また、もっと小規模なものであれば、クラウドファンディングの活用も考えられます。2015年には当時、慶応義塾大学4年生の鈴木子音さんが、四国の宿坊PR動画製作にクラウドファンディングで50万円以上の資金調達を行い、成功させています。

日本の伝統文化“お寺”への宿泊を通して、四国の魅力を発信!

こうした事例を見れば、(次の民泊解禁と組み合わせて)宿坊開設にクラウドファンディングが活用されることも、予算規模的に不可能ではなさそうです。

旅館業の営業許可取得

これも「資本投入」と「民泊規制緩和」の二つの流れで整理できます。

まずは資本投入について。宿坊は様々な企業から熱い注目を浴び始めています。その最先端は「ホテル業界」「建築業界」「観光業界」です。どこも宿坊が生まれることでビジネスチャンスが広がり、なおかつ旅館業の取得ノウハウも持っています。

また、先日私は佐賀県の行政書士団体から講演を依頼されました。行政書士と言えば公的な書類作成のプロフェッショナルですし、こうした新しい業界の参入によるノウハウ流入も予測できます。

宗教法人に強い会計士とかも、活躍の場が広がりそうですね。

まあ、佐賀のイベントは開催6日前に「ビジネスと宗教を一緒に語るとはいかがなものか」という団体内部の声により急遽中止となりました。新たな分野との連携には、試行錯誤も必要です。

宗教からお金を切り離せと叫ぶ人は、ゴシップ記事に煽られすぎだよね

そして民泊の規制緩和は、そもそもこの旅館業の営業許可取得を不要にします。旅館業の営業許可を取得しなくても宿坊を作ることができる。これは画期的な展開です。

宿泊業を営むための技術・ノウハウの習得

宿坊を開設しても、ノウハウを手に入れるのはまた簡単ではありません。

埼玉県・大陽寺の浅見住職のように、自分で宿坊を作り出し、料理、接客、設備や備品の管理、取材対応や観光PRなどもすべて一人で行った上で、日経新聞で行われた初心者におすすめの宿坊ランキングでぶっちぎりの一位を獲得してしまったスーパー僧侶も中にはいますが、そんなことができる方はまれでしょう。

大陽寺の浅見住職

しかし私は宿坊の「宿泊部門」と「宗教部門」を切り分けた対応は、これからどんどん広がっていくと考えています。

宿坊創生プロジェクトには宿泊運営を行っている会社が参画していますし、私が去年開催した宿坊スタートアップミーティングには、宿坊の運営を引き受けたいという旅館経営者も出席されました。

宿坊スタートアップミーティング開催! 宿坊をテーマに真剣な未来を考えています。

また、地方には民宿やゲストハウスを開きたいという人も大勢いて、小規模な宿坊であればそうした方とのコラボレーションも現実的です。これも私が地域おこし協力隊の研修会でお話してきた例ですが、お寺と組んで宿坊を作るという話は熱心に聞かれていました。

Amazonで派遣僧侶になるなら、地域おこし協力隊と組めばいいじゃない

ちなみにその時紹介したモデル図はこちら。

地域おこし協力隊と兼務住職

宿坊数の下降トレンドが反転する

こうした状況により、これから私の予想では、ここから宿坊数の下降トレンドは反転していきます。いや、私が顧問を務めている宿坊創生プロジェクトでも宿坊を作り始めているので、予想も何もあったものではありませんが。

現在、日本には宿坊が500軒程度存在しています。ただこれは最大数で、「常時」「少人数」「広く一般に開いて」宿泊客を受け入れている宿坊となると、300軒を切るでしょう。

この宿坊が果たして今後、どこまで増えていくかは分かりませんが、1.5~2倍程度に増えたとしても不思議ではありません。

果たして宿坊はどのように変わっていくのか。せっかく宿坊創生プロジェクトにも関わっていますので、いつも通りの宿泊者目線で良い文化を生み出せるように走り回っていきます。

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