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新型コロナウイルスによる混乱は、宿坊の価値見直しにつながる

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二尊院の客室

 このブログでも新型コロナウイルスが寺社に与える影響について、いくつか記事を書いてきました。今回はその中でもほーりーの中心テーマと言える宿坊について述べてみます。

 現在、最も影響を受けている業界の一つは、間違いなく宿泊業です。例えば共同通信の記事によると、大阪のアンケートでは

府内の宿泊施設の9割が「深刻な影響がある」と回答し、8割で3月の稼働率が40%を下回った。

とのことです。同様のニュースは国内・国外問わず上がっているので列挙は避けますが、宿坊に限定しても高野山や身延山などで人が減るなど、やはり影響は少なくないようです。

 また、現在ほーりーが宿坊開設の準備を一緒に行っている山口県の二尊院でも、オープン時期を春から夏にずらすことになりました。

 その意味では、寺社の新たな可能性として盛り上がっていた宿坊の波も、そろそろ終わりかなんて言葉を耳にします。

コロナウイルスによる混乱は、必ず収束する

 しかしほーりーは、まったく逆のことを考えています。新型コロナウイルスによる落ち込みは、今まで宿坊開設の検討をしながら、具体的に動けていなかったお坊さんや神主さんにとっては一歩踏み出す機会です。

 その理由は以下の3点です。

 ○コロナウイルスによる混乱は、必ず収束する
 ○世界的な観光産業の発達は、これからも止まらない
 ○宿泊施設を開業するには時間がかかる

 今回は上記について、まとめていきます。

コロナウイルスによる混乱は、必ず収束する

 現在のパンデミックがどこで収束するかは、世界中の専門家でも意見の分かれるところです。しかし現時点で分かっていることは、このウイルス性肺炎による致死率は、それほど高くありません。

WHOが中国政府と合同で実施した調査、解析、評価の報告書が公表されています。こちらは4万人以上の中国における症例データをもとにまとめられたもので、その発表を抜き出すと、以下の通りです。

COVID-19 ウイルスに感染したほとんどの人は、軽症で回復する。肺炎以外と肺炎の症例を含む、検査確定例の約80%は、軽症から中等症である。

2 月20 日の時点で、55,924 の検査確定例のうち2114 人が死亡した(致死率3.8%)(注:少なくとも一部は、肺疾患を含む症例定義を用いて特定されている)。

 致死率は3.8%であり、そのうちの一部はもともと別の疾患を持った方です。ちなみに2003年に東アジアを中心に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の致死率は9.6%、2012年にアラビア半島で発生したMERS(中東呼吸器症候群)は35%以上です。

 つまり病院に患者が殺到して起こる医療崩壊(新型コロナに関わらず、適切な処置を受けられない人が増える)は怖いですが、今回の肺炎が原因で人類が死滅することは考えられません。

 すでに世界では、人類の英知を注ぎ込んでいると言っても良い状況です。すぐにとはいかずとも治療技術や予防方法の確立は進みますし、いずれ落ち着いていくことはほぼ確実でしょう。

世界的な観光産業の発達は、これからも止まらない

 景気低迷が続く日本では実感が得られませんが、10年前、20年前と比べれば、世界は間違いなく豊かになりました。これはそのまま海外旅行に出られる人が増えたと、言い換えても良いものです。

 そしてこの流れは、今後もしばらくは止まりません。新型コロナウイルスの流行によるもう一つの危機として、経済不況があります。世界中で株価は大きく下落しましたし、これから倒産企業や失業者は増加してくるでしょう。

 しかしこれもまた上記のコロナ収束と連動しますが、経済がいつまでも落ち込み続けることはありません。現在も世界中で金融政策や困窮者への支援制度が生まれています。

 それらはけっして一度に経済を回復させる決定打にはなりませんが、破綻を回避する下支えとしてこれから数年かけて機能します。

 このため観光業界も人の移動に安全性が認められてくれば、今までダメージを受けた分だけ多くの国でテコ入れされます。一時的なリセッションはあっても、長期トレンドまで変わることは予想できません。

宿泊施設を開業するには時間がかかる

二尊院の宿坊建設中

 数百人規模で泊まれる巨大なホテルであれ、一日一組限定の宿坊であれ、宿泊施設を開業するには時間がかかります。その意味でこれから数年で起こることをまとめると

 ○宿泊者の需要はやがて回復する
 ○宿泊施設の供給数はしばらく増えない
 ○数年先を見越して宿坊開設準備を始めることは、大きな弾みになる

 ということです。

 繰り返して述べれば、需要回復がいつになるかは分かりません。今年中にV字回復するかもしれませんし、5~10年くらいかけて緩やかに戻る可能性もあります。
 
 なのでもし現在、宿坊開設を考えながら動けていなかったという寺社があれば、ひとまず基礎資料の取得や構想を練るなど一歩動き出すには最適なタイミングです。

 そして必要なことは、できるだけスモールスタートで考えることです。一日一組限定とか、多くても数室程度など、巨額な予算をかけずに歩き始めることで、需要回復時期の見込みがずれても許容しやすくなります。

ということで、、、

 結論的なことを述べると、ホテルや旅館でも固定のファンを獲得している施設は、大きな減衰が起きていません。

 例えば日経ビジネスに掲載された、星野リゾートの星野佳路代表インタビューによると、以下のように述べられています。

小規模で個人客がターゲットの温泉旅館のうちインバウンドの比率が高くなかったところは、意外に維持できている印象だ。

(中略)

5月、6月、夏に向けての予約も入っているが、それが極端にキャンセルが増えているとか、予約が減っているということはない。むしろ国内は動いている印象だ。逆に海外からはほとんど入ってこない。

 宿坊はリピーターも多いですし、まずは国内需要から回復していきます。そして世界中の観光トレンド増加に沿って、また大きく華が開いていくでしょう。

 なので今こそ仕込み時と煽るつもりはありませんが、どちらにせよ宿坊を作って運営していくとなれば、数年から数十年先を見越した大きなプロジェクトです。

 例えば熊本県の了廣寺は、宿坊を作る工事を始めた途端に熊本地震にあって庫裏が半壊しました。

熊本地震で半壊した庫裏を宿坊によみがえらせた、了廣寺の奮闘記

了廣寺(熊本)

 これからも確実に、今回とはまた異なるトラブルや逆風は生まれます。なので悪い時こそ丁寧に、着実に、そして良い時にも無理をせずに。

 現在はせっかく外出も自粛を促されているので、家の中でじっくり構想を練りつつ。宿坊は人生に行き詰った人の駆け込み寺ともなるため、世間が次にパニックに陥った時こそ人々を安心させられる存在として、周りと違った発想で舵を切って頂けたらと思います。

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