全国寺社観光協会が寺社界に与えるインパクトは見逃せない!
今年に入って一般社団法人・全国寺社観光協会さんの宿坊創生プロジェクトでアドバイザーとして活動させて頂いていますが、私が寺社Now、寺社Now言っていることもあり、私の周りにいるお坊さんや神主さんたちにも、少しずつこの組織の名前が知れ渡ってきたようです。
が、そうなると今度は、全国寺社観光協会ってどんなところ? 何をやっているの? とか、もっと率直に怪しいところなんじゃないのと不安に思われる方もいるわけです。
いや、本当ね。急に現れて(設立は2014年)、すんごい勢いであちこちの寺社と連携していくわけですよ。しかも官公庁や様々な企業とも強く結びついているし。周りの反応を見ていると感じるのは、なんだこの黒船は? ってところでしょうか。
無視するには大きなエネルギーを持っているし、かといってこれまでの寺社業界ではほとんどいなかったプレイヤーなので、どう判断してよいか分からない。そんなわけでとりあえず周りで一番つながっていそうな私に、あれってなーに? という質問が集まってきています。
まあ、私も最初に全国寺社観光協会の岡本理事からメールを頂いた時、何やっているところなんだろうと恐る恐る会ったので、気持ちはたっぷり分かりますが。
ということで、一つ一つ質問に答えていくのも大変なので、とりあえずはこの全国寺社観光協会さんの活動について、まとめてみることにしました。
全国寺社観光協会とは
そもそも全国寺社観光協会とはどんなところか。設立趣旨には以下のように書かれています。
ひとりでも多くの方に 寺社へ足を運んでいただくために
現代社会では、神仏という存在は私たちの生活にとって遠いものになり、古くからの伝統も少しずつ消えかけています。
日本の伝統や文化そのものと言える伝統寺社の多くは、地域の疲弊や参拝者の減少などにより、その存続が危ぶまれています。
一方、伝統寺社は“文化的・芸術的価値のある存在”として外国人旅行客から非常に人気が高く、日本文化を理解してもらうための重要な観光資源です。
日本政府も「訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)」として、2020年の東京オリンピック開催に向け、2000万人の訪日外国人旅行客達成を目指しており、その側面からも「神社や仏閣の存在」が重要性を増しています。
私ども「全国寺社観光協会」は、伝統的寺社を「寺社観光」という視点で見つめ直し、 日本の宝である寺社が未来に渡り長く存続・繁栄するための一助となるべく設立されました。
簡単に言えば観光を切り口に寺社を次代につなげていこうというものですが、これは私が多くのお寺や神社に出かけたり、お坊さんの研修会で講師として話をさせて頂く中で、抱いていた問題意識と全く同じものでした。
今後、お葬式や法事だけではお寺は立ち行かなくなる。その時に役に立つのは宿坊を作ることだと私は考えています(もちろん、宿坊だけで全て賄えるわけではありませんが)。これと全く同じことを考えている人が現れたことは純粋に私にとっては嬉しかったことですが、それが宿坊創生プロジェクト(日本中に宿坊を作るプロジェクト)のアドバイザーとして契約をさせて頂いた理由です。
全国寺社観光協会さんの宿坊創生プロジェクトアドバイザーに就任しました。
全国寺社観光協会って何がすごいの?
私が考える全国寺社観光協会さんのすごさは、とにかく寺社組織の外から強烈なパワーを持って生み出されていることです。そしてそれがこれまで限られた範囲でしかなかった行政・産業・寺社の連携を、一気に推し進めています。
会長の藤野公孝氏は平成15~21年に参議院議員として観光立国推進基本法の成立に尽力され、現在は全日本シティホテル連盟代表理事を務められるなど、観光や宿泊業の最前線に立たれている方です。
ちなみに詳しい経歴は、ウィキペディアをどうぞ。
また、推進委員会には道明寺天満宮の宮司で平成25年・26年度神道青年全国協議会会長を務められた南坊城光興氏や、第19代全日本仏教青年会理事長の伊東政浩氏もいます。
ついでに私も、この推進委員会の一員になっています。
うむ。実は、推進委員が何をするものか、まだ何も聞いていませんが。
ただ協会の方とはちょこちょことお会いしたり、電話やメールでお話をさせて頂いていますが、現在はとにかく観光立国化の流れに寺社観光を乗せられるように、超急ピッチで組織・体制づくりや事業提携を進められているようです。
この辺の動きがある意味周りから不気味と取られ、何をやっているんだろうと興味をそそり、そして鼻のいい方はこれまでにない大きな波が動き始めていると感じ取られている理由でしょう。
全国寺社観光協会の活動
それでは現在、全国寺社観光協会さんが何を行っているか? 告知されている主な活動は以下の4つです。
寺社Nowの発行
隔月で発行されている機関誌・寺社Now。私も現在『宿坊研究会レポート』を連載させて頂いていますが、毎号面白い記事がたくさん掲載されています。
例えば成田空港から東京へと素通りしてしまう外国人旅行者の誘致に成功した成田山新勝寺や、ミシュランに紹介されたことを契機にフランスなどで地元に伝わる料理や山伏文化の紹介を行う山形県出羽三山の取り組みなど、海外への観光PR最先端情報をがっちりと取材。
また、中部北陸9県が設立して地方観光ルート形成の代名詞ともなった昇龍道プロジェクトやバリアフリー化を推し進めるユニバーサルツーリズム、文化財保護のための防犯設備補助金制度の解説など、行政が進める制度も多数紹介。
さらにはお寺による介護事業への参入方法や環境問題への取り組み、仏前結婚式など、新しい形での寺社活用提案もハッとさせられます。
しかも、この寺社Nowはお寺や神社の方であれば、毎号無料で送って頂けます。現在は全部で3万部発行されているとのことで、郵送代だけでもとんでもない投資額です。
宿坊ポータルサイト 和空
宿坊創生プロジェクトにも直接つながるところですが、宿坊ポータルサイト和空も作られています。
こちらは現在鋭意製作中のようですが、まずは100軒ほどの宿坊を取材して紹介する宿坊の紹介サイトです。というわけで、思いっきり宿坊研究会と被っていますね。この点では私と全国寺社観光協会さんはライバルと言えるかもしれません。
とは言え、多言語での宿坊紹介や寺社イベントに力を入れるなど、方向性の違いもいくつかありますし、宿坊研究会ともお互いの持ち味を生かしながら、上手い連携ができていければと思っています。
宿坊はまだまだ趣味人の領域なので、小さなパイを取り合うのではなく、宿坊市場自体を拡張する方向で手を組んでいければ、私にもメリットはあるかな~と(ドキドキしながら)考えております。
寺社探訪アプリ いっとく
インバウンド観光を推進するためのアプリ『いっとく』の開発にも乗り出されています。このアプリは観光立国調査会(自民党本部)でもプレゼンされています。
ちなみに堀内詔子衆議院議員のツイート。
本日(15日)、観光立国調査会「文化財、社寺観光に関する小委員会」に出席しました。社寺紹介アプリの利活用による社寺観光振興について、全日本社寺観光連盟から社寺観光アブリ『いっとく』についての紹介がありました。… http://t.co/wvsO0qcdxY
— 堀内のりこ (@genkihoriuchi) 2015, 4月 15
『いっとく』はひたすら寺社情報の提供にこだわり、独自の探訪コースを設定していることに特徴があります。多言語展開も予定されているので、海外の方が日本の寺社巡りをするうえでのツールとしても期待できそうです。
特に日本の観光情報って、東京や京都、北海道、沖縄などの知れ渡ったスポットを除いて、多言語情報ってほとんどないんですよね。
もちろん、寺社の情報だけが多言語化されるのではなく、交通手段や宿泊施設の言語情報も必要なのですが、この分野はブルーオーシャンだけに早く手を付けたもの勝ちでもあります。
いっとくは現在、まだリリースはされていませんが、全国寺社観光協会さんでは、掲載希望の寺社も募集されているので、観光に新たな流れを起こしたい寺社の方は問い合わせされてみてはいかがでしょうか?
縁プロジェクト
最後は寺社を交流スペースと捉えたイベント事業。
先日、大阪天満宮で『寺社観光推進交流会開催』が開催されていましたが、これはこれまで関わる機会の少なかった寺社と産業界の方の交流会で、大きく盛り上がっていたようです。
上の説明画像を見ると、他の3つと比べたらありきたりな感じで魅力が今一つ伝わらない(個人的には、もっと大きなビジョンを持って説明してほしい)のですが、全国寺社観光協会さんは行政や産業界とパワフルなネットワークを持っているので、閉塞的な寺社の人的交流に風穴があくのではと期待しています。
私は今後、寺社と企業や行政コラボはどんどん増えていくと予想していますし、逆にそれが増えていかないようだと寺社の世界も苦しくなっていきますし。
縁プロジェクトは国家や日本の産業界を巻き込んだ、これまでの寺社イベントととは一線を画する規模の交流事業になっていけば、波及効果も含めて面白いことになっていきそうです。
ということで、結局全国寺社観光協会ってどうなの?
まとめてしまえば、全国寺社観光協会とはどんなところか。はっきり言ってしまえば、今はまだ卵の状態と言っていいでしょう。なんて私が言うと、かなり偉そうですが。
ですが、全国寺社観光協会さんが描いているイメージを考えれば、現在はまだ何も形になっていません。なんといってもまだ作られて一年ちょっとの組織です。観光という観点から寺社の魅力を掘り起こし、受け継がれた貴重な文化を次代に継承していくという使命を考えれば、そんなすぐに形を作れという方が無茶でしょう。
ですが現在の日本の課題と目標に見事にマッチしており、そして本気の資金と技術投入の意志を感じる、これまでになかったプレイヤーです。行われているプロジェクトがそれぞれ花開いていけば、世界に対しても大きなジャパン・インパクトを生み出していけます。その意味では私は卵は卵でも、恐竜の卵かなと思っています。
先日、一緒に宿坊スタートアップミーティングを開催させて頂きましたが、私自身はこれからもいろんな形で一緒に寺社を盛り上げていけたらと考えています。
ということで寺社の方もせっかくのこの流れ。ガンガン乗ってしまってみてはいかがでしょうか? まだまだ卵状態のうちから関わっていった方が、10年後に面白い夢が見られるかもしれませんよ。
ご興味ある方がいれば、とりあえず全国寺社観光協会さんに連絡して、寺社Now(無料)を送って頂くところから始めると良いと思います。