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向源、寺社フェスやめるってよ。メディア発表会に参加して

先日、世界最大級の寺社フェス・向源のプレス発表会に参加してきました。

向源プレス発表会

向源はここ数年、お坊さんが企画している中でも最も大きな注目を集めるイベント。2011年に来場者70名だった一寺院の声明ライブが、寺社フェスの名の通り様々なお寺・神社体験をそろえて2015年は6000名が来る巨大イベントに成長。私も2年目から毎年遊びに行っており、そのレベルアップぶりに度肝を抜かれています。

というかね。代表の友光雅臣さんの「東京オリンピックが行われる2020年に、600万人動員して文化のオリンピックにする」というクレイジーなビジョンに惚れて追っかけやってます。

向源ロードマップ

私も2002年の日韓ワールドカップの時、決勝の舞台となった横浜で仲間たちとブースを作って外国人との交流イベント開いてましたし。オリンピックを機会に日本を知ってほしいというコンセプトは、なのでとても共感できるわけです。

2016年の向源は、寺社を出る

それはともかく、2016年の向源。今年は去年の2日開催から一気に広げ、神田明神、日本橋、増上寺の3ヶ所で1週間かけて行われます。

向源の地図

で、上の日程を見ると、気がつくわけです。初日は神社、最終日はお寺ですが、途中の5日間は街中で行われます。この狙いを聞くと、

「寺社だけでやると、寺社が好きな限られた人しか来ない。普段、寺社とは全く関わりのない人が足を運ぶイベントにすることは、2020年の600万人動員に到達するためには乗り越えなければならないハードルです」

「街中でやることは、寺社と違って多くの人の日常に飛び込むことになる。そこは聖域ではなく、お寺・神社だからといった甘えが許されなくなる。お坊さん・神主さんがそれに耐えられるかということも、今回の向源では試練となる」

とのことでした。

友光さん、本当にいいとこ突いてきます。お寺や神社の社会って、アウェイに出るとどうしても大衆迎合みたいにさげすまれやすいのですが(テレビ番組・ぶっちゃけ寺とか)、はっきり言って一番きっつい部分なんですよね。

私がお坊さんの講習会で講師をするときも、ここへのチャレンジの大切さとその効果はよく話をさせて頂きます(以下はその資料)。

小さな階段

向源はこれまでもこの小さな階段の一番下を作ってきましたが、それをさらに細密化していったわけです。

向源、寺社フェスやめるってよ

そして、日本橋という街の設定も絶妙です。若者が集まる渋谷や原宿でも、一流ビジネスマンが集う銀座でも、アニメの聖地・秋葉原でもなく日本橋。

特に向源副代表の青江覚峰さんは浅草のお寺の住職。寺社色や古き良き日本をチョイスするなら浅草の方がスムーズに事が進んだと思いますが、この日本橋を選んだところに向源の狙いが見えます。

だって、日本橋って歩いていても、そんなにお寺や神社は見えてきません(福徳神社が大工事してるのは、個人的に超気になってますが)。歴史の香りを探すなら、洋館散歩が似合う街です。

日本橋周辺

しかし東海道の起点であり、江戸時代から商業が発達。近代に入ると商業地や金融街としての開発もあり、最近ではコレド室町が大人気。東京の中でもここほど過去と未来が混ざった街はないでしょう。

そんな場所でのイベント開催。向源ではこれまで日本文化の体験にも力を入れていましたが、今回はこれを前面に打ち出してきました。コピーも『ニッポンを遊べ。』ですし。

その意味で私がメディア発表会で聞いたことをひとことで伝えるならば、「向源、寺社フェスやめるってよ」だと思っています。

(これは私の感想です。向源のパンフレットにはしっかりと「寺社フェス」の文字が入っています)

寺社を出たからこそ、向源に生まれたもの

街に出た向源。そこで生まれたものは、日本橋の企業や職人とのコラボレーションです。早速、三井や三越、野村不動産などとも手を結ぶことになったそうです。

私は去年の向源に参加して、お坊さんや神主さんが新たなコンテンツ作らないと、異業種コラボだけになっちゃうよと感じましたが、むしろ寺社だけという枠は外すことを選んだわけですね。それはそれで潔いです。

そして、面白かったのは職人さんとのコラボレーション。寺社の3割は消えていくと言われる昨今、それらを次世代に活かしてつなげるために宿坊創生プロジェクトも行っている私ですが、似たような話題として古来からの技術を受け継ぐ職人に仕事がない、後継者がいない問題にも興味を持っています。

例えば今回、つまみ細工を作るワークショップが行われます(以下はGoogleの画像検索)。

つまみ細工

つまみ細工とは、舞妓さんのかんざしなどにも使われる江戸時代の工芸品。しかし現在、つまみ細工だけで生活できる職人は日本に4人しかおらず、しかも全員高齢で後継者がいません。

たぶん、もう何年かしたらこの技術は失伝し、中国製に取って代わられるだろうとのこと。もともと舞妓さんは二四節季ごとにかんざしを変え、現在も一ヶ月に一度は変えているそうですが、中国製になると春夏秋冬しかなくなるそうです。

なので現在はつまみ細工作りのワークショップを多数行い、技術をすべてオープンにする。そして体験した人の中から一人でも二人でも趣味から始めてプロになればと、職人さんたちも期待されています。これもまた、宿坊巡りという趣味が高じてプロの寺社旅研究家となった私としては、応援したいプロジェクトです。

他にも和紙やお香、和綴じ、勘亭流(歌舞伎の看板に使われる江戸文字の書体)など、向源でワークショップを担当される職人は16名います。

前に向源でお能の体験ワークショップに参加させて頂きましたが、あれも衝撃的でした。私としてはこの流れはぜひ継続していって、向源をお坊さんや神主さんだけでなく、伝統工芸や芸能に携わる人が一大集合する祭典にしてほしいと思います。

向源に行けば、知らない日本に会える。そしてその出会いが次世代に伝統を残すきっかけになったら、ワクワクするよね。

街に出るお坊さんたちの挑戦

日本橋がメインフィールドになり、「寺社フェスやめるってよ」と挑発的なタイトルをつけても、やはり向源の大元はお坊さんです。

日本橋各所で坐禅や阿字観などの修行体験、仏教世界を体験する「極楽箸で心と向き合う」、お坊さんによる人気コンテンツ「暗闇ごはん」「死の体験旅行」があります。

私の中での一押しは、今回のニューフェイス。向井真人さんというお坊さんが作ったボードゲームですね。私もこの前、『御朱印あつめ』と『檀家』を体験してきましたが、記事がバズってびっくりしました。

また、今回は2人の料理僧・向源副代表の青江覚峰さんと、広島の吉村昇洋さん×日本橋の名店による精進コラボ飯もあります。

中華の鉄人・陳建一氏のお店「四川飯店」、オーガニック料理を提供している「泥武士」、鰹節のにんべんが作った「日本橋だし場はなれ」がそれぞれ精進料理で味わえます。

いやいや、鰹節ってそもそも精進料理に使っちゃいけない食材じゃん。どうすんのよと思う方は、ぜひ自分の胃袋で確かめてみてください。ちなみにプレス発表会で試食がありましたので、チラ見せ。

精進コラボ飯

そして最終日の増上寺は、プログラムを見ると去年までの向源と近い形になるかな。お寺では仏教コンテンツが一気に多くなり、「写経」「写仏」「念仏と礼拝」「5宗派のお坊さんによる般若心経トークショー」「飛び出す阿弥陀、うごめく地獄」などが楽しめます。

そんなわけで、2016年も向源に期待ですよ~

というわけでいよいよ一か月を切り、「日本語見るのもやだ」という忙しさ絶頂の副代表・青江さんに、ちょっと書いてと無理やりメッセージ頂きました。

向源副代表・青江覚峰さん

今年の向源の裏のテーマは「冒険」。

今まで寺社フェスの名の通りお寺や神社を舞台に開催をしておりましたが、日本の文化を最も身近で感じることのできる「伝統商売」とご一緒したいとの思いから日本橋での開催をすることとなりました。

日本橋は江戸期から続く商売が多く続く老舗の街であり、「日本の文化を体験する」という向源のコンセプトに合致いたします。

今年は「日本橋から出船する「船上茶会」」や「阿弥陀図と地獄草紙を実際触れて感じる「体感! 飛び出す阿弥陀、うごめく地獄」」などの新企画も続々。しかも料理僧の吉村昇洋、青江覚峰と日本橋のレストランがコラボした精進メニュー等、楽しみがいっぱいです。

ということで、向源のチケットも発売開始。ボランティアスタッフも大募集中です。

向源は名前の通り、参加者それぞれが「源」に「向」かうことを目指したイベント。日本を感じたい、自分の歩く方向を見つけたい人。いや、そんなん分からんけど、とりあえずなんか面白そうという人。

ぜひぜひ、ゴールデンウイークは向源に足を運んでみてくださいね。

【向源】

日程 : 2016年4月29日~5月5日
会場 : 4/29(金)      神田神社(神田明神)
     4/30(土)~5/4(水) 日本橋各所
     5/5(木)       増上寺

チケットやボランティア情報は、向源サイトをご覧下さい。

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向源代表・友光雅臣さん

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