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議論紛糾、しぶしぶ東京に送る長浜の仏像が切り開く未来への道

観音の里の祈りとくらし展ポスター

先日、2016年7月5日~8月7日にかけて東京藝術大学大学美術館で行われる、『観音の里の祈りとくらし展』の記者発表会に出かけてきました。

これがすごく勉強になりました。なんといっても心に刺さったのは、一つの企画展において、企画側・出展側、様々な立場の想いや葛藤にふれられたこと。そしてそれが私がこのところ強く興味を持っている、地方創生のリアルな現場として見られたことです。

ということで私の感想を書く前に、まずは今回の概要について。

『観音の里の祈りとくらし展』は、滋賀県長浜市の仏像が一堂に会する企画展です。その数は40体以上で重要文化財は11体。展示交渉中の仏像もあり、まだまだ増える可能性もあるとのこと。

長浜と言えば京都や奈良の人気仏像にも匹敵するような仏像が残り、しかもそれが貴族や大寺院に寄らず小さなお寺やお堂の中で守り伝えられてきた特殊な地域です。

高月町の仏像が総開帳される「観音の里 たかつきふるさとまつり」は全国から仏像好きが集結する定番行儀でもあります。私も行ってきましたが、町のあちこちで仏像拝観しながら、地元の方の仏像解説をお聞きしたり、お茶やお菓子のご接待を頂くなど、この地域の篤い観音信仰を間近に感じた一日でした。

たかつきふるさとまつり

なので今回の企画展はとても楽しみにしていて、記者発表会へも(一週間のマレーシア・タイ旅行から帰った日に)喜んで出かけてきちゃいました~。

『観音の里の祈りとくらし展』の記者発表会の様子

記者発表会は、大手町ファーストスクエアカンファレンスにて開催。長浜市の藤井勇治市長や東京芸術大学の薩摩雅登教授、長浜城歴史博物館の太田浩司館長が今回の企画展の狙いや意気込みについて語られていきます。

記者発表会の登壇者

そしてその中で面白かったのは、現在実際に黒田観音寺の世話方を務められている高橋ご夫妻のお話でした。

黒田観音寺世話方の高橋夫妻

世話方とはお寺やお堂の管理や法要などを担う守り役のこと。長浜では基本的にお寺はほとんど無住で、お坊さんは常駐していません。世話方は3年交代で順番に引き継がれ、こうした仕組みが長浜の仏像を守り伝える基盤となっています。

しかしこの世話方も御多分に漏れず、地域の過疎化により維持が困難になっています。高橋さんの地域にも、17世帯(実際に生活しているのは13世帯)しかいないとのこと。

そんな時に長浜市から連絡の入った東京での仏像展。地域の方々はものすごく議論紛糾したようです。

「今まで秘仏として守ってきたのに、東京に出すなんてどうなのか?」
「村を守る仏様なのに、美術品のような扱いになってしまう」
「東京までの往復で、壊れたらどうする」

そんな話が行われたことを、赤裸々に語ってくださいました。

私自身は短い話の中で想像するしかありませんでしたが、きっと黒田観音寺を守る皆様の間でも、この企画を推進する長浜市や東京芸術大学でも、ものすごい話し合いが行われたのではないかと思います。

それをちらっと垣間見ることができたのは、太田館長のお話です。

「この企画展は単なる美術展ではなく、長浜の祈りや暮らしを伝えたい」
「仏像ではなく仏様としての展示をしたい。お堂の写真や行事法要の解説も充実させる」

つまりこれは、高橋夫妻のような方々が日常的に手を合わせ、地域の人の心をつなぎ、それが幾世代にも渡って連綿とつながってきた仏さまなのだということを、少しでも来館者が実感できる企画展にするということでしょう。

高橋さんは「しぶしぶお寺から出すことになった」とお話されていました。これ自体、記者発表会で発言されるのは異例です。もちろんそれは過程の話で、その後のスピーチでも、記者発表会後に私が個別にお話を伺っても、今回の企画展には好意的でしたが。

ですが、それに対して企画者側は、

「仏さまや地元の信仰を理解して頂ける内容にする」
「長浜の仏さまを多くの方に知って頂くことで、未来に伝える道筋を作る」

きっとこんなことを話されてきたのではないでしょうか。実際に私が今後どのような形で地域に還元していくのかをお聞きしたところ、防犯・防災設備を整えることと、少数でも深い興味を持つ人にしっかりと足を運んでもらえるようにしたいと答えられていました。

藤井市長も「地方創生のために都心と地方の交流を図っていく」と仰っており、仏さまを今後も守り伝える手段として出開帳を行うという部分は、今回の企画展を行う上で重要なキーワードになっただろうと感じます。

進化する長浜は、地方と都心を結ぶことができるのか?

実は私は2年前に行われた第一回目の『観音の里の祈りとくらし展』ブロガー内覧会にも出かけていました(あと、寺社コンでも企画してました)。

その時の仏像数は18体。それが今回は40体以上で堂外初公開も15体に上るとのこと。上述の通り長浜は大きなお寺が仏像を一括で管理しているわけではありません。きっと地道に、そして丁寧に会話を重ねながら、それぞれの仏さまを預からせて頂く約束をしていったのでしょう。

また今回(前回も)の企画展の会場となる東京芸術大学も、日本の文化財保護に力を尽くした岡倉天心が創設に関わり、その精神を強く受け継ぐ学校です。この東京とのホットラインが出来ているのも長浜の強みです。

そしてそれをさらに強固にするのではと私がもう一つ注目しているのは、3/21にオープンした『びわ湖長浜KANNON HOUSE』です。こちらのメディア向け内覧会は残念ながら予定が合わず参加できなかったので、オープン前夜にちょっとだけ立ち寄ってみました。

びわ湖長浜KANNON HOUSE

このびわ湖長浜KANNON HOUSEでは、2か月ごとに交代で長浜市の観音像を1体ずつ展示。地方自治体の施設としては国内初の「観音」がテーマの情報発信基地です。

すぐそばにある上野・不忍池はもともと琵琶湖に見立てて弁天堂が建てられた池ですし、長浜の観音様を紹介する場所としてはピッタリでしょう。

以前にこのKANNON HOUSEがオープンするニュースを仏像研究会で紹介したら、多くの方にシェアされていました。やはりこの立地、そしてコンセプト。高い注目が集まっています。

このように次々と観光施策を打ち続ける長浜ですが、それは数字にも出ているようです。毎日新聞によると、滋賀県の観光客数は年々伸びているようですが、その中でも2014年の滋賀県観光入り込み客数ベスト30は黒壁ガラス館が1位、豊公園が4位と好調です。ただしこの結果は大河ドラマ・黒田官兵衛効果も大きかったようで、次なる一手(のひとつ)が今回の仏像ということかもしれません。

今後の長浜には、ますます注目ですね!

そして私は思う。長浜で宿坊を始めるお寺は現れないかと!

そんな長浜ですが、私は宿坊を始めるお寺が出たら、これはすごい相乗効果が生まれるのではないかと勝手に思っています。

ただでさえ、観音の里。観光客も増加中。歴史や文化施設など、宿坊と相性の良いスポットもたくさんあります。そして寺社観光を強く推し進める行政のバックアップもある。

無住のお寺も多いですし、先日提唱した、地域おこし協力隊と組むモデルなんかもありですしね。地元の方とのさらなる連携は必要ですが、そうしたお寺を宿坊化すれば観光の目玉にもなっていきます。

様々な条件のそろった、面白い場所ではないでしょうか。もしも長浜市で宿坊やりたいというお寺の方いましたら、ぜひ宿坊創生プロジェクトと手を組みませんか(と、観音の里×宿坊はすごく面白そうなマッチングなので、ちょっと無理やり宣伝してみました)!

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