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大田区の民泊解禁報道に浮かれたけど、よく読むと絶望的にナンセンスな件

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東京オリンピックに向けて、民泊解禁議論がどんどん過熱化しています。

Yahooニュースなんか見ていると、関連情報ががんがん流れてきていますが、先陣を切りそうなのは、羽田空港のある東京都大田区。

政府は28日、一般の家を宿泊施設として活用する「民泊」について、全国で初めて東京都大田区で実現させる方針を固めた。旅館業法は多くの人からお金をもらって繰り返し泊める場合、必要な設備を整えることを求めているが、大田区ではマンションなどの個人住宅で外国人を泊める事業が来年中に可能となる見通しだ。

日本経済新聞

また、東京の他区や大阪などでも民泊解禁議論は活発化しているようです。

さらに都市圏だけではなく、

政府は旅行者が訪問先で個人宅に泊まる「民泊」の規制を農村や漁村を対象に緩和する。現在も農漁業体験などで訪れた旅行者が対象なら、宿泊施設の規定を満たさない農家や漁師の住宅でも民宿として営業できる。今後はこれに加え、一般民家も使えるよう厚生労働省の省令を2016年度にも改正する。宿泊施設が少ない地域で民家を活用し地方創生を促す。

日本経済新聞

なんていう報道もあります。

そもそもこの民泊解禁議論は訪日外国人がどんどんと増えている現状、ホテルや旅館が足りなくなっているという状況に対応する側面があります。

私自身も先日ある新聞社さんから、金沢で宿泊施設が足りなくなり、宿が取れずに右往左往する人が目立ってきた。この現状を打破するために宿坊開設は有効かというテーマで取材を受けました。

また一方、「Airbnb(エアビーアンドビー)」に代表される民泊仲介サービスが世界的に広まる中、日本ももちろん無縁ではいられず何かしらの基準を設けないと、どんどんとグレーゾーンがダークゾーンへと変化しかねない事情もあります。

さらに言えば人口減少時代において、マンション購入者が減り不動産価値が激減していく中で、民泊が不動産の新たな活用法として期待されている側面もあります。

そんなわけで民泊議論は過熱するばかり。宿坊スタートアップミーティングなどで意見を聞くと、やはり寺社の宿坊化の最大ネックは旅館業の営業許可取得であり、この潮流には私も大きな期待を寄せているのです。

しかし、いろんな人の思惑が絡めばもちろん反対する側に立つ人もいます。先頭に立っているのは既存のホテルや旅館経営者でしょう。自分たちが大きな投資をして安全面への配慮など様々な設備を備えているのに、それらを無視して一般の人が好き放題に旅館業を始めたら、何のために多額のお金を使ったのかということになります。

まあ、そりゃーそうですよね。既得権益反対なんて言ったって、「この防災設備がないと人を泊めることができないからつけたのに、今更なしになりましたって言われたら、つけない相手と宿泊料で勝負できなくなるんじゃないか」ってことになります。

そんなわけで今のところ、国家戦略特別区域法施行令の第12条には

施設を使用させる期間が七日から十日までの範囲内において施設の所在地を管轄する都道府県(その所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合にあっては、当該保健所を設置する市又は特別区)の条例で定める期間以上であること。

と、記されています。

いや、ちょっと待ってよ。簡単にまとめれば、7~10日以上泊まる人なら、旅館業法適用外で民泊認めますよって言ってます。

常識的に考えれば、そんなに長期滞在する人、ごくごくわずかでしょう。自分が海外に出かけるなら、ローマの個人宅に1週間以上張り付いていると思いますか。それだけ時間があれば、ベネチアでゴンドラ乗りたいし、ミラノでショッピングしたいし、カプリ島の青の洞窟にも入ってみたい。ずっと一拠点に留まるよりも、いろんなところに行ってみたいと思うのが普通です。

なんかこう、外国人がたくさん来るし、いろんな業界から民泊解放しろと言われるからルールを作るけど、旅館業界からはバリバリ反対されるから意味ないものにしましょうみたいな臭いをものすごく感じるんです。

やるんであれば、年間営業日数に制限を設けるとか。これなら空いてる部屋を貸してひと儲けしよう、でも旅館業の許可取得まで取るつもりはないよという方は、なるべく空き室が出にくそうな宿泊ニーズが高い時期のみ部屋を開放します。

紅葉の京都なんて激混みじゃないですか。この時期だけホテルの宿泊料がうん倍にも跳ね上がるとかざらですよ。他にもゴールデンウイークやシルバーウィーク、夏休みや年末年始など、既存のホテル・旅館がフル稼働な時期はあるわけです。

あ、まあ、トップシーズンに宿泊料をうん倍にすることができなくなるじゃないか! という文句は、さすがに世間様から支持を得られないと思いますが(そんなことしてたら、日本の観光業は衰退していきますよ)。

ちなみに、2年前にもこの問題には似たようなことを書いていました。メディアに踊らされない、観光立国日本を目指して

インフラ面が整えば、長期的には旅行者がこれからどんどん増えていきます。

UNWTO(国連世界観光機関)の予測によると、2010年(平成22年)~2020年(平成32年)までの国際観光客数の年平均伸び率については、北東アジア、東南アジアはともに5%台後半で、今後も高い伸びが予測される。

観光庁

これは既存のホテル業界にとっても大チャンスです。世界的に旅行者の必須ツールとなってきた民泊を排除しても、まったく利益にならない話です。これからのホテル業界の競合相手は、民泊した人が次に泊まってくれるかもしれないエアービーアンドビーではなく、アジアのどこの国に旅行しようかで迷っている人を争奪する他国のホテルです。

規制緩和で宿坊がたくさんできれば、「shukubo」をキーワードにもっと多くの旅行者が訪れます。でもそうした人はお寺にずっとこもっているわけではありません。日本に来たからお寺に泊まってみたい、でも東京で美味しいものも食べたい、富士山を眺めたい、沖縄の離島でビーチリゾートも楽しみたいとなります。

7日以上同じところに泊まる人のみ民泊を認めますなんて非現実的な話ではなく、ぜひ業界全体が潤っていくようなオールジャパン戦略で民泊を考えて頂けたらなと思います。

いや、まあ。それでも民泊が土俵に上がるのはこれからなので、きっと良い方に進んでくれますよね。

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