東京で最初に宿坊を作った宗派は日本を拡張する
4月にオープン予定の和空下寺町。いよいよ宿坊創生プロジェクトから、第一号宿坊が大阪に誕生します。私も関西に行くたびに立ち寄っているのですが、どんどん出来上がってきていますね。外観はほぼ完成ではないでしょうか。
一方、先日。同じ大阪の南御堂で、山門一体型ホテルの取材もさせて頂きました。こちらは山門がコミュニティスペースを兼ねた建物になっている珍しいお寺だったのですが、耐震診断の結果、大幅な補強か建て替えが必要と判断。多額の費用も必要なため、ホテルが作られることになりました。
こちらは2019年開業予定で、上の写真もまだ取り壊し前。現在、着々と工事が進められています。
先日このブログでもお知らせした京都の超高級宿坊もありますし、私のもとには奈良でのお寺ゲストハウス開設情報も飛び込んできています。関西圏はいよいよ宿坊の新設が活気づいてきましたね~。
東京には宿坊がほとんどない
一方、私が注目を続けながらまだまだ具体的な話が見えないのが東京です。まず何より特筆すべきこととして、東京にはほぼ宿坊がありません。唯一、青梅市・御岳山の武蔵御嶽神社に宿坊街がありますが、都心部からは距離があります。
似たコンセプトは、少しずつ生まれているんですよ。セレスティンホテルが増上寺とコラボした宿泊プランを作っていましたし。
このホテルは増上寺から徒歩5分ほどの位置にあります。客室には「増上寺葵紋」を使用した装飾品が置かれ、増上寺参拝や写経、御朱印などが体験できる一日一室限定の特別プランになっていました。
また築地本願寺には宿泊施設があり、「第一伝道会館の3階に、どなた様でもお泊まりいただける宿泊施設があります」とウェブサイトには書いてありましたが、築地本願寺で以前聞いてみたら関係者のみと言われ、どっちが正しいのかはよく分かりません。
少なくとも積極的に宣伝していないことは間違いなさそうです。
東京で最初に宿坊を作った宗派は日本を拡張する
それで本題。タイトルは少し風呂敷広げてみましたが、そこまで大げさでもないと思っています。そのくらい、東京のどの宗派・どのお寺で宿坊が最初に生まれるかは重要な指標です。
まず第一の根拠として東京にはテレビ局や新聞社など、メディア企業が多数集まっていることがあります。私はこれまで何百件もの取材を受けてきましたが、「東京近郊で行きやすい宿坊は?」と問われたことは一度や二度ではありません。
その時、だいたいは埼玉県の飯能や秩父、静岡や山梨、長野、千葉県の房総方面の宿坊を紹介しました。どこも都心部から行けば、それなりに時間のかかる場所です。各メディアの取材費も削られている中、遠方の取材はしづらい現状も会話の中でよく聞きました。
また大阪で宿坊が誕生するというニュースは、政治、観光、金融、建築など、多岐に渡る業界で話題になりました。取材しやすい東京で生まれれば、これはもっと多くの露出が見込めます。
これまではお寺・神社体験が流行してますキャピキャピ☆ 的な取り上げ方が多かったですが、ここからはもっと硬派な取材も増えていくでしょう。
そして第二の根拠として、東京のホテル需要は大阪と並んで切迫しています。2015年時点で日経新聞はこんな報道をしていました。
東京や大阪でホテルの空室不足が深刻になってきた。アジアからの観光客が急増している影響が大きい。地方からの出張や観光で部屋を取りにくいとの弊害も目立ち始めた。規制緩和で空き家を宿泊施設に転用するなど、柔軟な発想で訪日外国人の受け入れ態勢を拡大すべきだ。
2011年に6割台だったビジネスホテルの客室稼働率は14年に7割を超えた。特に稼働率が高いのは大都市だ。今年1~3月の実績をみると、東京都、大阪府はそれぞれ85.0%、84.3%に達した。廉価な簡易宿所の稼働率も、全国平均の2割強に対し東京と大阪だけは5割を超す。
この状況は2016年になっても解消されず、去年の産経新聞の報道でも
都道府県別のトップ5は、大阪85・2%、東京82・3%、京都71・4%、愛知70・9%、千葉70・7%で、外国人が多く訪れる東京-大阪間の「ゴールデンルート」に集中している。5都府県では、シティーホテルの平均がいずれも80%を超え、繁忙期に予約が困難な水準で、料金も上昇傾向だ。
と、あります。
訪日外国人の政府目標も2016年3月に「20年に2000万人、30年に3000万人」としてきた従来目標から「2020年に4000万人、30年に6000万人」と大幅に上積みされましたし、今後もこの状況は続くでしょう。
東京の宿坊は爆発的な話題を作る下地が整っているのです。
東京に宿坊が生まれたら起こること
東京は京都と並んで、本山クラスのお寺が多い土地です。また、街の中のあちこちに大きな神社もあります。
禅宗が宿坊を作れば坐禅が、密教寺院が宿坊を作れば護摩祈祷が、日蓮宗が宿坊を作れば唱題行や木剣加持が、浄土宗や浄土真宗であればお念仏が映像として流れます。神社であれば神前祈祷や祝詞が人の関心を引き寄せるでしょう。
その意味で東京の宿坊は一つのお寺のみならず、宗派全体の顔と成り得る側面を持つのです。その効果は他に先んじて生まれた宿坊ほど効果が際立ちます。
こうしたメディアに繰り返し情報が流れる意味は、以下の記事にも書いたのでよろしければご参照ください。
私は以前、都内にあるとあるお寺と、一泊二日の仏教体験を企画したことがありました。
その企画は単なる宿泊だけでなく、二日間に渡って修行が組まれていましたが、都内ではお寺に宿泊できること自体が珍しく、多くの反響がありました。
東京の宿坊は、より多くの人を寺社の価値観に誘う重要な入り口です。どのお寺から宿坊が生まれるか、あるいは大阪のような超宗派かなど、宿坊研究家としては興味が尽きない話題です。
あ、ちなみにこれは仏前結婚式も似たような状況ですよ。