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應典院の宿坊トークイベントで、いけずな質問に答えてきたぞ!

01.宿坊
 

應典院

先日、大阪の應典院で宿坊をテーマにしたトークイベントに登壇してきました。いやー、やっぱり秋田住職との話は気づきがたくさんありました。私の言語化していなかった部分がぐいぐい引き出された感じ。

会場にも多くの方が来られ、予定していた研修室から急遽広い本堂に変更になり、盛況となりました。ということで今回はレポートですが、まずはイベントの趣旨や詳細は以下の記事でどうぞ。

恐怖の宿坊討論会。大阪・應典院で秋田光彦住職とトークするよ

読むのが面倒な方のために簡単にまとめると、現在ほーりーが顧問を務める宿坊創生プロジェクトにおいて、4月に大阪市天王寺区に和空下寺町がオープンします。江戸時代から続く伝統的な宿坊とは異なり、境内の外にお寺の宿として建てます。

それだけであれば京都にもいくつか似た形態はありますが、今回は特定のお寺に所属することなく80ヶ寺ものお寺が並ぶ「下寺町」の宿坊として、超宗派での仏教体験をメインに据えています。建物の建設費もファンドを組んで数億円規模で投資を募り、インバウンド(訪日外国人誘致)にも積極的な目を向けるなど、ビジネス理論も強く含まれます。

果たしてこの新型宿坊が、これからのお寺社会にどのような影響を与えるか?

会場となった應典院も下寺町にあり、本堂に劇場を作って檀家さんに寄らないコミュニティ構築に先鞭をつけてきたお寺。秋田住職はお寺の公共性や社会活動に鋭い発言を繰り返すお坊さんでもあり、今回は宿坊について考える場を作りたいと私に声がかかりました。

イベントの大まかな流れは、

(1)堀内の宿坊講演『宿坊の現状と未来予測』
(2)秋田住職、コメンテーター陸奥賢(むつ さとし)さんのコメント
(3)会場を巻き込んだトークセッション

という3段構成です。

宿坊トークイベントで答えた5つの質問

私の講演は昨年の自民党観光立国調査会や宿坊スタートアップミーティングでお話させて頂いたもの(少しレベルアップさせたけど)なので、詳細は過去記事をご参照ください。

宿坊スタートアップミーティング開催。熱い質問が飛び交いました!

なので今回は秋田住職や陸奥さんとのトーク、それと終わった後の懇親会で聞かれた質問から、レポートとして5つピックアップしてみました。

應典院トークイベント(ほーりーの講演)

「観光」には公共性があるのか?

これからの時代、政教分離が新たなステージに入っていく。これまで一切手を組むことができなかった行政と寺社が、宗教にふれない形で手を結ぶ例が増えてきました。

直接のきっかけは東日本大震災で、これを機に各自治体とお寺・神社の間で結ばれた防災協定が一気に増えました。私はこの流れが観光・子育て分野へと広まっていくと予想しています。

参考:税金の使い方センスが問われる政教分離を超える3つの分野

ここに食いついたのが、秋田住職です。防災と子育ては分かる。しかし、観光に公共性はあるのか? というのが質問でした。

これに対する私の答えは明確にYesです。産業発展は政治の重要な役割ですし、政権の評価にも日経平均の推移はよく論じられます。宿坊だけに限りませんが観光立国化を掲げる観光庁や文化庁が寺社観光にアクセルを踏み出したのも、経済活性に大きな効果が見込まれるからです。

また、内閣府自殺対策推進室の『平成27年中における自殺の状況(pdf資料)』資料を読むと、自殺理由は経済問題が健康についで2位を占めます(特に男性は多い)。補足すれば勤務問題は別項目としてあるため、「経済問題」とは職場のいじめや過重労働などではなく、貧困が原因と考えられます(複合的な場合もあるでしょうが)。

つまり経済が上向きであれば、かなりの人数が自殺せずにすんだ可能性さえあります。失業率と自死・自殺者数は連動しているという報告もありますし、寺社が経済振興に取り組むことだって大きな社会貢献と言えます。

既存のお寺をリノベーションして宿坊にすることは可能か?

4月に誕生する和空下寺町は、お寺の外に新たに建物を建てるスタイルが選択されました。これについて秋田住職は、「私が興味があるのは既存のお寺をリノベーションして宿坊ができるかだ」と仰っていました。

これはほーりーも同感です。実際に檀家さんが減ったりお葬式がなくなっていき、経済的に今一番困っているのは地方のお寺です。

都会にどんと建物が建った。「これが新たな宿坊でござい」と言っても、お寺を救うことにはならないんじゃないかということです。

ただ、私の回答は物事には順番があるということです。宿坊を作るなんていう、これまで私が10年以上もいろんな企業に提案しながら採用されなかったプロジェクト。どんな形であれ、新たにひとつ宿坊を作るだけでもチャレンジングです。

和空下寺町は宿坊創生プロジェクトから生まれる第一号宿坊です。ここがコケたら、あとはありません。作るだけで大冒険な分、可能な限り手堅く進める必要があります。

そして私もこのプロジェクトに参画するまで知りませんでしたが、宿泊施設は既存の建物を改装して作るより、新たに建てた方がよっぽど手間とコストがかからなかったりします。

旅館業法では細かな建築基準が定められており、空いている一室だけ使おうとしても、防災設備の設置などで多大なコストがかかります。なので客室数が少なすぎると、損益分岐点を乗り越えられません。そこで確実な需要が見込める大阪の都心部で、新築で宿坊を作るというのは現実的な手段でした。

しかし宿坊がもっと世間に広がり地方でも集客可能な状況まで進めば、人口密集地よりは基準の緩い郊外では既存の建物を宿にできる可能性も高まります。

宿坊作りもまだまだ始まったばかりです。これから一つずつ実績を築けばノウハウも溜まるし、バリエーションも増えていきます。宿坊自体の訴求力が挙がれば世界規模でパイが増えます。そのための重要な一歩としても、和空下寺町はあります。

宿坊に関わるお坊さんに必要なホスピタリティは何か?

宿坊に泊まりに来る人は、これまでお坊さんが接してきた檀家さんや信徒さんとは異なります。何よりの違いは、お寺の慣習やマナーに対する理解の浅さです。

簡単に言えばお寺初心者(外国人も含む)が来ることで、トラブルや衝突、そこまでいかなくてもイラッとすることは増えるでしょう。しかしこれらを悪意として捉えないことが、私は宿坊に携わる方に求められる大切な要素と考えています。

日常的にお寺やお坊さんと接する機会のない方は、ドキドキオロオロしながらお寺に足を踏み入れます。私自身、初めて宿坊に泊まった時はものすごく緊張しました。

しかし何か問題が発生した時、9割以上は単なる理解不足です。ご本尊に油をかけるような例外には迅速な対応が必要ですが、全体にモラル違反と感じることは、単純に初心者がつまづきやすい点と認識すべきです。こうした例外と全体のモラルをごちゃ混ぜに考えてしまうと、初心者を受け入れる垣根が極端に高くなります。

私は昨年、長崎にある教会の宿泊施設に泊まってきました。そこでは早朝のミサに参列できるのですが、係の方に丁寧に案内して頂いたことで、いつもの寺社とはまた異なる厳粛な空気にふれてきました。

もしもお坊さんが教会に行ったとしたら、お祈りの作法ひとつとっても分からないことだらけなはずです。しかしその時にイエス・キリストを冒とくしてやろうとか、自分の信仰とは異なるから無視してよいと考える方はほとんどいないでしょう。

「宿坊を作って知らない人がたくさん来たら、いろんな問題が起こるのではないか?」

当然、起こります。ですが宿泊者はお寺や神社に好意的で、興味を持って来る方ばかりです。そんな方とトラブルを繰り返しながらも仏さまとの架け橋を築くことが、宿坊におけるお坊さんの大切な役割になるのではないでしょうか。

應典院トークイベント(ディスカッション)

宿坊の失敗例は?

こちらは陸奥さんからです。宿坊のサクセスストーリーを(ほーりーの講演の中で)紹介していたけど、失敗事例だってあるんじゃないの? という、肺腑をえぐる質問です。

うん、あります。実際問題として宿坊はここ10年、ブームと言われながらも数を減らしていました。これには二つの原因があり、一つは宿泊者が減ったこと。もう一つは後継者がいなかったことです。

宿泊者の減少は、これまで講中などの信仰団体が主な客層だった宿坊が、時代の移り変わりに対応できなくなってきた点が挙げられます。個人客にシフトできた宿坊は大賑わいという一方で、二極化が激しくなったのもここ10年です。

そして後継者という点では、お寺の人間が宿を営む特殊性が挙げられます。住職がいなくなったら変わりのお坊さんを呼べばよいというものでもなく、人気があったのに閉鎖してしまったところもありました。

さらに言えば、これは失敗例ではありませんが宿坊が減少傾向だった要因として、宿坊をオープンさせることが難しかったという点も見逃せません。直近で生まれた宿坊は数えるほどで、次から次へとオープンしているゲストハウスや民泊とは事情がまったく異なります。

こうした状況を打破する意味でも、宿坊創生プロジェクトは希望です。

ほーりーは何を目指しているの?

これはトークイベントが終わった後、懇親会の中で出てきた質問です。これは実は明確過ぎるほど明確です。それは、私がもっとたくさんのお寺や神社に泊まりたいということです。

もちろん語れば他にもいくらでも理由はあるし、それは個人的なこと、社会的なこと、経済的なこと、はたまた周りにこんなすげぇーことしてるんだと自慢したいとか、どんどん出てきます。

でも、やっぱり私が宿坊研究会を始めたのも、18年間続けてきたのも、全国寺社観光協会から声がかかって宿坊創生プロジェクトの顧問を引き受けたのも、すべては「自分が泊まりたい」という想いが核にあります。

まあね。好きなことに全力投球できるというのは、幸せな環境であるわけですよ。そんなわけで、私はもっともっと宿坊を楽しみたいし、その良さをいろんな人と共有していきたい。

ということが、ほーりーが目指していることです。

ということで、、、

今回のトークイベントでは、最後に下寺町のお坊さん方に、まずは興味を持って見てほしいとお願いしました。

和空下寺町

和空下寺町は現状、できる限りで最高のものを詰め込んでいますが、それでもまだ生まれたばかりです。きっと3年、5年、10年と経てばまた変わっていくでしょう。

そして飛んで火にいるを覚悟してほーりーが應典院に突入したのも、下寺町のお寺の方とはできる限りつながっていきたいからです。いや、別に秋田住職を悪者にするわけじゃないですが、そのくらいプレッシャーのかかるイベントではあったので。

もちろんこれは、このブログを読んでくださっているお坊さんや神主さん、その他の皆さんにも同じ想いです。宿坊がたくさんの協力者と連携できるかは、今後の100年を左右します。

秋田住職からも懇親会で最後に聞かれました。果たして全国寺社観光協会は大丈夫なのかと。

もちろん、何もかもがパーフェクトな組織なんてどこにもありません。ですが宿坊がこれほどまでに注目を集めた現状、実は私のところには宿坊を作りたい、宿坊をプロモーションしたいと言った企業からの業務参画オファーが多数来ています。

しかしそれらを蹴って全国寺社観光協会の顧問でいるのは、ここが一番理念に共感できるし、ビジョンを描いているし、宿坊を広める可能性に満ちているからです。

宿坊創生プロジェクトは私自身、人生を賭けたいと思えるプロジェクトですし、新しい変革の渦にワクワクしています。

今回のイベントにお越しくださった方も、残念ながら来られなかったという方も、ぜひ今後の宿坊にご期待頂けたら嬉しく思います。

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