アンケート取ったけど、日本人は自分が楽には死ねないと思っている
先日、以下の記事を書きました。
内容を3行でまとめると
○『生老病死』の生は、なぜ人生に占める4つの苦にエントリーしているのか
○いろんな資料を見たら「生」と「老病死」を切り分けているものも多い
○いろんなお坊さんに質問したら、回答が3つのパターンに分かれた
と、いうものです。
そしてこれに合わせてツイッターで、生老病死でどれが一番の苦かというアンケートも取ってみました。
ちょっと話題になったので、質問です。『生老病死』の中で、あなたが一番苦しいと思うものはどれですか? なお「生」は二通りで解釈する方がいるので補足として、ここでは(老や病も含んでしまうため)「生きること全般」ではなく、「生まれること」として定義します。
— ほーりー(寺社旅研究家) (@holy_traveler) 2019年4月15日
回答者数は338人。ご協力下さった皆様。ありがとうございます。
今回はこの結果について考えることが多かったので、ほーりー的な考察をまとめてみます。
日本人は、自分が楽には死ねないと思っている
まず、ぱっと見で分かること。ご回答頂いた方の半数以上が「病」を選択しました。そして一番選ばれなかったのが「死」です。
この回答から考えられることは、現代人は死ぬことよりも、じわじわ苦しみながらも生き続けることを怖れています。
これはほーりーの肌感覚ともあっていますね。アラフォーになってきて、老後も頭にちらつくようになりました。
20代とか30代前半頃は、やるだけやって倒れたらそれでいいやとか考えましたが、最近は「あれ? やるだけやって倒れたら、人生そこから長いんじゃないの」と冷や汗が流れたりします。
ぽっくり地蔵とか見ると、思わず手を合わせてしまいますしね。
日本社会が死よりも病を怖れる要因として、以下のものがあります。
○世界トップの長寿国であること
○年金の削減、給付年齢の引き上げ
○未婚者数の増加
○介護業界の過酷な労働環境
こうした情報が繰り返し流れる日々は、自分が将来楽には死ねないなと思わされるのに十分です。
ちなみにほーりーの母親は、病院で薬剤師として働いています。その母から事あるごとに言われているのも、「もしも意識が亡くなったら、無駄な延命治療はやめてくれ」というものです。
つい先日も、夕刊フジに医師・ジャーナリストの富家孝氏の記事が載りました。
私は仕事柄、高齢者施設に足を運ぶことがあります。目にするのは「寝たきり」の方の多さです。正確な統計はありませんが、現在約200万人の高齢者が寝たきりで暮らしているとみられます。世界で類を見ない「寝たきり老人大国」です。そういう高齢の、つまり胃ろうや人工透析で生活している方々から、よくこう言われます。
「先生、もう回復の見込みはないのなら生きていたくありません。なんとかしてくれませんか」
医療現場に身を置いている人間は、一般の人よりはるかに凄惨な場面に出くわしているのでしょう。そこから出てくる言葉には、怖いくらいの説得力があります。
お釈迦様の時代は、果たしてどうだったのか?
ここからは想像にすぎませんが、もしもお釈迦様がいた時代。同じアンケートを取ったとしたら、どのようになっていたでしょうか。
私は一番選ばれなかった「死」こそ、最大得票を集めたのではと考えています。なぜなら2500年前のインドでは、老いたり病気でずっと苦しみ続ける前に死ぬ人の方が多かったと思うためです。
出産も今よりずっと命がけなものでしたでしょうし、その子が成人になる前に亡くなる確率も高かったでしょう。日本でも古くは「七歳までは神のうち」と言われて、幼児が亡くなるのは仕方ないことと考えられていた時期もありました。
死がいつどこから迫ってくるか分からないものであった時代には、きっと「死」こそ一番怖いものだったでしょう。
一方で現代は、いきなり明日死ぬかもと考えている方は少数ですが、未来において死にたいと思いながらも、死ねずに苦しみ続ける恐怖にはかなりのリアリティがあります。
以前、とある講演でこんなスライドを出してお話させて頂いたことがありました。
これから死者数が増えていく社会の中で死生観が深化・多様化し、「より良い生き方」を模索する時代から「より良い死に方」を探す時代へと変化していきます。
今回のアンケートからも、そんなことが新たに読み取れる形になりました。
ということで、、、
実は今回の生老病死アンケート。来月にお呼ばれしているお坊さん研修会で使おうと思って聞いてみたものでもあります。
そのテーマは「お坊さんの法話はどうすれば、人の心に響きやすくなるのか」というものです。
そこで生老病死をもっと現代の世情と反映させながら語ってほしいと考えたのが発端のひとつですが、アンケートによってだいぶ構想が具現化してきました。
生きたくても生きられなかった時代から、死にたくても死ねない時代になった時、仏教はどのように人の心に寄り添えるのか。
以前にも似たようなテーマで記事を書いたことがありますが。
平均寿命の延伸が葬儀を簡略化させてきた中で、お坊さんにできること
ということで、ここからはせこせこと資料作りを頑張りま~す。