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生かされる生命を大切にする尼さんシンガーの自叙伝『わたし、住職になりました』





 わたし、住職になりました

 三浦明利 著

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奈良にある龍王山光明寺住職であり、
シンガーソングライターとしてメジャーデビューもされた、
美しすぎる住職・三浦明利さんの自叙伝
です。

学生の頃から数々のコンテストで受賞するなどバンド活動で大きな注目を浴びながら、
ご両親の離婚に伴い、バンドを辞めてお寺へと帰った三浦さん。

その時の心情は本書の冒頭に、
「これまで自分が目指してきた輝かしい未来は幕を下ろしたように感じました」
とありました。

しかし脱退するバンドのメンバーや所属していた音楽事務所、
お寺のご門徒の方々、そしてご両親など、多くの方の支えや見守りの中で、
住職・三浦明利はスタートします。

この本はお坊さんでありミュージシャンでもある、
ある意味で特別な存在ではありますが、
しかし一人の人間の成長物語が柱になっている
ように思います。

多分、人よりも大きな栄光と、そして人よりも激しい人生の変化に、
まだ10〜20代の早いうちから直面し、
三浦明利さんは形作られていったのかもしれません。

私はあるお寺でのコンサートで三浦さんとお会いしたことがありますが、
スポットライトを浴びた姿などほんの一面でしかないのだと思わされます。

しかし同時にその人生の全てが、
舞台上での三浦さんを輝かせているのだとも感じます。

お寺に戻り「音楽を封印」という気持ちもあったかもという三浦さんですが、
僧侶として再びギターを弾く機会を得て、以前より自由に歌えるようになったと言います。

そしてメジャーデビュー、祖父の死、結婚と、三浦さんの人生は続く。
多くの方の力添えと、仏教を道しるべに生きる姿は、鮮烈でさえありました。

「住職の役割というのは「人を導いていくこと」だと思っていました。
でもそれは、大きな勘違いでした」

私は本書の中で、この一文が一番心に残っています。
もしかしたら、これが三浦さんを表す言葉なのかもしれません。

デビュー曲の『ありがとう〜私を包むすべてに〜』も、
震災被災者から届いた詩を曲にした『被災地からのありがとう』も、
そして事故で亡くなった友人に向けた曲『花束レクイエム』も、
すべて「ありがとう」がキーワードです。

誰よりも、誰よりも、寄り添い、寄り添われること。
生かされている生命を大切にしている三浦さんの言葉。

本書を読むごとにそのひとつひとつが、
深く、深く、染み込んでくるようでした。





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