過疎地域で3万円するリトリートプランに、お寺の活路はあるか?
ほーりーが顧問を務める株式会社インナーコーリングが、4/8に千葉県勝浦市にある妙海寺でマインドフルネス・リトリートを開催すると発表しました。
この会社は求職や転職情報サービス大手のエン・ジャパン株式会社が100%出資するグループ会社であり、お坊さんが講師を務めるマインドフルネスセミナー『cocokuri』と、お寺のお役立ちサイト『お坊さん倶楽部』を運営しています。
お坊さんの収入アップ策。企業研修に僧侶が登壇するcocokuri(ココクリ)
宿坊研究会、hasunoha、寺子屋ブッダのノウハウ集結! お坊さん倶楽部
これまでは主に大手企業からの引き合いが多かったのですが、個人向けマインドフルネスセミナーも展開したいと、今回の企画が作られました。
【初心者向け】お寺でのマインドフルネス・リトリート
インナーコーリングが企画しているマインドフルネス・リトリート。こちらの特徴は以下の3点です。
携帯やパソコンを触らず、自分と向き合い、気付きを持ち帰るプログラム
今回の講師は妙海寺の佐々木教道住職です。
10時から17時までみっちりと、マインドフルネス瞑想の実施やウォーキングメディテーション、食べながらの瞑想などを指導して頂きます。
実生活にも持ち帰りやすく、お寺だからこそできる環境での手法が取り入れられ、自分が今ここにいることをしっかりと感じていただける内容になっています。
以前、こちらのお寺では若手経営者やリーダー向けのリトリートも行われましたが、今回は「初心者向け」のタイトルが示す通り、マインドフルネスってなんだか分からない、でもちょっと興味があるという方に参加しやすいプログラムになっています。
特に妙海寺はこれもまた名前の通りですが、海が近くにあるお寺です。キャッチコピーも「妙なる海に抱かれたお寺」。電子音が響く都心から、波音さざめく自然の中へ。このような環境こそ、マインドフルネスの導入としては最高なのかもしれません。
ちなみに終了後は、希望者での懇親会も行われますよ。魚もおいしそうデス(魚が出るのかは、知りませんが)。
リトリート後、8週間のアフターサポート
『cocokuri』の特徴の一つでもあるのですが、マインドフルネスは一日の研修で終わらず習慣化させることが大切だと考えています。
そこでこのリトリートでは、終わった後も8週間のアフターサポートが用意されています。
1.定期的なマインドフルネスTipsの配信
2.マインドフルネスを継続する中で生まれた疑問を質問し放題
3.2回のフォローアップ講習会 ※参加自由
という内容で、日常にマインドフルネスを取り入れる仕組み作りも応援していきますよ。
マインドフルネスを楽しむ仲間ができる!
さらにマインドフルネスに限りませんが、新しいことにチャレンジする上で一緒に取り組む仲間は大切な存在です。
そこでリトリート当日はもちろんですが、SNSやフォローアップ講習会を通じて、参加者同士のつながりも構築されます。
Facebookグループやメッセンジャーによるコミュニケーションが行われるので、リトリート後に生まれた変化や疑問を参加者同士でシェアしたり、うまくいかない部分の悩み相談など、一人だけでは挫折しがちなこともここで解消することができますよ。
今後のcocokuriイベントを特別価格でご招待!
ついでですが、今回のリトリートに参加された方は、今後のcocokuriイベントに特別価格で招待されます。詳しい内容はまだ分かりませんが、継続的な参加を考える方はさらにお得になるかもしれません。
会場の妙海寺とは、どんなお寺なのか?
それでここで終えると、単なるイベント宣伝ですが、正直に言ってしまうとこのブログを読む方で「マインドフルネス」に興味のある方は、それほど多くはありません。どちらかと言えば、お寺の活性や事例に関心のある方ばかりです。
なのでここからは、そうした観点からもまとめてみます。
まず、今回の開催地となる勝浦市。千葉県の地理に詳しくない方のために簡単に紹介すると、千葉は大きく分けると2つのエリアがあります。一つは東京ディズニーランドとかある、東京都に取り込まれた感じの人口密集地域。そしてもう一つがそこから外れた、房総半島です。
めちゃくちゃ雑で千葉県民から怒られそうだけど、ほーりーも30年以上千葉県に住んでいたので許してください。
それで肝心の勝浦市ですが、こちらは房総半島エリア。外房と呼ばれる、太平洋に面した側にあります。
市の公式サイトには「勝浦市は市内全域が過疎地域の指定を受けています」と書かれた、筋金入りの人口減少地域です。
資料を読み解くと
本市の人口は、昭和30年代以降、ほぼ一貫して減少しており、平成27年3月末の人口は19,148人と市制が施行された昭和33年の61%の水準となっています。
と、なっています。
いや、けっして勝浦市をディスりたいわけではなく、私はこうした地域で新しい形を模索するお寺は、これからものすごく大きな存在になると考えているのです。
妙海寺の佐々木教道住職は、食を通じた町まちおこしを行い、今まで流通されていなかった未利用の地域資源を活用した「勝浦マヒマヒプロジェクト」などを手掛ける熱いお坊さんでもあります。
フリースタイルな僧侶たちのvol.40にも、こんな表紙で登場していますし。
こちらもね~。一部で「僧侶が生臭手にして、どや顔してるのってどうなの?」なんて叩く人がいましたが、世の中には弘法大師が鯖を持った鯖大師だってあるわけですしね。さらに佐々木さんは日蓮宗のお坊さんですが、宗祖の日蓮聖人は漁師の家に生まれ、誕生した時には鯛が群れをなして海面に現れたという伝説まであります。
ましてやその記事内容も自分の欲望のままに魚を食うとかそんな話ではなく、地元の漁師の方から「俺の代で漁は終わりだ」なんて話を聞いて何とかしなければと走り回っている活動についてですし、見た目だけであんなのお坊さんとしてどうなのという方は、それこそどうなのと思ってしまうわけです。
と、話がそれました。
つまり何が言いたいかと言えば、逆風吹き荒れる過疎の町で、地元の方と一緒に汗をかきながら、新しいお寺の形を一生懸命模索している場所、それが妙海寺なのです。
過疎地域で3万円するリトリートプランに、お寺の活路はあるか?
そしてやっと背景説明が終わって本題なのですが、このリトリートプランは参加費3万円(税込みだと32400円)かかります。先に説明したようにアフターフォローも含まれるので、これで一日プラン全てというわけではありませんが、それでも安くはありません。
さらに都心部から遠い勝浦までの往復交通費だって、馬鹿にならないものです。ですがこのようなプランも軌道に乗るなら、お寺にとってもひとつの切り口となりえるのかなと考えています。
ほーりーが去年、浄土宗兵庫教区さんの研修会にお呼ばれした時に『檀家数減少時代のお寺の方策』という講演を行わせて頂きました。
この中で「企業セミナー」は、
○市場規模が拡大している成長産業の一つ
○一人数万円するものも多くある
○お坊さんが数字で価値を示せば、そこに予算は付く
というお話をしています。
今回のリトリートは個人向けですが、それでもこうした価格設定は成り立つわけです。
念のために先に伝えておくと、これを365日続けられるわけではありませんし、このリトリートプランだけでお寺が存続することもないでしょう。
それは上記の講演でも『石垣型のお寺モデル』という話をしましたが、これさえあればすべてが解決する魔法のプランがないことと同じです。
しかしお寺を支える一つのパーツとして考えるなら過疎のお寺にも有効な話で、特に都心部から離れているからこそ提供できるリトリートには、まだまだ未知の可能性があると感じています。
ということで、、、
マインドフルネスはアメリカでは1000億円もの市場規模と言われる中で日本ではまだ1億円にも満たない程度と、これからさらに飛躍していくことが期待されています。
そして「マインドフルネス」という言葉自体もあちこちで独り歩きしており、そこにどのようなデザインを描くかはそれぞれの講師や事業者次第となっている部分もあります。
その中で仏教をルーツに持つからこそ、現在スタンダードに伝わる仏教との違いが鼻につくという方も少なくはありませんが、私は親和性が高いからこそお坊さんが講師となることで既存の仏教への理解も深まりやすくなると考えています。
それこそ、そのように進むかはお坊さんのデザイン力にかかっていますし、インナーコーリングのお坊さんコーチ陣は、それを目指してプログラム開発を進めています。
過疎のお寺 × リトリート × マインドフルネスは、果たしてどうなっていくのか。妙海寺さんの取り組みも一つの試金石になっていくでしょう。
またリトリートはマインドフルネス以外でも成り立ちますし、それぞれのお寺やお坊さんの得意分野に合わせて、開発も可能です。
例えば断食なんて、しっかり指導できるお坊さんがいれば、お寺で行うのもありですしね(実際にそうしたことをしているお寺もありますし)。水と空気のきれいな場所なら、都会よりはるかに価値の高いものが提供できますよ。
ということで、『【初心者向け】お寺でのマインドフルネス・リトリート』についてご興味ある方は、以下の案内もご覧になってみてください。