月刊住職連載100回記念。ほーりーの未来予測はどの程度当たるのか

2026年5月号の月刊住職で、ほーりーの連載が第100回目となりました。第1回目が2017年なので、9年間での大台到達です。
80回を超えた辺りから一つの目標にしていたので、達成できて嬉しいです。これもひとえに、いつも読んで下さっている方や取材にご協力頂いた方、サポートして下さる編集部の方のおかげですね。
しかしそもそも、ほーりーが書いた記事なんて読む価値があるのか。お寺活性をテーマに様々な意見を述べてきましたが、その中には未来を予測したものも多数あります。
そんなわけで今回は100回到達記念の振り返りとして、ほーりーの予言は本当に当たるのかを検証してみました。
月刊住職連載100回記念。ほーりーの未来予測はどの程度当たるのか
宿坊

まずはほーりーのメインテーマ。宿坊に関してです。月刊住職でも切り口を変えながら何度も書いているテーマですが、過去の記事を読み返して見つけた未来予測は大きくまとめると以下の5点です。
○宿坊は過疎地のお寺にとって武器になる
○宿泊費は高価格帯が増えていく
○企業と手を組むことで、ノウハウのない寺社が宿坊を開きやすくなる
○民泊の規制緩和で宿坊は形態が多様化する
○宿坊をテーマにお寺と行政は結びつきが強まる
これらは現在進行形のものもありますが、それぞれ的中と言って良いと思います。
またコロナ禍が広まった2020年8月号には、回復シナリオとして以下の予測を立てていました。
(1)同県・近県旅行から再開する
(2)観光振興策が増え、国内旅行が活発化する
(3)海外からの訪日旅行者数が戻り始める
(4)インバウンドの上昇トレンドが再び始まる
今から見れば当たって当然という気もしますが、あれだけ自粛・自粛と言われた当時、世論に逆らいながらこれだけ完璧に予測できたのはよくやったと思います。
デジタル技術

デジタル技術に関しては、以下の2つは大当たりでした。
●キャッシュレス
●生成AI(文章・イラスト)
キャッシュレスは2019年3月号で、生成AIは文章生成を2023年6~7月号、イラスト生成を9~10月号で特集しています。当時は社会に出始めたばかりでしたが、これらが一気に社会に浸透したことは説明するまでもないでしょう。
また原稿を書いた時には「バーチャルオフィス」という言葉を使っていましたが、2019年3月号で『テレワーク』について少しふれ、コロナが始まったばかりの2020年7月号ではお坊さんによるオンライン人生相談の事例を紹介しています。こちらもツールとしてはZoomを中心に、現在では当たり前のように使われるようになりましたね。
一方でタイミングがギリギリだったのは、『メタバース』です。認知度がまだ低かった2021年11月に記事を書いたら、掲載時(2022年1月号)には大ブームが起きており、紙媒体のタイムラグに難しさを感じました。
ただその後、あまりにブームが加熱したので、2022年3月号で「遅くても2年ほどで、その言葉を聞く機会が激減していく」と書いています。この辺はめちゃくちゃ当たっていますね。そして冬の時代が続く中でも技術革新は進んでいくと予想しましたが、このくだりが当たるかは今後にゆだねるところです。
さらに盛大に空振りしたものとして、『Clubhouse(クラブハウス)』があります。音声でコミュニケーションを取るSNSで、2021年4月号で紹介しました。こちらは「世の中に定着するかは分かりません」と書き添えてはいたものの、新しいトレンドを感じたからこそ紹介したわけです。なので残念ながら、この予想は外れたと言えるでしょう。
その他の技術
デジタル領域以外で、今後に注目と紹介したのは次の3つです。
●木造建築の革新
●昆虫食
●長寿化(再生医療・遺伝子治療)
木造建築に関しては、2019年4月号に記事を書きました。そして複数枚の板を繊維方向が直角に交わるように重ね合わせて作られる『CLT(Cross Laminated Timber)』が業界を引っ張っていることを紹介しましたが、このすごさが世間に分かりやすく伝わったのが、2025年に行われた大阪・関西万博です。

世界最大の木造建築物としてギネス世界記録に認定された「大屋根リング」や、日本政府直営のパビリオン「日本館」、そしてスペインやチェコなど他国のパビリオンでもCLTが活用されました。
万博は今後に向けて特に重要な技術が採用されるものですし、木造建築は寺社とも相性の良い分野です。これは大当たりと言って良い未来予測でしょう。
続いて昆虫食ですが、2019年1~2月号の記事で紹介した後、2020年5月には無印良品でコオロギせんべいが商品化されるなど、世間の認知度が高まりました。しかし2023年に徳島県の高校がコオロギパウダーを使った給食を試食で出し、大炎上しています。ここで潮目が変わって昆虫食ブームは沈静化しています。
なので当たりかけたけど、現時点では外れと言わざるを得ない感じでしょうか。ただ世界的な食糧危機への備えとしては依然として重要であり、今後もアンテナは張っておきたい領域です。
長寿化に関しては、人間の寿命が数百年まで伸びる可能性を2024年7月号で述べてきました。ただこれは数年で達成できる話ではありません。
関連分野としては経済産業省の資料などを見ても、再生医療や遺伝子治療分野の市場規模が世界的にどんどん伸びています。こちらも今後、想像もつかなかったようなイノベーションが起きていくことが考えられます。まあ、まだ当たりとも外れとも言えない状況です。
政治・経済
2025年5月号では、アメリカのトランプ大統領やイギリスのリフォームUKなどを事例に、いずれ日本でも外国人を締め出すべきという極端な主張に支持が集まる可能性を書きました。
すると2025年7月に行われた参議院議員選挙で「日本人ファースト」を掲げた参政党が1議席から14議席へと伸ばす大躍進を見せ、10月には高市早苗首相が誕生して外国人対策を矢継ぎ早に打ち出しています。この辺はびっくりするほど、大当たりですね。
また2022年6月号では、円安を日本経済の大きなリスクとして挙げました。当時から見ると円ドルレートはさらに進んで1ドル=159円台になり、物価高の大きな要因になっています。これも当たりと言えるでしょう。
さらに経済状況の悪化により、犯罪が増えていくことを予測したのが2021年7月号です。その後の警察庁のデータを見ても犯罪発生件数は増えており、この予測も当たってしまいました。お寺にとっては特に仏像盗難への備えが今後も必要です。
なお、たぶん外れそうな予測としては、2019年6月号に書いたベーシックインカムの導入があります。もともとすぐに実現するものではありませんが、局所的には導入されることがあっても現在の年金制度や生活保護と入れ替えるような大胆な改革は、日本には無理な気がしてきました。
コロナと自死自殺問題

コロナが広がり始めた2020年6月号で、私は過度な自粛で病気より経済的な苦境で亡くなる方が増える可能性を指摘しました。この時期は自粛反対を訴えるだけで袋叩きになりかねない状況だったので、この原稿を出すことはものすごく怖かったことを覚えています。
そして2022年6月号では20代の自殺者が一気に増えたことを、続く20202年7月号ではコロナ自粛が20代の若者以外にフリーランス、女性、子どもを苦しめている状況を伝えています。この辺は危惧した通りになってしまいました。
コロナ自粛がひとまず落ち着いた現在では、自死自殺者数に極端な増加は見られません。ただ2023年以降、企業の倒産件数が確実に増えています。この予想だけは本当に外れてほしいですが、経済死は遅行的に進行するので、まだまだ楽観視ははできないと考えています。
人口動態

人口の変化は地域別、年齢別、世帯構成といった項目ごとに、月刊住職ではたびたび紹介してきました。ほーりーがお寺にとって特に影響が大きいと考えているのは次の2つです。
●2020年代から地方の高齢者人口が減少し始めることで、お寺はこれまでと異なるレベルで苦境に陥る
●家族世帯が減少して単独世帯が増加することで、お葬式で女性の喪主・施主が増える
また地域ごとの展望としては、以下のものがあります。この辺は2050年頃までの長期展望なので、当たるかどうかは不明です。ただ当たったとしてもこれはほーりーの予測ではなく、公的機関のデータを紐解いた話ですが。
●しばらく東京への一極集中が続く
●大阪と名古屋の人口差は縮まる
●政令指定都市では福岡だけ人口が増える
そして遠い将来のことですが、いつか東京の人口を抜かす都市が生まれるという話とその根拠も書きました。これはほーりーの予測ですが、当たるとしても私が死んだあとでしょうし無責任な話です。が、お寺は100年後、200年後のことも考えなければいけませんし、可能性としてイメージしておいてよいと思います。
と、いうことで、、、
これらをまとめるなら、以下の形です。
大当たり : 宿坊の変化・キャッシュレス・生成AI・木造建築・外国人排斥運動
当たり : テレワーク・自死自殺問題・円安・犯罪増加
微妙 : メタバース・昆虫食
外れ : Clubhouse・ベーシックインカム
判定保留 : 長寿化(再生医療・遺伝子治療)・人口動態
そんなわけで打率100%とはいきませんが、それなりに未来予測の手掛かりを提供できていたのではないでしょうか(あくまで自己採点ですが)。
月刊住職ではこれからも社会の変化がお寺にどのように影響していくか、そしてそれをどう活用していけばお寺にとって後押しとなるかを、脳みそ目いっぱい使って考えていきますよ。
