本光寺の1万円結婚式は、仏前結婚式の4つの課題を解決する
ほーりーが結婚式を挙げた、千葉県市川市の本光寺。こちらが全てコミコミ1万円で挙式できる仏前結婚式プランを発表しました。
華やかさはすべて省いて、本光寺が1万円のみで仏前結婚式を行うよ
お寺での結婚式を盛り上げたいという話は、本光寺の尾藤住職といつも話していたのですが、なかなかうまくいかずに数年経ってしまいました。
仏前結婚式はなぜ、盛り上がらないのか。その大きな壁として
○お寺で式を挙げられることが、そもそも知られていない
○お寺で結婚式を挙げる体制が整っていない
○お寺は慶事に向かないと思われている
○お寺での挙式は手間がかかる
などが、挙げられます。
そしてこの壁を全て突破するのが、『1万円の仏前結婚式』です。しかもこれは仏教を伝える上でも理にかなっています。「少欲知足」の体現として、最もお寺らしさを追求したウェディングとさえ言えるかもしれません。
その概要をまとめると、以下の通りです。
●打ち合わせは当日、挙式前のみ
●服装はスーツやフォーマルなワンピースなど、自前で用意できるもの(それもなければ、カジュアルな服でも可)
●カメラマン不要(持ち込みは自由)
●指輪交換不要(行うことも可)
●披露宴は実施せず
●参列者は新郎新婦のみ(家族・知人などが入ることも可能)
●仏前結婚式は30分程度。打ち合わせも含めて1~2時間
●挙式可能な日は指定日のみ
●正婚允可証、記念の念珠が授与される
●バウ・リニューアル(夫婦が再び愛を誓うセレモニー)も可
そこで今回は本光寺がなぜ、この1万円の仏前結婚式を行うか、その理由をまとめてみました。
本光寺が1万円で仏前結婚式を行う理由
本光寺が1万円で仏前結婚式を行う理由。それを先に挙げた仏前結婚式が広まらない理由に対応して述べると以下の通りです。
お寺で式を挙げられることが、そもそも知られていない
仏前結婚式は日本で挙げられる結婚式全体のうち、0.7%ほどとなっています。そしてこの情報氾濫時代に既存の教会式や神前式と並べても、そう簡単には広がりません(というか、いろいろやったけど広がりませんでした)。
仏前結婚式は弱者です。そして弱者には弱者の戦略があります。それは他の結婚式と全く違うものであることを、明確に示す必要があります。
その時に注目したのが、日本では結婚した夫婦のうち、約半数が結婚式を挙げていないというデータです。日本の年間婚姻数は、厚生労働省が発表している人口動態統計によると58万6481組(2018年)です。
一方で結婚しても式を挙げない方の割合は、調査によって上下があります。ただよく使われる数字として経済産業省の「特定サービス産業実態調査」(2005年)によると、年間の結婚式(挙式・披露宴)は、35万1055件です。この数字だけ見ても、入籍と結婚式がセットと言えないことは確実でしょう。
結婚式を挙げない理由には、以下のものがあります。
○そもそも結婚式に興味がない
○お金がない
○準備をする時間がない
○目立つことが苦手
○親や親せき、職場の人間関係が上手くいかず、人を呼べない
このうち一番最初の興味がない方を除けば、結婚式を挙げたいけど挙げられない、あるいは挙げられなかった方達です。
そこで既存のホテルや神社からパイを奪うのではなく、そもそも訳あって挙げられない方向けに用意できれば、それは新しい結婚式として喜ばれるかもしれません。
お寺で結婚式を挙げる体制が整っていない
ほーりーは結婚式を挙げた際に、可能な限り自分で業者を探しました。
衣装、カメラマン、動画撮影、披露宴の司会者、お寺から披露宴会場への移動用バス、引き出物など、知り合いやネットで直接依頼しています。しかし料理や装花、着付けやヘアメイクは、披露宴会場のウェディングプランナーさんを通してお願いしました。
結婚式はこのように、多様な業種との連携が必要です。それをお寺が全て用意するのは簡単ではありません。
しかし1万円の結婚式は、ウェディングドレスも着なければ、披露宴も行いません。お寺の本堂で仏様の前で新郎新婦が結婚を報告するだけのシンプル挙式です。
このためお寺が結婚式を行うためのハードルが、ぐぐっと下がります。
お寺は慶事に向かないと思われている
結婚式といえば誰もが(特に女性が)思い浮かべるのは、純白のウェディングドレスを着て、拍手を浴びながらヴァージンロードを歩く姿です。人生で一番華やかな日と言っても、過言ではありません。
しかしお葬式のイメージが強いお寺では、この華やかさで勝負してもなかなか勝てませんでした。
それでも晩婚化や長引く不況の影響もあり、大勢の招待客を呼んだ豪華な式に抵抗を覚える人は増えています。ウェディングドレスより白無垢姿を選ぶ理由も、肌やボディラインの露出を嫌うためという意見もあります。
そしてその分、精神性が求められるようにもなってきました。ホテルで見た目重視の式を挙げるより、馴染みのあるお寺で華美を廃して静かに夫婦で結婚を誓う方が、心にしっくりくる方もいるでしょう。
つまり結婚式には「華やかさ」以外の需要が、もっとあるのではないか。これは仮説にすぎませんが、本光寺の1万円結婚式はここに賭けています。
お寺での挙式は手間がかかる
仏前結婚式が避けられる理由の一つに、パッケージ化されていないことがあります。これは先に挙げた「お寺で結婚式を挙げる体制が整っていない」にも通じますが、衣装もカメラマンも披露宴会場も自分たちで探してきてねという形式だと、大半の方はそれでサヨナラです。
しかし例えば本光寺の場合だと、市川大野駅から徒歩3分と立地はいいのですが、付近は住宅地のため、披露宴が行えるホテルやレストランはありません。ほーりーが結婚式を挙げた時も、披露宴会場までバスで1時間かけて移動しました。
これってブライダル業界の方に聞いても、致命的なハンデです。分単位でスケジュールを組むホテルなどでは、渋滞したり、雨が降ったときなど、対応が一気に難しくなります。さらに新郎新婦が移動する花嫁タクシーや、参列者を輸送するバスの手配など、余分なお金もかかってしまいます。
だとしたら欠点を逆手にとって、そもそも披露宴は行わない、忙しい新郎新婦のために事前打ち合わせさえほぼ不要という結婚式は合理的です。
これまで立地的に結婚式が挙げづらかったお寺でも、仏前結婚式が挙げられる。1万円の結婚式にはそんな利点があります。
ということで、、、
結婚式を挙げた夫婦は、挙げなかった夫婦より離婚率が低いというデータがあります。これはウェディング業界から言われることが多いため、ポジショントーク的な部分があります。
ただ、そのポジショントークのために隠されるもう一つの傾向として、豪華な披露宴を行う夫婦は離婚しやすいというものもあります。
「一生に一度のことだから」とお金を使わせる方には誘導しても、派手さを好む夫婦は離婚しやすいなんて、ブライダル業界からは口が裂けても言えないわけですね。
1万円結婚式に、華やかさはありません。衣装もわざわざ用意せず、最初から家にあるちょっとフォーマルなスーツやジャケット、ワンピースなどでも構いません(それもなければ、普段着だってOKです)。
写真撮影も手持ちのカメラで十分ですし、指輪もなければ不要です。ただしお寺では仏様の前で新郎新婦の誓いの言葉を読み上げますし、「正婚允可証」という結婚した証が授与されます。
そもそも美しく、豪華に着飾ることよりも、内面に焦点を当てた方が仏教的です。お金をかけるから、一生に一度のドレスを着るから、披露宴でたくさんの人に祝福されるから結婚式なのではなく、二人の間で新しい人生を歩む決意をすることが大切なわけです。
既存の華やかな結婚式は、世の中にいくらでもあります。こんなシンプルの頂点を極めた結婚式に目を向ける人は100人に1人もいないと心得ています。
それでも結婚式を挙げたくても、挙げられなかった人たちの助けになりたい。そんな想いで本光寺では、この1万円の結婚式を行うことになりました。
なお、この結婚式は当面は二カ月に一回、一組限定でお引き受けされています。ご興味あるご夫婦は、ぜひ本光寺サイトもご覧ください。