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○○でお金を稼ぐなんてけしからんという思想が文化を潰す

日本各地にある動物園、いろいろピンチみたいです。

日本の動物園の安すぎる入園料 2000円に上げたら経営は楽にという記事を読むと

新しい施設を作って来園者数を増やそうとしても、簡単にいかない理由がある。それは安すぎる入園料だ。『旭山動物園』は大人820円、『上野動物園』は600円だ。また、年間何度でも入れる年間パスも、『旭山動物園』が1020円、『上野動物園』で2400円とかなり安い。また、公的な施設であるために、「中学生以下、65才以上は無料」といった割引をする施設がほとんどだ。

「公立施設で市民の憩いの場として提供したいという目的があるので、入園料を上げることができないのが現状です。もし、2000円に上げられたら、どこの動物園もかなり経営が楽になると思います」

それでちょっと前に見たツイッターのつぶやきも思い出しました。

そうなのかーと思って、都内の主だった動物園・水族館の入園料を調べました。

東京の動物園入園料

東京都恩賜上野動物園    600円
多摩動物公園        600円
井の頭自然文化園      400円
江戸川区自然動物園     無料
板橋区立こども動物園    無料
町田リス園         400円
羽村市動物公園       300円
篠崎ポニーランド      無料

東京の水族館入園料

サンシャイン水族館    2000円
葛西臨海水族園       700円
しながわ水族館      1350円
東京タワー水族館     1080円
エプソンアクアパーク品川 2200円
すみだ水族館       2000円

うん。これは上記発言も納得の価格差ですね。ちなみに水族館では葛西臨海水族園だけ1000円未満ですが、こちらは東京都が出資して指定管理している公営施設です。また、私立動物園の料金はどうかと調べたところ、富士サファリパークは2700円でした。

ここで私が言いたいことは、動物園と水族館でこんなに違うなんて不平等じゃんということではありません。水の中の生物より陸の生物にふれる機会を増やす方が、税金の使い方として価値があるというのであればそれはひとつの判断です。

ただし子供の数が減っている中、動物園が水族館よりも構造的に疲労してきたのは示唆的です。冒頭の記事で「入園料を2000円に上げられたら」というのは本音でしょうが、上野動物園の入園料が2000円まで上がることは簡単ではないでしょう。

それでもまずは1000円に上げるだけでも、状況は変わってくると思います。

○○でお金を稼ぐなんてけしからんという思想が文化を潰す

そしてここからが本題ですが、この動物園と水族館の価格差を持って思考実験することができます。

もしもここから税金で、葛西臨海水族園のような水族館をたくさん建てたらどうなるか。もしくは動物園における上野動物園のような圧倒的強者な水族館を、税金投入して作ったらどうなるか。きっと、他の水族館は軒並み潰れていくでしょう。

(そしてその水族館も、今の動物園のような状況に陥ります)

で、これってお寺の世界でも言えることです。仏教で言えば慈悲の精神とでもいうべきか、お寺ではなんでもボランティアでやるのが当然みたいな空気がまかり通っています。

それは決して悪いことだけではなく、宗教が持つ良さや強みでもあるのですが、過度に行き過ぎるのも考えものです。現にお金が入るポイントが葬儀法要のみに限定されて、Amazonの派遣僧侶問題のようなねじれた構造が生まれています。

拝観料が安すぎるという問題について

観光で成り立つお寺はごくわずかなので、これが全てというわけではありませんが、最近の拝観料を巡る議論も象徴的です。

私が敬愛するデービッド・アトキンソンさんは著書の『国宝消滅』で、寺社などの拝観料について指摘しています。

日本の有名な国宝や重要文化財の拝観料、入場料等の平均を出してみると、結果は593円。海外平均の31%にすぎず、圧倒的に安いことがわかります。

「宗教施設だから」「公共性が高い」「地域市民のため」「教育活動のため」など、さまざまな理由を挙げて、日本の文化財は入場料が安く設定されているのは「日本の文化」だと、その正当性を訴える方がいます。

拝観料が安いというのは、ユーザーメリットがあるようにも思われますが、むしろ文化財に関わる人たちにとっての恩恵のほうが大きいのです。(中略)サービスを手厚くする必要はありませんし、改善要望などに耳を傾ける必要もありません。つまり、シニカルに考えると、入場料が安いと運営側、とりわけ学芸員が楽なのです。

文化財が自分で稼ぐことを考える前に、まずは国が最大限の努力をすべきだという人もいますが、それは逆だと思います。国から文化財によせられる補助というのは、とどのつまりは国民の税金です。



 国宝消滅―イギリス人アナリストが警告する「文化」と「経済」の危機

 デービッド・アトキンソン 著

 Amazon 楽天ブックス で購入

「楽だから」という惰性的なメンタルもありますし、「宗教がお金を稼いじゃいけない」という外圧も大きいでしょう。先日、私の佐賀講演が6日前に主催者からキャンセル依頼が来たのもこの「外圧」です。

宗教からお金を切り離せと叫ぶ人は、ゴシップ記事に煽られすぎだよね

しかし今年の4月には財務省から、文化財の入場料には値上げの余地があるという発言が出ています。法隆寺や姫路城の拝観料・入城料も値上げされましたが、明らかに国だけですべての文化財を支えることはできなくなっています。そこで「料金を上げる=サービスレベルも厳しいものが求められる」ことと、「信仰や公共に基づく人(市民・学生・檀信徒など)は無料・割引するといった入り口の多層化」が求められるのです。

まあ、ほーりーは日本でもトップクラスで寺社の拝観料を払っている人間なので、私個人から見たら値上げは痛い話ですけどね。だけど京都の大寺院なんて展示やガイドによる説明をもっと深堀して、様々な体験スペースやお坊さんの法話も設けて、一日がかりで一カ所回るのがやっとくらいに充実すれば、それは私みたいなヘビーリピーターだって嬉しい話ですよ。

なんならさくっと回る人のコースは値段据え置きして、じっくりと学びたい人や普通は入れない奥の奥まで見たい人には、デラックスコースを新設したっていいわけですし。

ちなみにお坊さんや寺社サイドからは、あまりこの手の発信は見られませんね。そんな中、先日発行されたフリースタイルな僧侶たち42号は、『拝観料のゆくえ』という特集記事を組んでいました。

フリースタイルな僧侶たち

お堂は建設時に多額の費用と人出がかかる。もちろん修復の際も同じこと。お寺の収入でそれらが賄われるが、その収入はもとはと言えば、信者の寄進やお賽銭だ。

彼女「拝観料高いね」
彼氏「全部お坊さんの給料だよ」

カップルよ。そうじゃない。

どちらかと言えばエッセイ的な記事ですが、こうした話題もどんどん出していけばと思います。そしてお坊さんばかりが言うのも限界があるので、私も最近は活発に発言するようにしています。

私が顧問を務める宿坊創生プロジェクトでは、宿坊の新設に数億円規模でファンドが組まれていますしね。こんなの、これまで全くなかった動きです。

宿坊とファンドは軋轢を生みながらも、爆発的に広まる

宗教とお金は、これから新たなフェーズが始まります。「お寺や神社がお金を稼ぐなんてけしからん」と言っている人は、バブルから思考が切り替わっていないことを認めた方が良いでしょう。

お金がじゃぶじゃぶ入ってくる時代なんて、極端な一部の事例を除けばとっくに終わっているんですよ。

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