昆虫食を勧められ馬鹿にされたと怒るお坊さんに、仏教は伝えられない
先日、大阪の岸和田にある薬師院で行われた昆虫食イベントに出かけてきました。
虫を食べる? なにそれ? と、不気味に思われる方もいるかもしれません。ですが2013年5月に国連機関のFAO(国連食糧農業機関)が、これから世界規模で起きてくる人口爆発による食糧不足対策の一つとして昆虫食を推奨したことにより、現在は世界中で注目が高まっています。
そんなわけでほーりーも興味を持ち、2年前に多摩川でバッタを捕まえて食べるワークショップに参加しました。そしてこれはすごい! お寺でも行われないかと思っていたら、以前にほーりーが講演させて頂いた薬師院で、昆虫食イベントが開催されました。その時に書いたのが、以下の2記事です。
上記のまとめになりますが、ほーりーは以下の3点で昆虫食は仏教を伝える力になると考えています。
○偏りなく物事を見るのに役立つ
○食事への感謝につながる
○命や平和を考える機会になる
お経に書かれた言葉を聞くだけより、遥かに実践的で腹に落ちる体験だったんですよね。
しかーし、この記事を読んだ方から「お寺をなんだと思ってるんだ」と激おこのメッセージが送られてきました。
むむん。なんということだ。私の文章を普通に読めば昆虫食を勧めているのは、お寺を蔑んでの発言でないことは理解できるはずです。
それなのに「坊主は虫でも食ってろ」みたいな侮辱の言葉ととらえるのなら、これは昆虫食に対する偏見に凝り固まっている証拠でしょう。少なくとも仏教はこうした物事を色眼鏡で見る姿勢を、戒める教えではあったと思います。
最近、テクノ法要で話題の僧侶・朝倉行宣さんがツイートされた、以下の問題提起にも通じるものがありますね。
テクノ法要に否定的なご意見の根底には、仏教に対する「先入観」を感じる。
先入観から開放されると広い視野で物事を見ることが出来ます。
それが仏の教え。
ちゃんと伝えたい。
ってか、伝えるのが僧侶の役割。— 朝倉行宣(テクノ法要) (@gyosen_asakura) 2018年11月17日
研究家が語った昆虫食の4つの良さ
とは言え、昆虫食なんてまだまだ概念がスタートしたばかり(歴史は有史以前からありますが)。知識がないのは仕方ありません。
そこで今回は昆虫エネルギー研究所の佐藤裕一先生が語られた、昆虫食の良さをダイジェストでお伝えしてみます。
昆虫食は栄養価が高い
昆虫は栄養が豊富なことで知られています。まず、牛肉とトノサマバッタの栄養価を比べたものが、以下の図です。
まず一目でわかるのは、高タンパク低脂肪であることです。さらに脂肪自体も質が良く、常温でもさらさらで動物性より植物性の脂肪に近い性質があります。
また「その他」の部分に含まれる、各種ビタミンやミネラル、食物繊維も充実しています。これらは現代人の生活には不足しがちなものであり、体調を整えたり美容や精神などにも密接に関わります。
そして昆虫食で特筆すべきものに、全体食であることも挙げられます。牛一頭を丸ごと食べることは不可能ですが、昆虫はそのまま口に入れることが可能です。これは栄養をバランス良く摂取することに優れていますし、お寺であれば精進料理の根底に流れる無駄を出さずに命を頂くことにも通じます。
食糧危機は大ざっぱに言えば、タンパク質の不足であり、炭水化物では補うことができません。飢餓と言えば口に入れるものが何もない状態を、思い浮かべる方もいるでしょう。しかしそれはごく一部の地域であり、大半は食事は取れるものの栄養に偏りがあり、成長が止まったり病気になったりしています。
昆虫は世界で最も多様(確認されている生物種の半分以上)な生態系を持った生物であり、その栄養構成も一種一種異なります。例えば芋虫は脂肪分が多かったり、イエバエはマグネシウム、リン、カリウムが豊富です。
それだけに今後の研究や商品開発が進むことで、様々な健康効果や食糧難対策の可能性も秘められています。これだけを見ても、昆虫食が貧しい食事でないことは分かって頂けるでしょう。
昆虫食は環境負荷が低い
昆虫食と聞いて多くの方が思い浮かべるのは、その辺で走り回っている虫を捕まえて食べることだと思います。ほーりーは上述の通り、多摩川でバッタを捕まえて食べるワークショップに参加したことがあるので、これ自体は否定しません。
ですが昆虫食が商業的に広がっていく上で、メインになるのは養殖です。これは畜産業や農業などを考えれば、容易に想像がつくでしょう。
そして昆虫と豚・牛で体重1kg増加に必要な餌の量を比べたものが、以下の図です。これを見ると、圧倒的な差があること分かりますね。アブなんて食べた分がほとんどそのまま、身体の成分になるようです。
しかしなぜこんなに差があるのか。それは昆虫が変温動物であることに理由があります。一方で哺乳類は恒温動物です(学術上はこう言い切ることにも問題あるのですが、ここでは概念として)。
体温を一定に保とうと思えば、それだけエネルギーを多く使います。昆虫はそこを省ける分だけ、成長に力を回すことができるのです。
また、省スペースで大量生産が可能であること、全体食(可食部率が100%)で廃棄物が出にくいこと。CO2排出量が少ないことなど、昆虫の養殖には数々のメリットがあります。
現在は2015年に国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)がお寺社会でも大きく掲げられてきておりますが、昆虫食を仏教会が全体で推進することなんてうってつけではないでしょうか。
昆虫食は美味しい!
昆虫が理論的にはどんなに優れていても、そこにおいしさがなければ受け入れられることはありません。
もちろん昆虫であれば、すべからくおいしいなんて話はありません。みんなが大好きなカブトムシなんて、味は悲惨らしいです。
ですが多種多様であるだけに「実はおいしい」昆虫もたくさんいます。そしてこれから調理法や加工技術が研究開発されていけば、さらにそのおいしさも広がってもいくでしょう。
実際に私が最初に昆虫食を教わった地球少年・篠原祐太さんは、赤坂サカスで行われた「ワールドカップフードフェス」でコオロギラーメンを持ち込み、並み居る競合(もちろん、他は昆虫食ではありません)を相手に堂々の2位を獲得されていました。
そして今回の佐藤裕一さんの講義では、美味い昆虫ベスト3が発表されました。
第3位 セミ ナッツ風味のエビ味
第2位 蜂の子 うなぎに似たコク
第1位 カミキリムシの幼虫 マグロの大トロに匹敵する美味さ
とのことです。
ちなみにほーりー的な美味い昆虫ベスト3(そんなにたくさん経験あるわけでもないので恐縮ですが)は
第3位 タガメ タガメのフェロモンは洋ナシの香りがします。焼酎付けが激ウマい
第2位 ミールワーム 揚げるとサクサクして、スナックみたいなテイスト♪
第1位 セミの幼虫 唐揚げが普通の鶏唐揚げより、あっさりしていておいしいです!
ですね。
昆虫食はおもしろい!
昆虫食は面白い! 佐藤さんは様々な面白さを挙げられていました。
そもそも昆虫は、日本でも41県55種が食べられていました。そして世界的に見れば、20億人が1900種を食べています。
冒頭でも昆虫食を侮蔑の言葉と捉えた方を紹介しましたが、食事の違いは差別や偏見の対象となりやすいものです。
そしてほーりー的には、やはりゴキブリ食は面白いです。ゴキブリを食べると言っても、その辺を走り回っているヤツラを捕まえるわけではなく、ちゃんと衛生面や味にも配慮された食用のものです。
が、ここまで読んで昆虫食の知識を得たうえで、それでもゴキブリは食べられないなと思うお坊さんがいたとしたら、それはもうその方の仏道自体がちょっと問題ありかなと思います。
食べた上で味が苦手というのであれば別ですが、偏見を超えられないお坊さんに世の中のものをあるがままに見ようとか言われても、説得力が感じられないので。
世の中には「フルーツゴキブリ」なんてパワーワードもあるわけですよ。
ということで、、、
人口がこれから減っていくと言われている日本で、世界の人口が増えすぎて食糧危機になっていくという話は、まだまだピンとこないかもしれません。
ですが国連の発表によれば2050年には世界人口は98億人に達すると言われています。2017年の世界人口が76億人なので、30年ちょっとでさらに1.3倍近くも増えるわけですね。そしてその頃には「昆虫なんてゲテモノは食べたくない」なんて、言っていられなくなる世界が来るかもしれません。
昆虫を食べなければ口に入るのは、(大金持ちでなければ)今食べている牛や豚などではなく培養肉です。
どちらを好むかは人それぞれの判断によるでしょう。昆虫食を偏見の目で見るなと言っている以上、培養肉だってフラットな視点から見ていく必要もあります。
しかしとりあえず現時点でほーりーの考えとしては、より自然志向な昆虫食の方が好みに合うかなとは思っています。現実的には培養肉の方が広まりそうな気もするので、判官びいきなところもありますが。
まあ、難しい話は置いといて。ゴキブリを肴に酒を呑むのも乙なものですよ。ミシュランの三ツ星だけが、グルメではないのです。