せまいと思われた本光寺の境内が、参拝者に広いと喜ばれだした理由
先日、千葉県市川市にある本光寺にお邪魔した時、住職が面白いことを話していました。それは境内にいろいろ設置するようになってから、「広いお寺ですね」と言われるようになったとのことです。
もうちょっと経緯を説明すると、本光寺はファンキーな動画CMが大ヒットし、全国から人がお参りに来るようになったお寺です。
その動画がこちら。
今でこそ軽いノリのお坊さんは増えましたが、こちらが制作されたのはもう10年ほど前です。そしてこの動画が爆発的にヒットして、「はひふへ本光寺」には日本中から人がお参りに来るようになりました。
中にはこの賑やかな動画を見て、自殺を思いとどまった方もいたとのこと。
しかし本光寺はもともと町中にある小さなお寺です。築数百年の古建築や名勝指定の庭園、文化財級の仏像などがあるわけでもありません。
なのでこれまで動画に期待を膨らませた方がお参りに来られ、「思ったよりも狭いんですね」と、がっかりされてしまうことも少なくなかったそうです。
本光寺の境内にある、様々な看板や体験メニュー
そこで本光寺では境内に様々な看板や巡礼コース、体験メニューを設置します。
例えば境内に入る前から外壁には、お寺の説明看板が並んでいます。
中に入ると、案内マップや御由緒説明がずらり。
そして本堂の前には、参拝の仕方が丁寧に掲示されています。
五行に絡めた参拝コースが作られていたり。
仏教図書館や授乳スペースが解放されていたり。
二人で力を合わせないと鳴らせない鐘もあります。
ほーりーが考案した、縁切りダーツも賑わっています。
明るい縁切りを目指す、本光寺の縁切りダーツをプロデュースしたよ
本堂の前には浄土ポストがあったり。
絵本にもなったキャラクター・木魚のぽっくんがいたり。
繰り返しお参りに来るお子さんは、成長も確かめることができますよ。
山門から本堂までまっすぐ行って帰れば3分で終わるお寺ですが、これだけ用意(というか、他にもたくさんあり)されていると、境内が広く感じられるようです。
お寺や神社の境内を、参拝者に広く感じてもらう方法
そしてこれは他のお寺や神社でも、応用可能です。そのキーワードは「滞在時間」です。
もちろん純粋に面積が大きければ、広さは感じられるでしょう。しかし境内の面積を増やすなんて、簡単ではありません。そこでいろんなところに目が止まり、足が止まる仕掛けを作ると、滞在時間は伸びていきます。
そして滞在時間が延びれば、ここは広い思われる(あと、仏教も伝わる)わけです。
これに関してちょっと似たものに、美術館の満足度調査があります。情報処理学会研究報告で挙がっている『美術館学習初心者の絵画鑑賞における音声ガイドの有無が視行動/満足度に及ぼす影響』(pdf)によると
鑑賞総時間がより長く、停留頻度がより小さいほど満足度が高い可能性が示された
とのことです。
この資料は絵画の知識がない方に、音声ガイドを付けた時と付けなかったときの鑑賞時間と満足度の相関を調査したものです。
結論は上記の通り、説明が増えて長い時間絵を見てもらうと、満足度が高まりました。特にガイドがないとパッと見てすぐに次の絵に移るタイプの人は、満足度の増加が高い結果になっています。
これは美術館による音声ガイドの例ですが、寺社でもササっと本堂や拝殿をお参りして帰る人には通じる話でしょう。本光寺の例で言えば、それが狭いとがっかりされていた境内が「広い」と喜ばれるようになった理由と言えそうです。
ということで、、、
上記の美術館調査では、滞在時間が長すぎると疲れてしまう可能性も語られていました。ですがもともとが巨大寺院でなければ、そこを心配する必要はなさそうです。
実際に本光寺でもやり過ぎと思えるくらいに、境内にはいろんなものが並んでいます。また本光寺以外を見ても、境内に様々な案内看板や体験メニューを用意している寺社には、有名無名に関わらず多くの参拝者が訪れている印象があります。
この情報量と体験を増やすことで、境内を広く見せる作戦。お寺や神社にとってはとても有効な方法ですよ。