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これから自死自殺者が3万人に戻るので、お坊さんにお願いしたいこと

新型コロナウイルスが深刻さを増しています。この「深刻さが増している」には二つの意味があります。一つは感染が広がっていること。そしてもう一つは経済が落ち込んでいることです。

両者とも様々な角度から検証されていますが、この二つは大まかに言えばトレードオフです。人の移動を厳しく制限すれば、感染数は抑えられます。しかしその分経済へのダメージは深刻になるでしょう。逆もまた然りです。

それでも今のところ、論調に勢いが強いのは前者です。なぜならこれは「命はお金に変えられない」と考えている方が多いためです。しかしほーりーはこれは命とお金の交換問題ではなく、経済が落ち込めば自死自殺者が増えるため、どちらも命の問題と考えています。

ただし不況による死者数増加は、時間差を経て起こります。今回はその過程をバブル崩壊時のデータをもとに、予測してみました。

日本の自殺者数推移

お坊さんなら多くの方がご存知と思いますが、日本は自殺大国と言ってもよい国です。厚生労働省の国別自殺率では、以下のようになっています。

国別自殺者率

主要国の中では日本はロシアに次いで、自殺死亡率の高い国です。ロシアは日照時間が少ないため鬱になりやすく、身体を温めるためにアルコール摂取量も多くなりがちです(貧富の差も大きいため、それだけが理由とは言えませんが)。

しかしそうした条件が日本より当てはまる国は、他にも多くあります。その中で気象条件の良い日本の自殺死亡者数が突出しているのは、社会的な要因が大きいと見てよいでしょう。

それでも日本の自死自殺者が年間3万人を切ったのは、2012年でした。それまで日本では様々な対策を施し、それが一定の成果を上げています。年表から大きな動きを拾い上げると

2006年 自殺対策基本法が成立
2007年 自殺総合対策大綱が閣議決定
2009年 地域自殺対策緊急強化基金を設置
2012年 自殺総合対策大綱の見直し
2016年 自殺対策基本法の一部を改正する法律が成立

といったものがあります。

しかしそれでは、日本で自殺問題が社会として大きく認知されたのはいつなのか。これは1998年です。この年に自殺者数は前年の1.3倍以上(24391人→32863人)に跳ね上がりました。今でもよく挙げられる、自殺者数が年間3万人を超えた最初の年でもあります。

自殺者数推移

1998年に自殺者はなぜ急激に増えたのか?

上記のグラフを見ても、1997~1998年の異常な変化は感じ取れると思います。それではこの年に何が起こったのか。それは1991年から始まるバブル崩壊に端を発します。

日経平均株価が最高値を付けたのは、1989年12月29日です。その後の大暴落により、日本経済は大きな混乱を巻き起こしました。

いわゆる『バブル崩壊』は、1991年3月~1993年10月までの景気後退期を指します。しかしその後も日本経済をむしばみ、実経済に大きな影響を及ぼしたのは、1990年代後半に入ってからです。

毎年、京都・清水寺では日本漢字能力検定協会によって選ばれた今年の漢字が揮ごうされますが、1997年に選ばれた漢字は『倒』です。これは北海道拓殖銀行、山一證券をはじめ、相次ぐ大型企業の倒産や銀行の破綻を想起する言葉として選出されています。

(サッカー日本代表が、強豪を相次いで倒してW杯初出場を獲得したというポジティブな理由もありますが)

つまり

(1)バブル崩壊して金融市場が大打撃
(2)余波を受けた企業が相次いで倒産
(3)行き詰まった個人が死を選ぶ

という流れの、最終段階に到達したのが1998年だったということです。

コロナより、コロナ不況で大勢の人が死ぬ

今回のコロナウイルスが、上記と同じ流れに入るかは分かりません。それは現在のパンデミックがいつ頃収束するか、金融市場や実経済が被害をどの程度で抑えられるかによって変わります。

ですがかなり高い確率で、これから数年かけて自殺者は増えるでしょう。自殺者3万人時代がまた戻ってきたとしても、不思議ではありません。

内閣府自殺対策推進室の『平成27年中における自殺の状況(pdf資料)』資料を読むと、自殺理由は経済問題が健康についで2位を占めます(特に男性は多い)。補足すれば勤務問題は別項目としてあるため、「経済問題」とは職場のいじめや過重労働などではなく、貧困が原因と考えられます(複合的な場合もあるでしょうが)。

また、ほーりーの愛読書の一つ、『「健康格差社会」を生き抜く』によると

 「健康格差社会」を生き抜く (朝日新書) 近藤克則 著

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高所得で保険料が最も高い人たちの死亡率11.2%に比べ、最低所得層(生活保護受給世帯)では34.6%と、男性では実に3倍以上も死亡率は高い

うつ状態と所得との関連をみると、最低所得層の人で、最高所得層の人に比べ平均で5倍、65~69歳の男性に限ると6.9倍も多い

貧富の差が大きい社会では「勝ち組」を含む国民全体の健康度までが悪化する可能性が指摘されている

と、いった言葉も並んでいます。貧困はストレートに死に直結するものなわけです。

なので経済を犠牲にしてでも感染を封じ込める「命はお金に変えられない」という考えが、コロナウイルスによる肺炎以上に人を殺す可能性があることは頭に入れておくべきです。

(もちろん、感染対策はノーガードで良いという、極論を言っているわけではありません。世の中はゼロか一かでしか物事を考えられない人と、議論する気もありません)

ということで、、、

このようにコロナ不況による自死自殺者は、これから増えていくでしょう。そしてそれをあらかじめ予測できるのであれば、今から対策を講じておくことには大きな意義があります。

実際にお坊さん達の中には経済的に困っている方やうつ病などで苦しんでいる方、自死自殺を防ぐ活動をされている方など、社会のセーフティネットに携わる方がたくさんいます。これらを強化していくことは一つの方策です。

またこうした団体は手弁当で動かれている方も多いので、今こそ宗派組織などがサポートしたり、金銭的に援助することも必要と思います。

ほーりーの知り合いにも、『京都自死・自殺相談センターSotto』さんとか、『自殺対策に取り組む僧侶の会』とかいますし、何かちょっとでもご協力できることがあればと思います。

(この記事を書くのも、その一環と言えば一環です)

京都自死・自殺相談センターSotto

自殺対策に取り組む僧侶の会

東日本大震災や熊本地震、近年度々起こる台風被害などでも、多くのお坊さんが救援活動に動かれました。今回は質が異なるとはいえ、それら以上に死者が生まれる問題になるかもしれません。

もちろん苦境に陥っているお寺もたくさんあるので、お坊さんであれば慈善活動を行うべきだなんてことは、ほーりーは考えていません。

それでも自死自殺者が再び3万人を超える。それを念頭にした準備がお寺から生まれるなら、これから不安だらけの社会に希望をもたらします。

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京都自死・自殺相談センターSotto

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