コロナ・戦争・円安は、困窮者を追いつめる要因になっていく
コロナ禍が始まって以降、ほーりーは病気とは別に経済の落ち込みで死者が増加する可能性を危惧してきました。以下はコロナが広がり始めた頃に書いた一昨年の記事です。
これから自死自殺者が3万人に戻るので、お坊さんにお願いしたいこと
この記事で書いたことを簡単にまとめると、1991年にバブルが崩壊した後、1998年に自死自殺者が急激した数値データとその背景です。そして現状はこの時代とかなり似ていると感じています。
なのでほーりーとしては、お坊さんには苦しんでいる方が駆け込める受け皿をもっと作って頂けたらありがたいと考えています。人生相談や貧困層支援、自死自殺問題に取り組む方々の並々ならぬ努力には頭が下がる思いですが、以前にそうしたお坊さん方を取材させて頂いた時も周りには関心を持ってほしいとお話されていました。
そして今年に入り、コロナの他にも社会を揺るがす問題が増えてきたので、今回は改めてまとめてみます。
コロナ、戦争、円安は困窮者を直撃する
コロナに続いて今年に入り、経済的に困窮している方をさらに追いつめかねない二つの要因が浮上しました。それは戦争と円安です。今回はこの3つの要素を俯瞰してみます。
コロナによる経済ダメージは、これから表面化する
コロナによる経済ダメージは、GDPにも露骨に出ています。以下は内閣府が発表している年次GDPの推移ですが、2019年と比べて2020年、2021年は大きく減退していました。
現在の経済状況に関して言えば、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などでダメージを受けた企業に補助金や無利子・低利子の貸し付けが行われているため、深刻な失業増加には陥っていません。ただし補助金はいつまでも出るわけではありませんし、借金はいずれ返済が必要です。その時になって大量倒産が始まる怖さは感じられます。
朝日新聞の記事でも、次のように報じられていました。
東京商工リサーチ(TSR)は13日、2021年の倒産件数(負債額1千万円以上)が6030件となり、57年ぶりの少なさだったと発表した。コロナ禍を受けた政府の支援策で、企業がお金を借りやすい環境が続いたためだ。だが、支援は徐々に終わりつつあり、今後は積み上がった借金を返せない企業が相次ぎ、一気に倒産が増える懸念が強まっている。
バブル崩壊の時も、自死自殺者が増加したのは5年以上経ってからです。会社が倒産して失業手当もなくなり、様々な金策を施しながらも行き詰っていく。そして死を選ぶ要因は複合的であることが多いものですが、生活が苦しくなるにつれて人間関係が悪化したり、うつ病やアルコール依存などを発症して追いつめられてしまうケースも少なからずあります。
その先に最悪の選択をする方が堰を切ったように増えてしまうことは止めなければなりませんが、経済死はこのように遅効的な性質があるため、世間からその深刻度が理解されにくい問題があります。
何度も言いますが、行き過ぎた感染防止策が奪う命については、もっと真剣に考えるべきでしょう。
ロシアによるウクライナへの侵攻
今年の2月にロシアがウクライナへ侵攻を始めました。人道的な観点で言語道断であることは言うまでもありませんが、これは二国間の問題のみならず、日本にも大きな影響を及ぼします。
私たち庶民が身近に感じるものとして、これからインパクトが強くなっていくのは食料価格の上昇かもしれません。外務省のサイトによれば小麦の生産量の多い国としてロシアは世界第3位、ウクライナは7位となっています。この二か国で世界の小麦輸出の約3割を担っており、これから深刻な食糧難が起きる懸念もあちこちで述べられています。
ちなみになるほどーと思ったマネーポストの記事ですが、「貧乏人は麦を食え」と発言して批判が集まった池田勇人・蔵相(後の首相)の言葉は過去のもの、これからは麦(パン)が値上がりするので家計防衛術としてお米を食べようという話が載っていました。
またガソリン価格も上がっています。もともと世界が脱炭素に踏み切る中で石油消費量の先行きが不透明になっており、産油国が採掘投資を抑制し始めたことで供給不足が起こっていました。これに輪をかけたのもロシア・ウクライナ情勢で、ガソリンや各種エネルギー供給は不安定になっています。
これらは車に乗らない方でも物資の輸送や電気料金の値上げで、懐を痛めていくでしょう。今のところヨーロッパ各国への影響が強そうですが、日本ばかりが無傷でいられるわけでもありません。
円安による輸入価格の上昇
そして3つ目の要因として、円安が出てきました。以下は2018年からのドル円レートです。見慣れない方のために説明すると、グラフが上に伸びるほど円安(ドル高)を示しています。
ほーりーはFXも少したしなむため、この為替レートもウオッチしています。これまで世界的に先行きの不安な出来事があったときは、安全な資産と考えられていた円の価値が上がる傾向にありました。これはコロナが広まった時にも発生し、グラフが示す通り2020年は円高傾向になっています。
ただこの時に為替の世界で言われていたのは、思ったよりも円高にならなかったというものです。つまり「有事の円高い」は機能しなくなってきたのではないか、率直に言えば「円はもう安全と見なされていないのではないか」ということです。
日本ではここ数十年、世界の国々から取り残されていくように経済停滞が続いています。そしてこれから人口減少や高齢化が進むことも知れ渡っています。つまりこの国には将来性がなく、円は長期的に下落するのではと思われてきています。
そして直近のドル円レートで言えば、アメリカ(FRB)と日本(日銀)の金融政策にも違いがあります。インフレを抑えるために金利を引き上げていく前者と、変わらず金利を抑え続けている後者。その差が円安を一気に押し進めました(ちなみに大暴落したロシアのルーブルでさえ、ウクライナ侵攻前の水準近くに戻ってきました)。
食料自給率が低くて資源も少ない日本では、円安はそのまま輸入価格に跳ね返ります。ファミリーレストラン大手のサイゼリヤ・堀埜一成社長は、円安をコロナ禍やウクライナ危機に並ぶ逆風に挙げています。
製造業など恩恵を受ける業界もありますが、「悪い円安」という言葉が叫ばれ始めているのは昔ほど円安がプラスにならなくなってきているためでしょう。
ということで、、、
コロナ不況、ロシアとウクライナの情勢、そして円安と、それぞれどのように進展するかを読むのは難しいものがあります。ただほーりー的にほぼ間違いないと考えているのは、どれも劇的には改善しないだろうということです。そしてこれは確証まではありませんが、3つとも2022年は悪化すると予想しています。
コロナだけでも多くの方を苦しめてきたのに、これからそれが3倍になって伸し掛かるイメージです。お寺や神社自体へのダメージも考えられますし、無理に何かしてほしいと思っているわけでもありません。
ただこれから苦しんでいく方に宗教が救いの手を差し伸べられる存在であってくれたらと、ほーりーは願っています。こうした活動をされているお坊さんたちの団体に取材した時の記事も、改めてリンクを貼っておきます。