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講演料を赤字にするスター僧侶がお寺の首を真綿で絞める

ほーりーの講演風景

先日、とある超有名お坊さんと話をしていました。

それが結構深いところに踏み込む議論になったのですが、その中でほーりーの心をもやっとさせる言葉に出会いました。

それはその方の(講演などの)個人活動は、収支計算したら赤字になっているとのことです。

講演料は低く設定し、会場に行くまでの交通費や宿泊費を差し引けば、トータルではマイナスになっているとのこと。それでもお布施みたいなものだし、お金は求めていないので構わないというご意見でした。

しかしこれって本当にお寺や社会に取って良いことなのかと考えたので、ほーりーの意見をまとめてみました。

講演料を赤字にするスター僧侶がお寺の首を真綿で絞める

その方がなるべく相手に負担のかからない金額で、多くの方に仏教を伝えたい気持ちは純粋なものだと思います。

そしてそれをほーりーが、とやかく言えるわけでもありません。

なのですがそれでもあえて感じたことは、それが本当に(大きな視点で見た時に)仏教を伝える役に立つのかと言うことです。

ほーりーがこの事例にもやっとする理由は3つ(+1)あります。

お寺のパイが小さくなる

まず第一に思うことは、その方はとてもレベルが高い(話の内容はもちろん、知名度などのブランド力も含めて)と言うことです。

レベルの高い方が安値で仕事を受けると、それよりレベルの低い人はもっと安値でしか仕事を受けられなくなります。そして全体として参入できるパイが減ります。

これは動物園と水族館の違いでもあります。日本最大規模を誇る上野動物園が600円で入れるため、他の動物園はこの金額以上に入園料を設定できません(してもお客さんが入りません)。

以前にほーりーが調べた時、東京の動物園入園料は

東京都恩賜上野動物園    600円
多摩動物公園        600円
井の頭自然文化園      400円
江戸川区自然動物園     無料
板橋区立こども動物園    無料
町田リス園         400円
羽村市動物公園       300円
篠崎ポニーランド      無料

でした。

このような状況のため、補助金の入らない私営の動物園は作ることができません。富士サファリパークは2700円ですが、こんな形で差別化できるのは例外と言ってよいでしょう。

一方、水族館は圧倒的な価格破壊者がいないため、入館料が高くても成り立つし、動物園より健全に経営できています。同じく東京の水族館入館料を並べると

サンシャイン水族館    2000円
葛西臨海水族園       700円
しながわ水族館      1350円
東京タワー水族館     1080円
エプソンアクアパーク品川 2200円
すみだ水族館       2000円

と、なります。ちなみに唯一1000円以下の葛西臨海水族園は、東京都が出資して指定管理している公営施設です。

そして子どもの数が減っている中、動物園が水族館よりも構造的に疲労してきたのは示唆的です。これをお寺に当てはめると、檀家さんの多い(他で収入の見込める)お寺のお坊さん以外は、講演活動に勤しめなくなることを意味します。

ほーりーはお寺に所属しない、フリーで動きながら説法だけで生計が成り立つお坊さんがいたら、面白そうと考えています。

冒頭で述べたお坊さんも、実家のお寺は檀家さんが多くて盤石と言っても良い状況です。こうした方が赤字で講演を受け続けることは、トータルで考えれば仏教を伝える場を減らすことにもなるのではないでしょうか。

安値を当然と思われると、仏教のイメージが不当に下がる

トップレベルのお坊さんの講演が、ものすごく安売りされる。この時に起きることは、仏教なんてこんなものだという世間のマインドです。

良い悪いは別として、世の中で最も万人(≒仏教に馴染みのない人)に分かりやすく、客観的な価値を示せる尺度はお金です。

これはジョークでも問題提起でもなく、講演料(は、公開されないことの方が多いので、一人一人が支払う聴講料でも構いませんが)は、世間から受ける評価を左右します。

宿坊もまったく同じ状況でした。1万円前後を抜け出す宿坊はこれまでなかったため、ほーりーはこれまで何度も「お寺に泊まって風邪ひきませんか?」「お坊さんに怒られたりするんですか?」「幽霊は出ませんか?」と言った質問を受けました。

しかし去年になって1泊10万円を超える宿坊が出てきたり、高野山でも一部の宿坊が数万円クラスに値上げするなどして、お寺に対してハイクラスな印象が生まれ始めています(そしてそれは低価格な宿坊のイメージも良くしています)。

ほーりーの予言的中。一泊10万円を超える宿坊が京都に誕生!

金額が高いからありがたがられるというのは、法話する側からすれば不愉快な話でしょう。ですが自分の詳しくない分野で全てを正しく評価しろなんて、それは世間に対して酷な話です。

本人の講演レベルが頭打ちになる

ほーりーのもとには、無料、あるいはお小遣い程度の金額で講演やイベント登壇してほしいという依頼がよく来ます。なので講演料を10万円(+交通費・宿泊料)に設定してブログで公開することにしました。

ほーりーへのお仕事依頼価格表、2018年版に更新しました

これによって講演依頼は激減しましたが、声をかけられなくなるのは精神が地味にえぐられます。人間の悲しい性なのか、受けるつもりのない無料依頼でもパタッと途絶えると、自分の価値が無くなったような気になるのです。

さらに言えば金額を上げると多くの方から嫌われますし、依頼を受ける時にも相手からの期待値が上がります。低額であれば話すだけで(主催者側から)感謝されたものが、価格を上げると内容まで厳しく突き詰められます。

するとお金にさえ困ってなければ、わざわざ苦しい思いをしてまで自分を厳しいところに追い詰めようとは考えにくくなります。100回呼ばれた方が楽しいし、俺すげぇと満足感も高いし、嫌な想いもしないで済むしで良いことづくめです。

ですがほーりーの考えでは無料講演を100回行うより高額の講演依頼を1回受けるための工夫を続ける方が、自分のレベルは上がります。価格を上げようとすれば、超えなければいけないハードルが一気に増えるためです。

スター僧侶の方にこんなことを言うのも恐縮ですが、そのままでは成長が頭打ちになりますよとほーりーは思います。

講演準備にお金をかけられない

これは蛇足というか、本人の話す内容や講演の作り方にもよるので、一概に全てに当てはまる話ではありませんが。

ほーりーの場合は講演料を10万円に設定しても、準備や取材でそれ以上のコストをかけることがあります。

例えば直近で言えば、来月に行う神職研修会での講演は、取材費だけで10万円を超えます。偉そうなこと言ってますが、ほーりーも赤字なわけです。

が、これは可能な限り最高のものを作ろうという先行投資です。一回では赤字でも、何度か繰り返せば黒字になる額には講演料を設定しています。他にも執筆や企画作りに生かすなどして、無理やりにでも元は取るつもりです。

黒字化を目指すことは、お金や時間をかけて質を高めることができるという意味でも大切です。

ということで、、、

フリーミアム(フリー+プレミアムの造語)という言葉があります。入り口は無料化することで実績を作ったり、バックグラウンドで用意した高価格の商品を買って頂く戦略です。こうした狙いがあるのなら、今は赤字と言えども納得できます。

しかし個人活動は赤字だけれど、所属しているお寺の収入があるからいいやという考えは、現在地方を疲弊させまくっている補助金ありき(稼ぐことは度外視)の地域活性策と何が違うのでしょうか?

赤字でいいやと価値を投げ売りすることは、お寺にとっても、一般の人に対しても、そして本人にとっても害の大きな方針です。

それをお布施や奉仕、お金には無欲などといった志に言葉を変えても、ほーりー的には近眼的な自己満足にしか映りません。

物事には適正価格というものがあります。何もむやみに価格を上げろと言うつもりはありませんし、理由がある場合に割り引いたり無料で行うことは悪いことではないでしょう。

しかし講演料において自分のギリギリに踏み込む姿勢は、個人主義的でありながらも大きな社会貢献です。

もともと檀家さんが大勢いるお寺以外が次世代に残る道を模索しているほーりーとしては、実力あるお坊さんは茨の道を歩んでも、時代を切り開く道を開拓してほしいと願っています。

50万円で講演を受けるお坊さんが1人いれば、10万円で講演を受けられるお坊さんが100人誕生します。その高価格帯を作ることは、スター僧侶にしかできない大きな仏教布教です。

自分の懐にお金を留めることが本意でないなら、頂いたお金を改めて困っている人に寄付すればいいわけですしね。

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