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自粛で自死自殺が約20%減ったのは、社会全体が不幸になったから

河川敷

 最近、自死自殺関連の取材を続けたためか、4月の自殺者数が大幅に減った話をよく耳にします。TBSのニュースでも、以下のように報じられていました。

厚労省などによりますと、先月の全国の自殺者数は前の年の同じ月に比べ359人少ない1455人で、19.8%減ったことがわかりました。少なくとも最近5年間では最も大きな減少幅だということです。

 ちょっと、ほっとするニュースです。しかしこれを持って、「あれ? 自粛して不況に陥っても、死ぬ人が増えるなんて間違いじゃね?」と安心するのは、めちゃくちゃ危険だとほーりーは考えています。

 そこで今回は、この自死自殺が約20%減ったメカニズムを考察してみました。

ほーりーが前提として、危惧していること

 まず、これまで何度か述べてきましたが、ほーりーはコロナ不況で自死自殺が(コロナ肺炎死などよりはるかに)増えることを危惧しています。

 これから自死自殺者が3万人に戻るので、お坊さんにお願いしたいこと

 この内容をまとめると、以下の通りです。

 ○バブル崩壊(1991~1993)後、しばらくは社会にまだ余裕があった
 ○しかし5年後の1998年、企業の倒産が相次ぎ自死自殺者が激増して3万人を超えた
 ○今回のコロナウイルスによる不況は、この現象の再現になる可能性がある

 このため、先日、自死自殺問題に取り組むお坊さん組織に取材も行ってきました。

 自死自殺の相談2団体に取材して伺った、僧侶組織だからできること

 今回は上記記事では書ききれなかった話でもありますが、自死自殺が約20%減った原因が垣間見れる話も伺っていたので、以下にまとめます。

自死自殺が減ったのは、社会全体が不幸になったため

 取材をさせて頂いた『京都自死・自殺相談センター Sotto』の金子宗孝さん、『自死・自殺に向き合う僧侶の会』の増田俊康さん共に、一つ象徴的な話をされていました。

 それはこれまで家に閉じこもっていたり、死ぬしかないと追い込まれていた人が、現在のコロナ禍によって精神的に少し落ち着いてきているということです。

 これは何故か。それは一言で表すなら、社会全体が不幸になり、相対的に自分だけが不幸と感じにくくなったためです。

 人間は幸不幸を周りと比べて評価する生き物です。例えば、『命の格差は止められるか ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業』という本に、これを説明する話が載っていました。

 命の格差は止められるか: ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業 (小学館101新書)

 イチロー カワチ 著

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 それは次の2つの国(それぞれ生活費や物価は同じとする)の、どちらに住みたいかというものです。

 ○自分の年収が500万円で、自分以外の年収が250万円の国
 ○自分の年収が1000万円で、自分以外の年収が2500万円の国

 授業でこの質問をすると、答えはだいたい半分ずつに分かれるそうです。しかしどちらが健康で毎日ハッピーに暮らせるかと聞くと、3対1くらいで前者になります。

 生活費や物価は同じなので、自分の年収が多ければその分だけ多くのものが買えます。しかし周りがそれ以上にお金を持っていれば、幸せとは感じにくくなってしまうわけです。

 それを現在に当てはめると、例えば自分が数年前から失職し、再就職もできずにずっと引きこもっていた場面を想像してみてください。周りからそろそろ働かないのとプレッシャーをかけられ、平日昼間に外に出ると他人の視線すら恐怖を覚える。そして息をひそめたまま部屋の中で過ごすというのは、よくある話です。

 そんな状態が何年も続いていた時、社会全体が「ステイホーム」と外出さえはばかられるようになったら、自分だけが家に閉じこもっているわけじゃないと安心します。コロナ倒産が続出し、仕事を失った人が増えれば精神的な救いにさえなるでしょう。

 現在の自死自殺者が減った状況は、このような心理を表しています。コロナ問題よりもはるかに前から死ぬかどうかで悩んでいた人が、死なずに済んでいるための事象なわけです。

自死自殺は数年かけて進行する

 2013年の調査ですが、NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」によると、自殺された方はその原因となる出来事から平均して7年5カ月経ってから亡くなられています。

 これを報じた日経新聞の記事によると

自殺までの平均期間を職業別にみると「自ら起業した自営業者」と「学生」が最も短く4年で、「正社員と公務員」の6年3カ月、「事業継承した自営業者」の7年が続いた。

 と、なっています。

 先日書いた記事ではバブルが崩壊(1991~1993)してから5年後に、自死自殺者が前年比1.3倍以上(24391人→32863人)に跳ね上がりました。

 自殺は一つの原因で起こるわけではありません。例えば失業が家族などとの関係崩壊につながり、アルコール中毒に陥った末に手首を切るなど、問題が雪だるま式に膨れていきます。

 その意味で言えば、現在のコロナ禍による不況が自死自殺の理由になる人も、現時点ではまだそこまで達していないわけです。

ということで、、、

 不況による経済死は数年遅れでやってきます。そして今回の話で言えば、その時には社会の支援リソースも足りなくなり、現在の状況によって一時的に自死自殺を思いとどまった方も、まとめて亡くなってしまう可能性があります、

 だからこそ、自死自殺が減っているなんて無邪気に喜んでいないで、雪だるまが膨れない今のうちから対策を練る必要性があります。

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