3巻以内で完結する名作お寺漫画3選
お寺や仏教、お坊さんがテーマの漫画だけを集めたお寺の漫画図書館。オープンして、半年以上が過ぎました。そんなわけでプロデュースした私としても、だいぶお寺漫画の研究が進んできましたよ。
この分野の定番と言えば、ブッダ、聖☆おにいさん、孔雀王あたりでしょうか。ただ、これらは長編(そして後ろ二つは今も連載中)なので、じっくり時間をかけないと読めない作品です。
そこで今回は3巻以内で完結する、ほーりー的にこれは名作と思った漫画を紹介します。
3巻以内で完結する、名作お寺漫画3選
空也上人がいた
空也上人がいた 新井英樹 著 ・ 山田太一 原著 |
1巻完結。山田太一の同名小説が原作の、介護福祉の現場を舞台にした漫画です。
81歳の車椅子の要介護者、46歳のケアマネージャー、27歳の介護士と、世代が異なる3人が主人公。原作の山田太一先生が80歳ということもありますが、人生最晩年の欲望が赤裸々に描かれています。
作中の言葉を使えば「なけなしの性欲」ですが、読んでいるだけで人生の予行演習した気分になれます。年の近い世代が描いた恋愛ストーリーとは異なり、共感できないのに納得感がある。30代の私が80歳も100歳もひとくくりで見ているように、80歳になったら20代も40代も同じように見てしまうのかもしれない。そんな年齢による視点を浮き彫りにしてくれました。
そしてタイトル通り、京都・六波羅蜜寺の空也上人像が、重要な鍵として登場するのも見どころです。遺体の捨て場所となっていた六道の辻で、死者を焼きながら誰もが極楽へと行けるように唱えた念仏が、阿弥陀如来となって姿を現した名シーン。離れた世代から受けとるバトンの象徴のようになっています。
アルキヘンロズカン
アルキヘンロズカン しまたけひと 著 |
上下巻で完結。四国八十八カ所の霊場を歩く、お遍路さんに焦点を当てた漫画です。
主人公は売れない漫画家。人生に行き詰まり、お遍路しながら漫画家を続けるか辞めるかを、延々と考えています。そしてもう一人の主人公。会社を辞めて引きこもっていた元OLも、結願目指して四国を歩き続けます。
この漫画は誰にでもある弱い心をえぐります。一番心に残ったのはお遍路の途中、嫌味なおじさんに絡まれて「自分の事なのに探さなきゃ分かんないもんなの?」と問われ、「てめぇに都合の良い自分ばっかり見つかるわけじゃないから」と返すシーン。優しさにふれて罪悪感を感じたり、不運にさらされ我が身や周りを呪ったり、犯罪に巻き込まれたり、お寺の住職に人生を諭されたり。
「歩き遍路図鑑」のタイトル通り、深い目的があって歩く人や楽しむために歩く人、職業遍路と呼ばれる遍路の格好をして物乞いじみた真似をするおじさん。いろんな人が入り乱れ、旅の中で弱さと向き合っていきます。
漫画家と元OLは直接にはあまり顔を合わせませんが、旅の中で出会う人は共通しています。この構成が見事で、テーマとも言える「ご縁」が浮かんできました。素直にお遍路に出かけてみたくなる漫画です。
まんまんちゃん、あん。
まんまんちゃん、あん。 サトウナンキ・きづきあきら 著 |
3巻完結。タイトルとロリ巨乳なヒロインの絵から、私は読むまで完全にラブコメ萌え漫画だと思っていました。が、違った。
舞台はお寺。ちょっとだけネタバレさせると、第一話で主人公・めぐりは跡継ぎ予定だったお坊さんと結婚し、すぐに未亡人になります。
この物語。お寺の御家騒動がストーリーの基軸です。しかし明確な悪人が誰もいないので、その分ピュアで悲しさが漂います。特にめぐりの痛々しさが半端じゃな~い。
元気を絵に描いたような娘で、檀家さんの行事参加率が上がったと言われるくらいにお寺に溶け込んでいきますが、結婚相手がいなくなったことで複雑な立場に置かれます。そして自分の心は止まっているのに、どんどん動く状況にさらされる怖さが、ページを追うごとに膨らんでいきます。
しかも仏教の根幹となるようなすべてのものは変わっていくという思想が、ストーリー全体には編み込まれています。読後感もさわやかで完成度高く、文句なしの名作ですよ。オススメのお寺漫画を聞かれた時に、タイトルを言いにくいところ以外は。
ということで、、、
お寺の漫画図書館は、はっきり言って微妙な作品もたくさんあります。それは外れのない定番を並べるのではなく、お寺・仏教・お坊さんというテーマでセレクトしているからです。
特に短編はぶっちゃけて言えば、人気なくて打ち切られた漫画もあれこれありますし。なので短くて面白い漫画を、しばらくは丁寧に発掘していくことが重要かなと考えています。
このほかにも面白い漫画はたくさんあったので、少しずつ紹介していきま~す。