ほーりーと多聞院さんがお寺の漫画図書館を作った理由
前々回、前回と東京・多聞院というお寺に漫画図書館を作った様子を紹介しました。そこでここではちょっと真面目な話として、この漫画図書館を作った理由を語ってみたいと思います。
そもそもこの漫画図書館を作ったきっかけは、観智院&多聞院の土屋住職から、「多聞院というお寺が空き寺になっているので、何か良い活用法はないか」とご相談を頂いたことです。
そして土屋住職は東京や京都で行われている24時間不断念仏会を企画するなど、さまざまな形で一般の人がお念仏(南無阿弥陀仏)に親しむ場作りに取り組まれている方です。しかし座禅や写経と比べると、念仏行は今ひとつまだ知名度がありません。
実際に寺社コンでも座禅コンや写経コンより、念仏行コンの方が引きが弱い傾向にありますし。そこでまずはお寺に人が出入りする環境を作り、そこからお念仏にもふれてもらおうという二段階方針を取ることになりました。
そんなわけでこの『お寺の漫画図書館』の狙いは、誰もが気軽に仏教に親しめるコミュニティスペースを作ることです。私自身、子供の頃にサッカーを始めたのは「キャプテン翼」が影響してますし、大学時代に旅行サークルに入ったのは「究極超人あ~る」を読んだからです。
私の知り合いでも漫画を読んでお坊さんの道に進んだ方がいますし、漫画ってめちゃくちゃ侮れないなと常日頃から考えていました(いや、単に私が大好きなだけということもありますが)。
そして図書館コミュニティにも私は可能性を感じています。これは実際に”スルガ銀行d-laboさん”や”旅の図書館さん”で講演をさせて頂いた経験から、本のある場所には好奇心の強い人が集まるという直感がありました。
満員御礼! トークライブ『宿坊でできる7つの修行』を行ってきました。
このふたつの図書館コミュニティに共通するのは、本をしっかりディレクション(選書)していることです。スルガ銀行d-laboさんは「お金や人生設計」、旅の図書館さんは「旅行」に特化しています。
さらに漫画図書館を作った多聞院さんは、江戸時代には増上寺で仏教を学ぶ僧侶たちの寄宿舎であり、その後も常に学びと関係の深いお寺でした。そして浄土宗は法然上人が仏教を学ぶことのできない権力も財力もない人たちに、「南無阿弥陀仏」だけ称えれば救われるよと説いた、入りやすさを大切にされた(と、私が思っている)教えです。
ついでに軽く1000は超えるお寺を訪れ、日本で一番お寺のウェブサイトを見ているであろう私の脳内データベースにも、漫画に特化したお寺の図書館は聞いたことがありません。絶対にないとは言いませんが、大々的にやっているところはほぼ間違いなくないはずです。
そんなあれこれを混ぜ合わせた結果、お寺や仏教、お坊さんをテーマにした漫画を集めた図書館にしたら、きっとお寺の世界に親しみやすい場所ができると考えました。
まとめると、
○漫画ってすげー
○図書館ってすげー
○多聞院は学びのお寺
○漫画に特化したお寺図書館は多分全国初
ちなみに下記は私がお坊さん達の講習会でお話をさせて頂く時に使う図ですが、仏教を伝えたいのであれば、まずは相手が持っている文化にあるものだけで表現する必要があります。
まだまだ念仏行が一般的ではない現状、前振りもなくお念仏を称えましょうと言っても、「え? お葬式じゃないのに」となるわけです。ですがここに漫画というクッションが挟まれるだけで、お念仏や仏教への興味はぐぐっと増します。
これなんて、タイトルだけで刺さりますし。
病室で念仏を唱えないでください こやす 珠世 著 |
そしてまた、今回は尼僧でありプロの漫画家でもある悟東あすかさんにもプロジェクトに参画頂きました。仏教と漫画を結んだ力強い先駆者であり、「漫画は人の心が分からなければ描けないもの」「漫画を人に教える上でも仏教はものすごく力になった」など、その両視点からも多くの提言を頂いています(ちなみにお寺の漫画図書館のキャラクターも描いて頂きました)。
悟東あすかさんが描かれた、仏像解説漫画の本もリンク貼っておきます。
本当の僧侶が描かれた通り一辺倒ではない仏像解説『幸せを呼ぶ仏像めぐり』
ということで、いろんな想いを含みながらもいよいよスタートした『お寺の漫画図書館』。正直言ってこれからどのようになっていくかは未知数です。
私もスペシャルアドバイザー(というか、そそのかした張本人)として活動していますので、多聞院の皆様と力を合わせ、オンリーワンの魅力あるお寺にしていけたらと考えています。よろしければぜひぜひ、一度足を運んでみてくださいね。
漫画も現在100冊強ですが、少しずつ増えていく予定でーす。