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絵の描けない人が漫画でメッセージを伝える3つの手法

 ここ3ヶ月ほど月刊住職の連載で、漫画をテーマに記事を書いていました。1回目は「鬼滅の刃とお寺の関係」、2回目は「お寺に関する漫画紹介」そして3回目が「絵の描けない人が漫画でメッセージを伝える手法」です。漫画はやはり好きな方が多いのか、いつもよりほーりーの元に届いた反響も大きかったです(結構、いろいろな方から面白かったと言われました)。

 そして最後の「絵の描けない人が漫画でメッセージを伝える手法」ですが、ほーりーはそもそも絵心がありません。これはもう絶望的に絵が描けないのですが、そんな人間でも漫画で何かを表現することは可能かどうかは、ずっと考えていました。

 はるか昔、小説で賞を取ったことはあるのですが、漫画でも何かやってみたいなーと。ということで今回はせっかくなので、その方法をこのブログでも補足を交えて紹介します。

絵を描けない人が漫画でメッセージを伝える3つの手法

本棚の編集

お寺の漫画図書館

 まず一つ目に紹介するのは、本棚の編集です。この言葉に私が最初にふれたのは、ブックディレクターとして活躍している幅允孝(はばよしたか)氏の仕事を記した、『本の声を聴け(高瀬毅著)』という書籍を読んだ時でした。

 本棚の編集とは、ある意図を持って本を並べ、本棚全体を通して見る者にメッセージや世界観を感じさせる手法です。これは一冊一冊の本を手に取ることなく、それぞれの背表紙が視界の隅に入るだけでも成り立ちます。

 そんなわけでこの概念を取り入れて、私がプロデュースしたのが『お寺の漫画図書館』です。東京にある多聞院にはお寺や仏教、お坊さんがテーマの漫画が300冊以上置いてありますが、開設当初はお寺と漫画を組み合わせたギャップに注目が集まりました(今も時々、メディアの方が取材に来られたりします)。

 また、ここまで本をそろえなくても、お寺の本棚にちょっと漫画を添えるだけで、見る側の印象は変わります。

 分厚くて難しそうな仏教書は威厳や信頼感の創出という面もありますが、それだけだと近寄りがたい印象も持たれます。なのでそこに少しだけでも漫画を置くと、親しみやすさが一気に増します。

 実際にお寺の漫画図書館ができて以降、似たような図書館や図書室、あるいはちょっとした本棚を作りたいという連絡は幾つかのお寺から受けました。書籍リストをお伝えしたこともありますし、漫画談義に発展したこともあります。

 そして私の知り合いのある住職も、本堂の片隅に漫画を置くようになったら、お参りに来られた方と仏教の話で盛り上がることが増えたと仰られていました。

 漫画好きなお坊さんは多いですし、お気に入りの作品がある方もきっといるでしょう。そうした漫画と仏教をつなげて語ることができれば、それはそのまま教えを伝える機会になります。
 

プロの漫画家やクリエイターに依頼

 インターネット上には、漫画作りを引き受けてくれるクリエイターさんが多くいます。

 私の知り合いでは、宮城県・松岩寺の小黒澤和常副住職が、お寺の開山から興隆、東日本大震災当時の状況、そして現在までをまとめた『マンガ遠浦山松岩寺の歴史』という冊子を発行されていました。

松岩寺の小黒澤和常副住職

 こちらはインターネットで発注できるサービスを利用して、漫画家さんを探すところから始めたそうです。そして応募してきた漫画家さんにお寺の写真を資料としてお送りし、ページごとのストーリーをお伝えします。さらに作られた原稿案を見て修正箇所をチェックし、ペンを入れて完成です。

 好みの作風だった方に出会えたこともありますが、全工程を通してそれほど苦労する場面はなかったそうです。そして依頼をしてから4カ月。作画自体は2~3週間ほどで漫画はできあがります。実際に完成した作品は檀家さんにも好評で、新たにご縁ができた方への説明資料としても役立っていると仰られていました。

 またちょっと難易度が高いですが、千葉県・能蔵院の守祐順住職はご自身で企画して出版社と共に漫画家を探し、五代将軍徳川綱吉の生母・桂昌院を主人公にした『めでたく候(藤村真理著)』という漫画を制作しています。

 そのインタビューは以下の記事にまとめていますので、ご参照ください。

 能蔵院・守祐順住職が仕掛けた漫画『めでたく候』が面白い!

 桂昌院は仏教を篤く信仰して応仁の乱で焼けた京都のお寺を再建・再興し、東京にある護国寺の建立にも尽力した人物です。物語は少女マンガらしく恋愛に重きを置いてありますが、時代考証や作法などはお坊さんが監修しており本格派です。

 私の知り合いのある漫画家さんは、お寺のことを書きたくても取材の伝手を得ることはプロでも難しいと仰っていました。しかし漫画は絵にしないといけない分、参考になる資料がないと描くことさえできません。

 ここ最近、お寺漫画に限らず様々な分野の作品に専門家が原作や監修などで関わっています。それだけ漫画全体のレベルが上がって、求められる専門知識が増えてきたということでもありますが、お坊さんと漫画家さんが手を組むことも、これからの作品作りに原動力となるでしょう。

漫画製作ソフトの活用

本光寺の四コマ漫画

 最近、ほーりーが取り入れているものに、『コミPo!』という漫画製作ソフトがあります。

 これは様々なキャラクターと背景画、漫符(まんぷ)と呼ばれる表現記号(不安な時に現れる汗や怒った時に浮き出る血管マークなど)、吹き出しや集中線などがセットになった素材集です。

 キャラクターは顔や髪形、表情、服装、シーンに合わせたポーズが用意されているため、それらを選んで配置していくだけで手軽に漫画が作れます。

 最初に述べた通り、ほーりーには絵心がありません。ですがこちらを使うと自分でも四コマ漫画を作ることができます。

由宇と菊乃の寺社巡り

 上記ソフトは萌えキャラが中心ですが、他にもいくつか類似ソフトはあるようですので、好みの絵柄があればそちらを利用するのも良いと思います。そしてウェブサイトや寺報、パンフレットには、すぐにでも活用することが可能です。

 実際にほーりーが企画作りでご一緒している千葉県・本光寺さんは、お寺のお参り作法や寺務所の案内にこの漫画を導入されました(ほーりーが制作請負しました)。

 文字だけだと固くなったりきつく取られてしまいがちな注意書きも、漫画であれば楽しく柔らかく伝えることができますよ。

ということで、、、

 自分で作ってみると感じますが、漫画はブログ記事と比べて使える文字数に制限があります。

 なので何が言いたいのか、伝えたいのかを、思いっきり絞らなければいけません。それは漫画以外で物を伝える時にも、とても役に立ちます。

 今回紹介したお寺やお坊さんのインタビューは、月刊住職の記事で紹介しましたが、それぞれ自分が伝えたいことと、読む方が楽しめることのバランスを、とても大事にされていました。

 漫画の発信力はコロナによる巣ごもり需要を経て、さらに高まっています。絵が描けないから漫画なんてと思わず、いろいろ試してみることでお寺のメッセージ性もさらに高まっていきますよ。

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本光寺の四コマ漫画

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