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地元を守るために「乗らなくてもよい鉄道」になったいすみ鉄道からお寺が学べること



 ローカル線で地域を元気にする方法: いすみ鉄道公募社長の昭和流ビジネス論

 鳥塚亮 著

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廃止寸前の赤字ローカル線『いすみ鉄道』に公募でやってきた社長・鳥塚亮さんの書かれた『ローカル線で地域を元気にする方法』が面白過ぎたので紹介です。

いすみ鉄道は千葉県の上総中野~大原間を走るローカル線で、赤字続きで地元のお荷物とされていた鉄道会社。この路線を何とか存続させることはできないかと社長が公募され、就任したのが著者の鳥塚亮さんです。

「いすみ鉄道は乗らなくてもよい鉄道です」と、鉄道の存在意義をひっくり返すような言葉で新たな需要を開拓。元外資系航空会社で働き、根っからの鉄道ファンとして様々な活動を行っていたからこその斬新なアイディアで、いすみ鉄道の息を吹き返させた数々のエピソードが紹介されていました。

そして何よりも面白かったのは、この鳥塚社長の考え方。この本は脳みそに衝撃ががんがん走るほど心に響く言葉が満載です。特に強く残ったのは以下の一文でした。

私はまじめな人間ではないので、ローカル線を交通機関として正面から捉えていない。

いすみ鉄道の沿線は車社会のため、高校生や高齢者といった交通弱者以外の住民はあまり利用しません。しかし廃止にしようかという議論になると、廃止反対となります。

「乗らないけれど残ってほしい」それを田舎のエゴだというのは簡単ですが、言うなれば故郷を思う郷土愛だと鳥塚さんは指摘します。で、あれば、いすみ鉄道を交通機関(地元の足)として議論するのではなく、鉄道が走る故郷の風景を守ることに取り組もう。それが「交通機関として正面から捉えていない」という言葉の意味でした。

ゆるい。しかし、理に適っている! このスタンスが過去40年以上にわたって解決しなかったままのローカル線問題に一石を投じます。そして言葉の通りいすみ鉄道は、移動するための交通機関から外部の人がわざわざ乗りにくる観光鉄道として生まれ変わります。そしてその結果、車を使えない一部の方の足としても守られていくのです。

鳥塚さんは本書の冒頭で語ります。

新幹線と首都圏を含む一部の幹線だけが必要で、末端の枝線はすべて不要である、とばかりに切り捨ててしまっては、この国は良くなるどころか、反対に廃れてしまうと思うのです。

今生きている人間の役目として、先代から受け継いだものを大切に管理運営して次の世代へ引き継ぐ使命があると思っています。

これらは地方で疲弊が激しいお寺に照らし合わせて考えても、まったく同じことが言えそうです。

せっかく良いものが残されているのに本来の用途だけに固執していると、これからの人口減少時代にはその用途も果たせなくなる。しかし新たな需要を掘り起こして活用できれば、本来用途も守ることができる。私が地方のお寺は宿坊を始めたら良いと考える理由もここにあります。

鳥塚さんの言葉は続きます。

線路をはがしてしまってはおしまいです。とにかく走り続けていることが、大事なのです。

以前出かけてきた岡山のある町では、10あるお寺のうち3つが使われなくなっていました。切り捨てずに新しい使い方を生み出していく。廃寺寸前だった秩父の山奥にある大陽寺が、宿坊を開いて多くの方が手を合わせる祈りの場になったことは好例ですが、こうした組み合わせで守ることも大切なことだと感じています。

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