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プロの寺社旅研究家を目指す人に、ご祈祷をお勧めする7つの理由

先日、また寺社旅研究家になりたいという相談を頂きました。この職業、自分の得意分野をどこに持つかは大きなテーマです。

前に『プロの寺社旅研究家を目指すなら、仏像だけは手を出さない方がいい』という記事を書きましたが、それでは何がおすすめなのか? もしも私が実績ゼロで今からプロを目指すなら、「ご祈祷」を研究します。

ご祈祷、お坊さんや神主さんに、祈願を読み上げて頂く正式参拝ですね。これはすごい穴だと思っているんですよ。そこでなぜご祈祷が狙い目なのか、人気テーマの「仏像」「御朱印」と比較しながら、その理由をまとめてみました。

プロの寺社旅研究家を目指す人に、ご祈祷をお勧めする7つの理由

金額(お布施や初穂料)が絶妙

清龍寺不動院の護摩祈祷

ご祈祷は寺社や内容によって異なりますが、一般的に3000円から10000円くらいします。例えば一回5000円として100の寺社でご祈祷を受けると50万円です。これはけっして安い金額ではありませんが、本気でプロを目指すなら出せない額ではありません。

そしてここが重要ですが、このくらい高いと本気でない方は間違っても手は出しません。御朱印のように何となく詳しくなって専門家になっちゃったという方は、現れにくい分野なのです。

私が宿坊研究を始めてから17年経っても、追随者が現れないのは同じ理由です。宿坊に100軒泊まるのはご祈祷よりさらにコストが高いですし、仏像や御朱印巡りのようなライトな感覚では回れません。

なので「ご祈祷」もうまく自分をブランド化できれば、独り勝ちしやすいテーマです。

ご祈祷研究家は、寺社にとって価値が高い

御朱印が評判となり多くの参拝者が来るようになった寺社はありますが、御朱印だけで経済的に成り立つ寺社は私は聞いたことがありません。また仏像は一体だけでお堂が建つ例もありますが、これはそのような仏像を持つか持たざるかの世界です(そしてそんな仏像のある寺社は、全体の0.1%もありません)。

しかしご祈祷は、収入の柱にしている寺社も多いです。なので一般の人がご祈祷を受ける際にどこに不安を感じているか、興味を持つポイントは何か、どのように誘導すればご祈祷を受けたくなるかという情報は、寺社にとっても高い価値を持ちます。

これはつまりご祈祷の専門家には、高額の仕事が舞い込む余地が多いということです。私も一回の講演で、10万円以上は頂いていますしね。ご祈祷の作法や内容自体に口を出すことはなくても、ご祈祷を一般目線で語れる人には、大きな価値が生まれます。

ご祈祷は楽しい&深い!

ご祈祷が行われている寺社は、日本各地に数えきれないほどあります。そして宗派による違いや地域性がありますし、一つ一つの作法も意味があって見どころ満載です。

例えば下の写真は、神奈川の大山寺で行われた五壇護摩。本堂に五つの護摩壇を並べる、全国でもかなり珍しい形式です。狭いお堂の中なので5つの火柱を同時に写すのは難しかったですが、それでも迫力は伝わるでしょう。

大山寺の五壇護摩

私は研究テーマを選ぶときは、自分が楽しめるものであること、知れば知るほど知りたいことが増える深みがあることは必須と考えています。ご祈祷はこの2要因を満たすんですね。

ご祈祷だけで、そんなに研究できるの? と、思われる方。私なんて宿坊研究をこれだけ続けても、分からないことだらけですよ。疑問は底なし沼状態です。なので一度はまればご祈祷だけでも、一生かけて研究することは可能ですよ。

ご祈祷の情報はほとんどない

ご祈祷情報は寺社の公式サイトを見ても、ほとんど詳しく書かれていません。

そこそこ丁寧かなーと思われる成田山新勝寺のサイトでもこのくらいです。

こちらは参列だけなら無料ですし、それでも「御火加持」でバッグや財布を御護摩の火にあてて頂けます。さらに護摩祈祷が終わった後は、お手綱参拝というものもあります。これは須弥壇に上がり、ご本尊と結ばれているお手綱に触れてご縁を頂くというものです。ご祈祷が終わったかなと思ってささっと帰ってしまうと見逃してしまいます。

なんてことも、お参りする側としては事前に知っておきたいのです。こうしたことって一連の流れを知らない人間が先入観なしに体験しないと、お寺の人は当たり前と思って見過ごしてしまうんですよね。そこにできる情報ギャップはバカにできません。

さらにご祈祷を横断的に比べた情報なんて、ますます皆無です。ですが違いが分かると、人は興味を持ち始めます。1つの情報では単なる広告としか認識されませんが、100の情報が集まると人が動き出すのです。

参照:独創性のない名産品をオンリーワンにして、地域起こしをする逆説的な方法

私が宿坊研究を始めた17年前なんて、高野山の宿坊組合にそれぞれの宿坊の違いを聞いても「どこも一緒ですよ」という答えが返ってきました。ですが高野山の宿坊って、ひとつひとつものすごい個性があるんですよね。今では高野山の宿坊だけで一冊の本が出ているほどです。



 高野山 宿坊の旅

 エイムック

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お坊さんや神主さんは自分が行うご祈祷はもちろん専門家ですが、他の宗派、他の宗教のご祈祷はあまり知識がありません。密教の複雑な印を組めるお坊さんも、神社で玉串を捧げる作法は分からなかったりします。なので僧侶・神職でない私が宿坊研究でプロになっているように、そこを切り口に伝えられれば仕事にすることは可能です。

ご祈祷研究はライバルがいないし、育ちにくい

本昌寺の祈祷

私の見る限り、各地の寺社でご祈祷をあちこちで受け、それをデータベース化して紹介している人はほとんどいません。ウェブサイトで「ご祈祷」を検索しても、出てくるのは個別の寺社ばかりです。

ライバルが生まれにくいというのは上でも少し述べましたが、理由を改めてまとめると

○一回で3000~5000円とお金がかかる
○寺社の公式サイトに、ご祈祷に関する丁寧な情報が載っていない
○ご祈祷は一般的に、あちこちで受けて回るものではないと思われている
○一回一回、そこそこ時間がかかる
○カジュアルなものではないため、敷居が高い
○写真が撮れない

などがあります。

言ってしまえば「宿坊」と「ご祈祷」は、似通った部分が多いんですね。そしてライバルが育ちにくいということは、プロになった後の持続性に影響します。

それと「写真が撮れない」については少し補足。ご祈祷中って大体写真撮影NGなことが多いです。ですが専門家になれば、特別にOKして頂けることもあります。そうした写真を持つことができると、素人とはますます差がついて地位を確立できるということです(この記事にあるそれぞれの写真も、それぞれのお寺や神社から許可を頂いて撮影したものです)。

情報が足で稼げる

私は仏前結婚式のサイトも作っていますが、結婚式の欠点(あくまで、情報をまとめる上でですよ。念のため)は自分で何度も式を挙げられないことです。このため足で情報を稼ぐことが難しいテーマです。

一方、ご祈祷はあちこちで受けることができます。やはり情報は足で稼いでこそ、価値あるものにできます。

宿坊に関して言えば、私が宿坊研究会を開いて以降、急速に泊まりにいく人が増えました。私自身も300以上のメディアから取材を受けましたし、今では宿坊もだいぶ一般的になってきています。ご祈祷がもっと気軽に抵抗なく受けられるものになれば、その仕掛け人はプロとして通じる大きな実績になるでしょう。

しかも仏像や御朱印巡りで1000の寺社をお参りした人はたくさんいますが、100の寺社でご祈祷を受けた人は希少です。単純に考えれば今ならご祈祷は、仏像や御朱印の1/10以下の労力で、専門家になることができるのです。

情報が古くなりにくい

お宿諏訪の神前祈祷

情報に賞味期限という言葉があるのなら、この期限が長いこともご祈祷の特徴です。

これは仏像や御朱印などより、芸能人とかスマホゲームとか、各種技術情報なんかと比べると分かりやすいですが、半年前の記事が何の役にも立たなくなってしまうことはザラです。というか、そうでない情報の方が現代では珍しいかもしれません。

ですが、ご祈祷は長い時間をかけてそれぞれの寺社に伝えられているので、半年後にお参りしたら全く異なる作法で行われていたなんてことはまずないでしょう。

つまり情報を積み重ねやすい特徴が、「ご祈祷」にはあります。「一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため」と、積んでは鬼に崩される情報時代の賽の河原みたいなテーマは、たくさん人員を抱えた大手ニュースメディアに任せておけば良いのです。

個人でプロを目指すなら、ひっそり地道にコツコツやっていた方が、花が開くのは早いですよ。

ということで、

私はプロの寺社旅研究家が、もっと増えてくれればと思っています。それもできれば多様なテーマで。宿坊のプロが生まれれば受けて立つしかありませんが、それ以外の寺社旅研究家は超ウェルカムです。

ご祈祷の研究家なら、宿坊とも手が組めますしね。寺社情報はまだまだ発掘されていないものばかりなので、そこに身を投じる人が増えることは業界全体の活性化にもつながります。

私も自分でやってみたいとも思ったのですが今は宿坊研究で忙しいので、今回は思いっきり情報オープンにしちゃいました。私もなんだかんだとご祈祷たくさん受けていますし、もしも本気でやってみたい方がいたらさらに詳しいお話をすることも可能です。

まあ、ご祈祷を100回も受ければご利益もたっぷり頂けますし、頑張ればきっと上手くいくでしょう。なので寺社をテーマに、いずれはプロとして活動したい方。ご祈祷を専門分野に選んでみるのはいかがでしょうか? 早い者勝ちで~す。

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大山寺の五壇護摩

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