宿坊に一番熱心なのは天台宗で、関心薄いのは浄土真宗
このところ、宿坊の様々なデータを分析をしています。その中で宿坊の多い宗派と少ない宗派はどこなのか、調査してみました。
その結果はTwitterで速報しましたが、こんな感じです。
日本の宿坊、多い宗派から順番に並べると、真言宗(100軒)、天台宗(39軒)、浄土宗(26軒)、日蓮宗(25軒)、臨済宗(16軒)、曹洞宗(10軒)、浄土真宗(8軒)、その他(10軒)です。
ちなみに神社の宿坊は162軒でした。— ほーりー(寺社旅研究家) (@holy_traveler) 2016年5月19日
グラフにもしてみました。
宿坊の多い宗派は、それぞれ特定地域にまとまった宿坊街を持っています。
例えばダントツで宿坊の数が多い真言宗。その半数は和歌山県・高野山(52軒)ですし、お遍路が回る四国霊場にも宿坊は多いです。
また、宿坊街を形成している長野県・善光寺や、山梨県・身延山も、天台宗・浄土宗・日蓮宗の順位を押し上げる要因になっています。神社の宿坊が多いのも、山形県・羽黒山、長野県・戸隠、東京都・御岳山、神奈川県・大山を合算した結果です。
結局、日本中を見渡しても全体の半数以上が、江戸時代から伝わる宿坊街に固まっています。図で見ると、こんな感じです。
宿坊街を抜かすと、どの宗派の宿坊が多いのか
現状、宿坊街の影響が強すぎるので、宿坊がどのくらい分散しているかでもう一度調査してみました。
ひとつの地域はまとめて1軒でカウントします。宿坊が52軒ある高野山は金剛峯寺として1軒、天台宗と浄土宗で半々に分かれる善光寺は、天台宗1軒、浄土宗1軒という形です。
四国霊場もまとめて1軒というのはちょっと強引ですが、ここはあえて四国のお遍路でひとくくりにしました。
その結果は、以下の通りです。
同じ地域の宿坊は1軒に丸めて計算したら、真言宗(23軒)、天台宗(14軒)、臨済宗(13軒)、曹洞宗(10軒)、浄土宗(8軒)、浄土真宗(8軒)、日蓮宗(6軒)です。高野山と四国遍路の影響を抜いても真言宗は数が多いですね。
— ほーりー(寺社旅研究家) (@holy_traveler) 2016年5月19日
真言宗は宿坊の分散度でも、トップだったということですね。天台宗も2位をキープです。
しかし浄土宗と日蓮宗は一気に順位ダウン。それぞれ善光寺と身延山を抜くと、宿坊が限られていることが読み取れます。
そして代わりに上がってきたのは、臨済宗と曹洞宗の禅宗2派でした。
全寺院数に対する宿坊の割合が多い宗派はどこか?
絶対数だけだとどの宗派が一番宿坊に熱心か分かりづらいので、今度は宗派ごとに宿坊数/お寺の数で宿坊率を求めてみました(ちなみに宿坊数は高野山52軒など、まるめない最初の数字で計算しています)。
その結果はこちら。
宿坊数/全寺院数で宗派別に計算すると、天台宗(0.88%)、真言宗(0.80%)、日蓮宗(0.36%)、浄土宗(0.32%)、臨済宗(0.28%)、曹洞宗(0.07%)、浄土真宗(0.04%)でした。寺院の数を考慮すると、天台宗が宿坊率トップで、浄土真宗が最下位なんですね。
— ほーりー(寺社旅研究家) (@holy_traveler) 2016年5月19日
ここで(堀内的には)意外なことに、天台宗が真言宗を抜いてトップに立ちました。
計算してみるまで宿坊が一番多いのは真言宗だと思っていましたが、お寺の数が多いという要素も関連していたんですね。天台宗は4400ヶ寺、真言宗は12000ヶ寺と、3倍くらい差があるので。
一方、日本で一番お寺が多い浄土真宗は、ほぼすべての結果で最下位です。
浄土真宗は日本で一番お寺が多いですが、宿坊の数は最下位です。私は東本願寺や西本願寺でお坊さんたちの前で講演させて頂いた時、浄土真宗は他宗に比べて外から人が入りにくいと話していましたが、こうした点もバカにできないなと感じます。
— ほーりー(寺社旅研究家) (@holy_traveler) 2016年5月19日
とは言え、宿坊が少ないからこそ、浄土真宗のお寺にとってはチャンスです。
実際に鳥取の光澤寺さん(浄土真宗本願寺派)なんて行くのはかなり大変なところですが、「浄土真宗の宿坊だから」と、遠方からでも宿泊に来る方はたくさんいますし。
ということで今回は、宗派別の宿坊数について考察してみました。