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木造建築の旗振り役を担えば、寺社は日本をリードできる!

先日の記事でも紹介しましたが、宿坊創生プロジェクトで大阪に建設している宿坊の建築が進んでいます。

こんな感じです。

宿坊和空建設中

もう、13年も前に私が出した本での定義ですが、こうした鉄筋造りのホテル型宿坊を私は「会館系宿坊」と呼んでいます。



 宿坊に泊まる

 宿坊研究会 著

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たいていは「○○会館」といった名前がつけられているため、私はこれを会館系宿坊と呼んでいるが、比較的新しい鉄筋造りの建物であることが多い。

この会館系の宿坊は建物が近代的で綺麗ではあるが、「お寺の雰囲気が感じられない」と敬遠する方もいる。実を言えば以前は私もその一人だったが、泊まってみると驚くほどお寺との接点があるのがわかる。

ついでに先日の記事では、旅館業法的に木造建築での宿泊施設はハードルが高いことも紹介しました。

宗教とビジネスの融合には、共通課題を探す必要がある

宿坊創生プロジェクトでは大阪での第一号を皮切りに、これからどんどん宿坊を広めていくことを予定していますが、まずはこうした鉄筋造りの宿泊施設が中心になると思います。

木造建築の技術的、法律的環境はどんどん変わってきている

とは言え私は遠くない未来において、木造建築、あるいは内装に木材をふんだんに使った形での宿坊も広がっていくだろうと予測しています。その直接のきっかけになったのは、山形県南陽市の文化会館が、世界最大の木造コンサートホールとしてギネス認定されたことです。

このニュースは日経新聞などでも報道されています。

2015年10月6日にオープンし、耐火木造の大型公共施設として話題を呼んでいた南陽市文化会館(山形県南陽市三間通430-2)が、「最大の木造コンサートホール」としてギネス世界記録に認定された。認定数値(座席数)は 1403席。2015年12月21日に記録が正式認定されたことを受け、2016年1月21日に同会館で認定証授与式が行われた。

最近では寺社の建物を建てる際、都心のみならず全国各地で鉄筋が選ばれています。これは主にコストと防災(強度や耐火性能など)両面から選択されています。しかし大ホールで1403席、小ホールで500人収容、ギャラリーやアトリエ、キッチンスタジオなども備えた音楽ホールが木造で造られたことは、建築界では大きな意味を持っています。

東京オリンピックの会場となる新国立競技場も、木材を多用する計画が示されました。ここ20年ほどの間に耐火や防腐、強度など木材の技術革新はめざましく、法律においても高さや材質の規制緩和が続いています。

こうした流れは林野庁のこのレポートが、分かりやすいです。

平成22(2010)年5月に、木造率が低く潜在的な需要が期待できる公共建築物に重点を置いて木材利用を促進する「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が成立し、同年10月に施行された。同法では、国が公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針を策定して、可能な限り木造化又は内装等の木質化を進める方向性を明確にするとともに、地方公共団体や民間事業者等に対して、国の方針に則した取組を促すこととしている。

このような動きを受けて、地方公共団体でも、多くの都道府県が同法に基づく木材利用促進に関する方針を策定するとともに、建築物の新増築時に一定量以上の木材の利用を義務付ける条例を導入する動きもみられる。

と、書かれており、その後の現状分析では

・木造建築物は耐火性能を満たすことが可能
・木造建築物の低コスト化は可能

と、紹介されています。

一方、課題としては

・木質部材の供給体制は不十分
・発注者・設計者の理解が不十分

が挙げられていました。つまり木造建築は性能よりも社会の体制面で普及が進んでいないってことですね。これは伸びしろが感じられる分野です。

下の写真は高尾山口駅ですが、ここも2015年春にリニューアルし、内外装に杉材を多く使った和の空間が出来上がっています。

高尾山口駅

うん、すげぇ。木造の風情に自動改札機がシュールでファンタスティックだ!

お寺や神社は木造建築の旗振り役を担えないか?

そして現在、宿坊に泊まる方や寺社への参拝者が最もがっかりする要素のひとつとして、建物が木で造られていないことが挙げられます。これは私自身、宿坊に泊まり始めた当初から「会館系宿坊」と呼んでいたことにも通じますし、周りからも「宿坊って木造ではないんですね」という声を耳タコで聞いてきました。

もちろん鉄筋にもメリットは多く、また市街地など規制の多いところでは現実的な選択肢も限られているので、すべてを一度に変えろというのはさすがに乱暴です。しかし私はこれからの寺社建築は、もっと積極的に木造建築を選択しないと社会から取り残されると考えています。

木の文化と言われる日本ですが、現在この分野をリードするのはヨーロッパです。日本には古くから木材が活用されていた分、「木はコンクリートより劣ったもの」というイメージが拭えていないのかもしれません。一方、海外では素直にクールと受け止められています。

しかも木材はただ美しいだけではありません。林業や里山の復興、木くずから生まれるペレットや木質バイオマス発電によるエネルギー資源獲得、息長く続けていけば杉花粉の減少などにも寄与します。

この辺は以下の本が詳しいですよ。40万部突破で一大センセーションを巻き起こした本ですが、近未来の日本について、ものすごい気付きを与えてくれます。私が買った時にはスタジオジブリのイラストなんて表紙にありませんでしたが、いつの間についたんだ(くやしい)。



 里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)

 藻谷浩介・NHK広島取材班 著

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宮大工が必要な荘厳なお堂はともかく、境内の一画に建てる寺務所や社務所など、できる部分から木造を取り入れていってもよいはずです。このように寺社が社会に先んじて木造普及の旗振りを担えば、日本の精神の柱として見る目がまた変わっていくでしょう。

なお、木造普及が進み過ぎると、今度はまた森林破壊が進むのではないか。そんな疑問が湧く方もいるかもしれません。しかし木材は本来、再生可能な資源です。これは日本でも古くから当たり前にあった考えですが、現在オーストリアでは高度な森林管理を行う「森林マイスター」という制度も作られています。

木材は管理技術においても、過去の乱開発時代からは考えられないほど進化しています。そして日本は国土面積の66%が森林という、世界でも恵まれた森林大国です。この分野で存在を示すことができれば寺社は日本をリードできますよ。

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高尾山口駅

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