浄土真宗が仏前結婚式で他宗派よりリードしている点まとめ
お寺で結婚式を挙げ、仏前結婚式盛り上げ企画も行っている私にとって、嬉しいニュースが飛び込みました。
読売新聞によると、西本願寺の阿弥陀堂で結婚式を挙げるカップルが募集されるとのこと。
浄土真宗本願寺派は10日、本山・西本願寺(京都市下京区)の境内にある国宝・阿弥陀堂で結婚式を挙げるカップル10組を募集すると発表した。
挙式日は今年10月〜来年5月。2014年に就任した大谷光淳こうじゅん門主(38)を内外に披露する「伝灯奉告でんとうほうこく法要」の記念行事で、阿弥陀堂での結婚式は、歴代門主以外では初めて。
おお! 去年、西本願寺で私が講演させて頂いた時、仏前結婚式いいよという話もさせて頂きましたが、もしかしたらそこに触発された方が出てきたでしょうか(たぶん、関係ないと思うけど)。
そして、速攻で中外日報から次のニュースが出てきました。
10月に始まる光淳門主の伝灯奉告法要の協賛行事の一環として企画された本山本願寺の国宝・阿弥陀堂での仏前結婚式をめぐり、「本山の伝統や歴史を踏みにじるもの」と強い批判の声が上がった。
(中略)
「たった10組だけの結婚式のために伝統を崩すのか。“人寄せパンダ”のような行事なら絶対に反対。そんなことのために阿弥陀堂を使われたくない。これを機に本山の伝統を変えてやっていく覚悟はあるのか」と強く反発した。
うん。なんたることぞ。
現在の日本で行われている結婚式のシェアが1%未満しかない現状を考えれば、そもそも仏前結婚式なんて前例のないことだらけです。なので私は果敢にチャレンジする方を積極応援する立場ですが、企画された方、反対される方、それぞれの気持ちは分かります。
仏縁につながる仏前結婚式に可能性を見出される方は多いでしょうし、一方で全国1万ヶ寺以上もある本願寺派の信仰の中心だけに、これまで行ったことがないことに慎重な人がいるのも仕方ないでしょう。
読売新聞の最初の情報によると、3月10日から申込み受付とありましたが、どうにか調整していけるのか、それとも中止になってしまうのか。続報は気になるところです。
(だめになったかなー。見直したら読売新聞のネット記事も消えているし)。
しかしこんな社会の縮図的ニュースを見せられると、私は当事者よりもそれを取り巻く方々の反応の方が気になります。具体的には本願寺派のお坊さん達のfacebook投稿ですね。
うん、興味ないのか、あまり目立った声はありません。私の見た範囲だけですが、ちょっと噂話されていた方がいたくらいでしょうか。
個人的にはAmazonの派遣僧侶に蜂の巣つついたような反応されるなら、こういう未来の可能性を左右するニュースこそ敏感になろうよと思わなくもないですが。全国の本願寺派のお坊さん達が「いやいや、仏前結婚式いいですやん」って空気を作れば、今回はダメでも未来につながると思うんですけどね。
もしくは、「いや~、阿弥陀堂はダメでしょ。だけど、これこれこうすれば、本山の結婚式盛り上がっていきますよ。そんでそのまま、仏前結婚式と言えばうちらの宗派にしちゃおう」みたいなポジティブ議論も楽しいと思います。
実際、浄土真宗(本願寺派だけではないですが)は他の宗派以上に仏前結婚式向きですし。そこで私が考える浄土真宗が仏前結婚式で他宗よりリードしていると感じる点を挙げてみます。
(ちなみに私が行っている仏前結婚式盛り上げ企画は浄土真宗のみ応援しているわけではないですが、全体を見渡した雑感ということで今回はまとめてみました)
浄土真宗が仏前結婚式で他宗派よりリードしている点まとめ
1.そもそも宗祖が結婚している
結婚式に関して、浄土真宗が他宗派と明確な線を引ける部分がここです。そして脈々とお坊さん達が結婚する伝統を作ってきました。その歴史を考えれば、明治時代以降に結婚し始めた他の宗派のお坊さんとは「結婚」における経験値が違います。
その蓄積をどれだけ分かりやすい形でお寺の外に表現していけるかで、浄土真宗のみに通用する仏前結婚式ブランドは出来上がります。
浄土真宗の仏前結婚式紹介を見ても、大抵は親鸞聖人のエピソードがちょこっと紹介されているのみですが、もっと分かりやすい形で結婚式にガッツリ組み込んでしまうくらいしても良いのではないでしょうか。
2.東京でリードしている
東京のお寺で仏前結婚式のプロモーションを積極的に行っているのは、ほぼ築地本願寺のみです。その他は本山クラスの大寺院でさえも、まだまだスタートラインには立っていません。
日本において東京でトップに立つことの優位性なんて、わざわざ説明するまでもないことでしょう。築地を拠点に東京の本願寺派で仏前結婚式を固めてしまえば、ものすごい先行者優位が作れます。
3.地方でも、浄土真宗は仏前結婚式を行っている
私がまとめた仏前結婚式ができるお寺の一覧でも、結婚式ができる浄土真宗寺院は各地に点在しています。
こうしたお寺が拠点となってそれぞれの地域で仏前結婚式を広げていけば、日本中に結婚式ネットワークが生まれます。
また、統計データを見ると北陸の仏前結婚式シェア率は、全国平均の3倍以上あります(平均が1%未満なので、3倍にしたからどうよって話はありますが)。
これはちょっと推測が混じりますが、北陸と言えば真宗王国。この地で仏前結婚式シェアが高いのは、やはり浄土真宗が多いからではないでしょうか。
このような地方色が出せるのも、強みになりえる要素です。
4.お寺の外に伝える分かりやすいシンボルがない
これは浄土真宗の方に怒られちゃいそうですが、浄土真宗ほどお寺の外に一発で自分を伝えるシンボルのない宗派は珍しいです。
対照的なのは禅宗の座禅です。その他、一般に人気の高い修行体験、御朱印、お守り、みんなNGなのが浄土真宗です。仏像ファンのカテゴリーでも阿弥陀さまオンリーの浄土真宗と曼荼羅世界で多様な仏さまが登場する真言宗では、入り口の見え方は異なります。
去年、お寺の漫画図書館をプロデュースして気づきましたが、漫画に出てくるお坊さんも浄土真宗の僧侶は他宗より少なかったです(現実には一番多いのに)。それだけ自分の教えに引き込むシンボルが、外からはぼやけて見えるのでしょう。
しかしその穴を埋めるキーワードとして、仏前結婚式は良いのではないでしょうか。仏前結婚式を入り口にすれば、浄土真宗が本来大切にしているお念仏にもつなげていくことは可能です。
5.そして、京都に帰結する
西本願寺に仏前結婚式を広めたいという志を持つ方がいるのは、やはり心強い存在です。今回の件で萎縮されなければと願うばかりです。
京都での仏前結婚式は、社会に強力なメッセージを発します。西本願寺でも仏前結婚式自体はこれまでも行われてきましたし、これをさらに進化させたらきっと世の中に伝わるスピードも速まるでしょう。
本山からのトップダウン、地方からのボトムアップ、両輪で仏前結婚式が作られていけば、浄土真宗による仏前結婚式ブランディングは間違いなく他宗より抜きんでることができます。
ということで
西本願寺の仏前結婚式ニュースに絡めて、浄土真宗と仏前結婚式の可能性を考えてみました。
まとめたことは正直な感想ですし、仏前結婚式に関して言えば浄土真宗が現時点で一歩リードしていると思うのは私の実感です。
ですが何度も書いちゃいますが、結婚式における仏前結婚式のシェア自体が1%未満しかありません。リードしていると言っても、どの宗派もほとんどタケノコの先が地面から出たか出ないかくらいの差です。そこからぐぐぐんと伸びていけるかは、ここからの展開次第なのだと思います。
そんな意味でも最後にもう一度。西本願寺、頑張れ~! と、こっそりエールを送っておきます。