エンディング産業展というカオスは、供養を破壊するか?
顧問を務める霊園会社・アンカレッジのブースに出ている関係上、ほーりーは東京・大阪のエンディング産業展に全日(東京3回×3日+大阪1回×3日)参加しています。
それでいつも好奇心であちこち見て回るのですが、それを3年も続けているといろんな変化を感じます。
また、開催前後や当日の会場などで、多くの方ともお話させて頂いています。そこでよく聞くエンディング産業展へのネガティブな意見に
○供養をないがしろにしている
○人の不幸を商売化している
○伝統を軽視している
○安くて手軽なものだけの助長化を促す
などがありました。
なので今回はこうした言葉について考えるために、まずはほーりーがエンディング産業展で感じた変化をまとめてみます。
エンディング産業展で感じた4つの変化
樹木葬が増えてきた
こちらは先日書いた記事の繰り返しですが、樹木葬ブースが増えてきました。
なので概要だけちょっと抜き出すと、公式資料を検索して数えた樹木葬ブース数は
2015年(東京) 3社
2016年(東京) 3社
2017年(東京) 5社
2017年(大阪) 5社
という感じで微増です。
しかし資料に載っていなくても樹木葬をメインで扱っている会社もあります。会場を見ている限りでは、以前より「樹木葬」という言葉が目立つようになってきました。
また上記記事で書いてないことを追記するなら、第一回目でメディアに一番大きく取り上げられた宇宙葬は、3年間出展ブースが増えたようには感じません。まあ、大掛かりなのでそもそもシェアも小さいですし、参入企業も限られるのでしょうが。
手元供養はバリエーションが少しずつ増えています。ただ規模としてはそれほどの大きさではなさそうです。
石材店ブースは一番数が多いですが、これは古くからある形態なので、伸び率という意味では測りかねるところです。
樹木葬と並んで(もしくはそれ以上に)勢いを感じるとしたら、ペット供養でしょうか。こちらはもう、いろんなサービスが展開されています。
それぞれ分野ごとの勢いが推し量れるところも、エンディング産業展の魅力ですね。人の心にどの程度寄り添えているかは市場規模にも反映されますし、この辺はデータも交えてさらに深堀したいテーマです。
宗教者のブースや来場者が増えてきた
エンディング産業展の第一回目(2015年・東京)に来ていたお坊さんは、それほど多くありませんでした。しかし年を追うごとに会場に足を運ばれるお坊さんは増えています。
そしてさらに面白い変化は、お坊さんが開いたり、僧侶を対象にしたブースが増えたことです。
浄土真宗本願寺派総合研究所さんが開いた本願寺カフェとか。
顔の見えるお寺紹介サイト『まいてら』とか。
あと、お寺じゃないけどドキッとしたのは、来世幸福セレモニー株式会社さん(幸福の科学の葬儀社)とか。模擬葬儀をされていたので、じっくりと見てしまいました。
そして我々、アンカレッジを核にした『お寺の応援団ドリームチーム』も、この分野では先行しています。お寺で活動している人が集まり、お坊さんたちにPRする仲間ですが、メンバーにはお坊さんも多く入っています。
参入経緯はそれぞれあると思いますが、僧侶の存在感が増してきたのは業界全体にも良い傾向でしょう。
B to B に絞られてきた
「B to B(Business to Business)」、企業間取引のことです。ちなみに企業と消費者の取引(一般的な商品購入など)は、「B to C(Business to Consumer)」、ネットオークションなどの消費者同士の取引は「C to C(Consumer to Consumer)」と呼ばれます。
で、本題。初年度は一般ユーザー向けに自社製品の提案を行う企業もあったのですが、3年経ってみると軒並みなくなっていました。これは私の気づきというより、アンカレッジの伊藤社長がぽそりと言った言葉で、私も「あーなるほど」と思ったことですが。
名指ししちゃうのもアレなので具体名は控えますが、初年度はど真ん中に一番でっかなブースを作っていたところとかですね。
ただこれはそうした企業がビジネス的にうまくいかなくなったという話ではなく、単純に来場者のほとんどが商談を求めてくる人だったということでしょう。
実際にブースに立っていても、自分のお墓を探しに来たという方はほとんど見かけませんでしたし。まあ、エンディング「産業展」ですので、当然と言えば当然ですが。
あと、美坊主コンテストも、来年は続けるかどうか未定と発表されていました。これも最初はテレビでバンバン放映されていましたが、3年目までで話題は収束してきています。
これも一般ユーザーがいない中では、盛り上がりに欠けてきたという判断かもしれません。私が以前ブログで書いたように、このイベントはやはり外に打って出てほしいものですよ(エンディング産業展でも続くのなら、続いてほしいけど)。
時代を反映するキーワードが増えた
世間を賑わすテクノロジーや思想が、お寺とどう関わっていくか。先進事例を間近で見ることができるのも、脳みそを揺さぶられるところです。
こうした多様性は、3年間で広がったように感じます(ただ、大阪会場は「え? こんなのあるの」という驚きが少なく、まだまだ手堅い印象でしたが)。
直近で見たものだけでも、ドローンとか
VR(Virtual Reality – 仮想現実)とか
LGBT(性的少数者)とか
新電力など
あと、お寺業界ならではというものであれば、墓じまいとか。
その他にも先日ブログに書いた、ロボット僧侶なんてものもありましたね。
ということで、、、
こうして俯瞰してみると、エンディング産業展はカオスなごった煮状態です。
それで改めて、最初に挙げたネガティブイメージに戻ってみます。
○供養をないがしろにしている
○人の不幸を商売化している
○伝統を軽視している
○安くて手軽なものだけの助長化を促す
これについては、当然当てはまるものもあるでしょう。ただほーりーが感じているのは、玉石混淆の中で残念なものもたくさん出るでしょうが、多くの人が知恵を出し合い、手足を動かしている場所の方が、人の心に寄り添うものはたくさん生まれるだろうということです。
まあ、これって、資本主義的な考えではありますけどね。みんながそれぞれ自分の利益を考えてモノを作り、市場がそれを広めていく。それによって社会は全体としても発展していくわけで、エンディング産業だけが他と異なるわけではないだろうということです。
実際に直葬(通夜や告別式などを行わずに火葬すること)が浸透したことで、逆にお葬式の意味を考えたり伝える努力をされる方も格段に増えました。
それは当事者のお坊さんにはきついことでしょうが、ある意味で惰性的に続いていたお寺の慣習から置いてきぼりにされていた人を救う結果にもなっています。
上で紹介したものも、これまで無視されてきた少数の意見や立場だけに特化したものだったり、真っ向ぶつかる真逆のものがあったりと、様々な提案が並んでいます。
私が関わっているアンカレッジで言えば、『お寺の樹木葬』を、男性に嫌われてもよいから女性に選ばれることを目標にしたことで「お参りしたくなるお墓」を開発できています。
こちらはお墓購入者の8割が、そのお寺で葬儀法要を依頼されました。「供養を大切にしたくて」「伝統的な仏教式にもマイナス感情がなく」「ある程度価格が高くて手間がかかっても良い」けど、既存の檀家システムに入ることが難しい人に強く訴求しています。
商売やお金儲けを忌避する空気は日本全体にあるものですが、とりわけお寺は強固です。ですがそれがお寺自体の首を絞めているとも感じる今日この頃です。
商売やお金儲け自体は、詐欺などの犯罪とはノットイコールです。先日も浄土宗の兵庫教区で「経済&布教が両輪で回るモデル」をテーマに講演させて頂きましたが、これらはお寺を未来につなげる手段でもあります。
世の中にいる人の置かれた立場や経済状況、故人との関係だって百人いればみんな異なります。その中で少しでも多くの方が自分にとっての最適解を選べるとしたら、それは選択肢が多様な環境以外に答えはないとほーりーは思っています。
エンディング産業展は、そんな土壌の到来を予感させてくれる場ですよ。