宿泊者が涙した宗元住職の法話は、宿坊で仏教初心者と話し続けた産物
先日、フジテレビの『ノンストップ!』という番組に出演させて頂きました。
この番組はバナナマンの設楽統(したら おさむ)さんがMCを務める情報エンターテインメント番組で、水曜日は「美活やってます」という、主に女性に向けたコーナーがあります。
そしてここで宿坊が特集されることになったため、宿坊を19年研究しているほーりーが呼ばれることになりました。
ほーりーが設楽さんたちと話したこと
宿坊をテーマにテレビに呼ばれるのって、久しぶりです。一時期のブームが落ち着き、その間にパワースポットやお坊さんバラエティが流行ったりして、そしてここにきてまた宿坊に話題が集まってきたのでしょう。ひとつのことをずっと続けていると、世間の注目がサイクル的に移る流れを感じますね。
それでほーりーは今回、企画時から相談を受け、当日は生出演で宿坊の歴史や期待をコメントさせて頂きました。
内容はこのブログでもよく書いていることですが、簡単にまとめると
○宿坊は平安時代に原型が生まれ、江戸時代に大きく広がった
○かつては信仰団体を中心にした宿泊施設だったが、今は個人でも気軽に泊まれる
○宿坊は近年、数を減らしていたけど、2017年は反転した
というあたりです。番組の構成的には「女性に大人気」、「訪日外国人も急増」の二点を注目理由に挙げていました。
もちろん、宿坊なんて聞いたこともないなんて方へのリーチとして、テレビはめちゃくちゃパワーがあります。が、このブログを読まれている方には耳タコ情報なので、私の話はこの辺にしておきましょう。
それよりほーりー的にはこの番組で紹介された鳥取県の宿坊・光澤寺のVTRがすごかったので、改めてふれてみたいと思いました。
光澤寺はどのように紹介されたのか?
鳥取県八頭郡にある光澤寺。2012年に宗元英敏住職が宿坊を作られ、ほーりーも常にウォッチしているお寺です。
都市部から離れた過疎の町にあり、お寺に国宝や重文クラスの文化財があるわけでも、周りに人が集まる観光地があるわけでもない。
そんなある意味でどこにでもあるお寺ですが、ここは宿坊を作ったことで日本中(というか、海外からも)人がお参りする仏教へのコンタクトポイントになりました。
ほーりーの講演では宿坊を開くとこんな効果があるよと、この光澤寺の事例をよく紹介させて頂いています。
宿坊は競合が少なく、誕生すると多くの注目が集まる。メディア露出は増えますし、当然ながら多くの方がお寺の存在を知ることで人が集まるようにもなります。
ただそれが持続するかどうかは、宿坊を営む「人」次第です。そして光澤寺の宿坊が今もって大人気の理由を、今回は番組に出演しながら感じてしまいました。
いやね。前から知っていたつもりでしたが、改めて見せつけられたわけですよ。
番組を見てなかった方のために説明すると、宿坊を特集したコーナーの中で、光澤寺に泊まられた女性二人の取材映像が流れました。
そこで出てきたのが住職の法話に女性が涙ぐまれる場面と、夜遅くまで住職とお酒を飲みながら過去の恋愛について語り合う場面。
私のfacebookでもこの様子を見て、「一般の宿泊施設では体験できないこと。宿坊の果たす役割の大きさを感じました」とコメントされたお坊さんがいました。
ほーりーも番組が終わった後、Twitterで以下のようにつぶやいていましたし。
それにしても、光澤寺の宗元住職は本気ですごい。法話中に宿泊者が涙ぐまれたり、夜は遅くまで話をずっと聞いていたり。出演された方々も「これは旅館じゃ無理」「好きじゃなきゃ続かないよ」と呟いていたのが印象的でした。宿坊やりたいお坊さん達のハードルが上がらないか、心配になるレベル。
— ほーりー(寺社旅研究家) (@holy_traveler) 2018年2月28日
そしたらお坊さんじゃなかったけど神主さんから
「泊まりに来た方が泣いてしまうほど心の揺さぶられる話ができるかと思うと、宿坊への新規参入の難しさを感じた」
という趣旨のメッセージが送られてきました。
いやいや。分かります。あれは狙ってできるものじゃないし、画面越しでもすごみをビリビリ感じましたし。
が、宗元住職とはもう何年もお付き合いさせて頂いているほーりーとしては、その「すごみ」の源泉が何かにも思い当ってしまうのです。
宿泊者が涙した法話は、宿坊で仏教初心者と話し続けた産物
記事タイトルにもしているのでズバッと答えを書いてしまえば、すごみの源泉は「場数」です。
少なくとも「仏教に馴染みのない」「初対面」の方を相手にした、「少人数でフェイストゥフェイス」の法話と限定すれば、宗元住職と渡り合えるお坊さんはかなり限られると思います。
いや、圧倒的な知識を持っていたり、とんでもない修行をされたり、檀家さん・門徒さんからの信頼厚いお坊さんは、他にもたくさんいます。宗元住職がすべての場面で最強レベルだとは、私も思っていません。
ですが宿坊・光澤寺は、一日一組限定です。しかも宿泊者と一緒にご飯を食べたり、お酒を飲んだりといったこともしばしばです。それを年がら年中、繰り返している。もう、本当に好きじゃなきゃ(というか、生半可な好きじゃ)、できないことでしょう。
はっきり言って、めちゃくちゃ磨かれまくっているわけですよ。それはもともと人見知りのほーりーが、寺社コン300回くらいやったら婚活イベントの盛り上げ役では無駄にスキル上げまくりなことと一緒です。
それを考えると「宗元住職のようなとんでもないお坊さんにしか宿坊はできない」ということではなく、「宿坊を続けていると、宗元住職のようなとんでもないお坊さんが生まれてしまう」という順序が正解なわけです。
なのでもしも他にも「宿坊はやってみたいけど、あんなのムリだ~」と思われた方がいたら、いきなりあのレベルなんて不可能なので、プレッシャー感じる必要ありませんよというのが、ほーりーがこの記事で伝えたいことでした。
ということで、、、
「誰でも最初は初心者」なんて言うと、めちゃくちゃ使い回された言葉ですが、やっぱりこれは真実です。
が、そうすると「宿坊を続けると、宗元住職のようなお坊さんが生まれることは分かった。でも、そもそも宗元住職は宿坊がとんでもなく好きだったから、そこまで続いたわけですよね」なんて言われます。
でも、これもほーりーはどうかなと思います。
本人に聞いたわけじゃないので私の経験上の話で言えば、婚活イベントを10年続けていることも、宿坊研究を19年続けたことも、いきなり最初からマックスレベルで好きだったからというわけではありません。
やりながらひとつひとつ、「あ、これ楽しい!」「あ、この部分は工夫してみたい」と深みにはまり、いつの間にか続いてしまいました。
宗元住職の場合はお寺の設備を整えるなどの準備も必要だったので、私と同列に語るわけにはいきませんが、宿坊に関して言えば今年は民泊も解放され、開設のためのハードルは少しずつ下がっていきます。
なので、思い切って飛び込んで、一つ一つやりながら好きになって、気が付いたら無双レベルのお坊さんになってしまったというコースはありだと思いますよ。
宗元住職のような開拓者が前を歩いてくれているので、その道は5年前よりずっと平たんになってきています。ビバ☆ 光澤寺なわけです。