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過疎寺院で一億円以上の収益を目指す、宿坊と永代供養墓の組み合わせ

光澤寺・宗元英敏住職&ほーりー

 先日、光澤寺・宗元英敏住職と、Zoomで話をしていました。光澤寺は過疎が進む鳥取県八頭町にあり、檀家さんも少なく周りは田んぼに囲まれた、厳しい環境のお寺です。

 こちらが宿坊を開設したのは2012年。住職夫妻のみで宿泊は一日一組限定と、こじんまりと運営されています。

 そんな光澤寺ですが、これまでお寺や一般社会の間でも様々な話題を生み出してきました。以下はほーりーが講演などで使用している資料ですが、オープンから半年ほどで、メディアにもどんどん取り上げられています(そしてそれは、今も続いています)

光澤寺の事例

 ちょっと前にほーりーがテレビに出た時は、この光澤寺の取材VTRが番組の中でも流れました。

 宿泊者が涙した宗元住職の法話は、宿坊で仏教初心者と話し続けた産物

 そして宗元住職が新たに始めた取り組みが、また過疎地域のお寺に光を照らす内容だったので、今回はその話の紹介です。

宿坊と永代供養墓の組み合わせ

 光澤寺が始めた挑戦。それは本堂や境内に、永代供養墓の新設・増設を始めたことです。

 御多分に漏れず、光澤寺の宿坊もこのコロナ禍によって予約が激減しています。しかしその間を縫うように、境内工事に入られました。

 お寺に特化して樹木葬墓地を作るアンカレッジ顧問も務めるほーりーですが、様々なデータ調査で見えてくるのは、お墓にはアクセスの良さを求める方がとても多いことです。

 しかし先に述べた通り、光澤寺は過疎地域にあり、アクセスの良さなんて売りにできるはずもありません。それでも2000万円の初期投資を行い、以下のお墓を作り始めています。

 ○本堂に家族用の納骨壇150基
 ○夫婦用の納骨堂300区画
 ○樹木葬250区画(ペットも一緒に納骨可)
 ○プレート墓22基(家族用&ペットも一緒に納骨可)
 ○ペット供養墓200~300体
 ○合葬墓1200体納骨可

 ある意味で最近のセオリーからは外れた立地でのお墓作りです。それもこれだけの区画数となると、半端なチャレンジではありません。

 しかしすでに初期投資分は回収されており、今後は本堂の屋根葺き替えや会館・納骨堂の建設などで、1億円規模の工事も計画されているとのことです。

 なお、この件について宗元住職のコメントを紹介させて頂くと、以下のように語られていました。

 永代供養は設備投資は必要ですが、ランニングコストはほぼ発生せず、あとは回収だけになるのでとても楽です。住職夫婦でメンテナンスできますし、ハコを造っておけば過疎地寺院でも億という単位が見えて来ますし、寄付なしで本堂や庫裏の修繕ができます。新しいお寺のスタイル、ポストコロナは「会費と寄付の要らないお寺、お布施が安くて明確なお寺」になっていくと感じています。

 堀内さんの提唱される、収益源の複数化は必要です。お寺と宿坊が暇でしたが、永代供養の申込みがあれば精神的に楽だったです。もちろん、いずれは葬儀や法事が入ってきます。これで一応、この過疎地寺院で4億円のハコだけは用意できます。過疎地なので、境内地のお墓の建設は申請不要と役場からは言われています。また空家や休耕田が増えるので、過疎地には大きなポテンシャルがあるのです。ちなみに永代供養申込みの9割が檀家外の他宗派です。

 それと、檀家さんからは一円も寄付をいただいておりません。本堂修繕にその覚悟を決めたのが、永代供養を大きく進めるきっかけとなりました。

コロナを経て、国内旅行はしばらく活性する

 そしてこの話は、先日開催した『宿坊オンラインサミット』でも行って頂きました。このサミットは日本各地の宿坊の方とZoomで語り合うウェブ会議です。レポートは以下の記事に書いたので、よろしければご覧ください。

 宿坊オンラインサミット開催。コロナの中で、希望の見える一日でした

 こちらの本題は、コロナ禍でダメージを受けた宿坊を、これからどう立て直していくかというものです。お墓に関連した部分を抜き出すと、「訪日外国人はしばらく戻ってこない一方、日本人の海外旅行も控えられるため、国内旅行が活性化する」という予測があります。

 以下は観光庁の資料ですが、もともと旅行消費額の6割は宿泊を伴う国内旅行でした。訪日旅行がぐんぐんと伸びていたためここ数年注目を集めていましたが、それでも全体から見れば2割弱です。

日本の旅行消費額
 
 そしてこの訪日旅行分が激減する一方、日本人が海外で消費する分は国内に振り向けられます。また直近で大打撃を受けた観光業界への振興策も増えていくでしょう。コロナ不況の影響もあり、旅行消費が圧縮されることは考慮に入れるべきですが、それでもこれまで来なかった層が宿坊に来ることは予想できます。

宿坊&永代供養墓は、過疎寺院の切り札となる

 訪日外国人がお寺でお墓を購入する可能性は、ほとんどゼロです。しかし日本人ならその可能性は(ほんのわずかですが)上がります。さらに言えば国内旅行もコロナ以前と異なり、しばらく同県や近県旅行が中心となります。これもまたわずかですが、宿坊宿泊者がお墓に興味を持つ可能性を高めます。

 そして宿坊を開くと日帰り体験に訪れる方も多くなります。こうしてたくさんの方が出入りする中で、お墓に興味を持つ方も生まれていきます。

 光澤寺はこのようにして、宿坊に広告塔としての役割を期待しています。その威力は最初に出した資料にも書いたように絶大です。お寺に泊まるという特別な体験があるからこそ、地方メディアから全国区のテレビまで多くの取材が訪れます(もちろんそのためには、宗元住職の努力も大きいですが)。

 人間は未知のものより一度見たもの、知ったこと、訪れた場所などに、非常な親近感を覚えます。これは遠方の方にお墓購入を検討して頂くためには必須です。しかしお墓だけでそれを生み出すことは難しく、宿坊がそのファーストコンタクトの場を担います。

 鳥取県は大阪から足を延ばせば行きやすい立地ですし、宗元住職は東京の人も視野に入れています。実際に栃木の方が墓じまいの地として選ばれるなど、手ごたえを感じられているようです。

ということで、、、

 宿坊は(一部のプレミアムなものを除いて)単体で見れば、決して利益率が高いものとは言えません。しかしお墓による収入が見込めるなら、桁違いの経済基盤が生まれていきます。さらに言えば高野山など古くからある宿坊街でも、宿泊+お墓はもともとあった組み合わせですし、この宿坊&永代供養墓が上手くいくなら、過疎寺院にはとてつもなく大きな希望になるでしょう。

 またこうした考えに基づくのなら、宿坊の稼働率を無理に上げる必要がないことも見逃せません。民泊新法による年間営業180日の制限も有利に働きますし、日帰り体験を充実させて宿泊は平日限定(お墓購入を検討するシニア世代狙い)としたり、シーズンオフのみとするのも無理なく持続させる方策となります。

 そして樹木葬推しのほーりー視点で言えば、「花と緑でいっぱいのお墓と言っても、うちの近所は自然だらけだよ」なんて意見も時々聞きます。しかし特に女性には、放置されたままの自然と手入れされた庭苑は異なるものと認識されます。田園風景や遠景の山々は心をいやすものですが、お参りの場として整えられている樹木葬は、相乗効果で価値を高めます。

 実際にアンカレッジでも、過疎地域で自然豊かな景色の中で作った樹木葬墓地も、好調に売れていますしね。

 コロナ禍によって広まったオンライン通話の各種ツールは、過疎地域の寺院には有効な働きをします。これは同じく過疎地域にある青森県下北半島にある宿坊・普賢院の事例ですが、樹木葬の契約にZoomを活用されています。

 都心部と地方に交流を生む宿坊だからこそ、これまでなかった発想が生まれるふ化器になります。その大きなモデルとしても、光澤寺には要注目です。

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