メディア取材が100件突破した青森県の宿坊・普賢院の広報戦略
先日、コロナが5類になって宿坊への注目度が増した話をブログに書きました。
コロナが5類に移行して1カ月、宿坊が取材ラッシュを受けている
この記事でも紹介しましたが、青森県大間町にある普賢院さんが、宿坊オープン5年でメディア紹介100件を突破したと報告されていました。
普賢院は本州の最北端・大間町に建つお寺です。マグロで有名な町ですが、人口は流出を続ける過疎地域でもあります。ほーりーも行ったことがありますが、青森駅から電車とバスで5時間近くはかかります。
そのような場所にあるお寺が、日本はもちろん海を越えて多くのメディアに紹介されているというのは異質です。しかも普賢院はもともと檀家さんもおらず、ほぼ放置状態のお寺でした。
そこで今回は、普賢院の院代(住職代理)・菊池雄大さんに取材し、そのメディア戦略をお聞きしてきました。
メディア紹介が100件突破した、普賢院の歩み
そもそもですが、普賢院に宿坊が誕生したのは2018年4月です。この時はまだ周りに知られておらず、ゴールデンウィークに入っても、宿泊予約はほとんど入っていませんでした。
余談ですが一番最初に宿泊されたのはスペインの方だったそうです。菊池さんも日本人より早くどうやって普賢院の宿坊情報を知ったのかと、首をひねられていました。
しかし一件、取材が入ったことで風向きが変わります。掲載された記事をもとにプレスリリースを出したら、それを見たメディアの方から連絡が相次ぎます。
そして最初は青森県のテレビや新聞、続いて河北新報など東北地方全般を扱うメディアに広がり、やがて全国規模の大手メディアでも取り扱われるようになりました。それどころか海外にも普賢院が紹介されるなど、その広がりは留まるところを知りません。
しかもその取り上げられ方も様々です。基本的には旅情報として女性誌に載ることが多いようですが、中には地方創生の事例として、商業の授業で扱われる高校の教科書にまで掲載されていました。
また宿坊以外でも樹木葬について取り上げられ、宿坊がお寺全体の広告塔の役割を果たしている様子も見て取れます。
菊池さん自身も様々な方と知り合いになり、花が咲いたらプレスリリースを出すといった具合に積極的に情報発信をされています。その中にはお寺関連で何かあれば普賢院に連絡するとおっしゃって下さる方も出てきて、相互に情報が行き交っているとのことでした。
宿坊はメディからの取材を受けやすい
これはほーりーが様々な場所で宿坊開設について相談を受けたり、講演するときにお話ししていることですが、宿坊は他のホテルや旅館と比べて、圧倒的に取材依頼が入りやすい宿泊施設です。
そもそも宿坊自体は全国に500軒くらいです。それも誰でも宿泊出来て常時稼働しているとなれば300軒くらいに減りますし、高野山や善光寺、身延山など一か所に固まっている場所も多いので、宿坊がゼロ~数軒しかない県もたくさんあります(青森県も3軒しかありません)。
その結果、新しくオープンした時の注目度は高くなります。以下は2012年に宿坊を開いた鳥取県・光澤寺のケースです。
また、もうちょっと最近の事例だと山口県・二尊院もメディア取材が連続してきました。こちらなんて、宿坊を開いたのはコロナが広まったばかりの2020年ですからね。
宿坊オープンから2ヶ月で、山口県・二尊院が14件のメディアに登場
ほーりーはこの二尊院さんと宿坊立ち上げ時から企画作りでご一緒していますが、最近も3件立て続けにテレビ取材が入ったと仰られていましたよ。
メディア紹介を記録することの大切さ
話を普賢院に戻して、菊池さんはメディアから取材を受けた記録を残すことの大切さも語られていました。
そもそもちゃんと手元に情報がなければ、「取材が100件、突破したよ」と言えません。そしてこの100という数字が、周りからの評価につながったり新しいご縁を呼び込みます。
菊池さんは宿坊開設を決意した時、融資をお願いするために金融公庫へ足を運びましたが、宿坊の可能性を語るためにほーりーのブログを印刷して持っていったとのことです。
ほーりーのブログが、普賢院宿坊の両親や金融公庫説得に役立った件
さらにその場で「10年以内にメディア取材が100件来る」ともお伝えされていたそうです。それが5年で達成されたため、金融公庫の方から今回わざわざ連絡が来て、褒められたとお話しされていました。
また取材を100件受けたという情報は、普賢院の紹介や菊池さんのプロフィールに載せられます。それは初めてお会いした方にとって、分かりやすい自己紹介にもなるでしょう。
ほーりーも講演で、こうしたメディアに載る効果をお話しさせて頂くことがありますし。なお、私の場合は「300件以上の取材を受けた」と書いていますが、普賢院さんの方がペース速いので、そのうち抜かれると思います。
と、いうことで、、、
普賢院はコロナ禍にあっても、宿坊のクオリティを高めるために果敢に挑戦を進めていました。
コロナで大ダメージ受けたのに、予約が前年比1.5倍の宿坊普賢院
それがコロナも落ち着き、ようやく旅行機運が高まってきた今、これまで以上に宿坊が忙しくなっています。行くのは本当に大変な場所ですが、それでも関東や関西から宿泊される方が来たり、海外からも足を運ばれています。
そしてお父様のお寺である福蔵寺の檀家さんなどからも、「またテレビに出ていたね!」と喜ばれているとのことです。
宿坊を核にして、ほぼ非稼働状態だったお寺に世界中から人が訪れる。本州最北端は時代の先端を走り続けています。普賢院の宿坊情報は、宿坊研究会もご参照ください。