アフターコロナの宿坊が、希望に満ちている理由
コロナウイルスは宿坊にも、多大な影響を及ぼしています。知り合いにも何人かお聞きしましたが、「ほぼ壊滅」「キャンセル続出」「今は何をやっても難しい」と言った声が挙がっていました。
現在、ほーりーが一緒に宿坊開設準備を行わせて頂いている山口県・二尊院さんも、オープン時期を春から夏へとずらすことになりました。
まあ、こればっかりは手の施しようがありません。日本どころか世界ほぼすべてで人の移動に制限がかかっている以上、個別の努力だけでは回復が見込めませんし。
3年目を迎える青森県・おおま宿坊普賢院さんも、何とか前向きにとらえて宿坊のバージョンアップ期間に当てられています。
コロナウイルスが収束した後の観光産業について考える
コロナウイルスがどの程度で収束していくのか。その期間によってシナリオも変わりますが、ほーりーは大まかな流れは以下の形で考えています。
(1)国内旅行が徐々に回復する
(2)観光振興策が増え、国内旅行が活発化する
(3)海外からの訪日旅行者数が戻り始める
(4)インバウンドの上昇トレンドが再び始まる
コロナウイルスの混乱が収まったら、まず起こることは国内旅行の回復です。海外にいきなり出かけちゃうぞ☆ という方は少数派ですが、手軽に温泉でも行ってみようという方は少なくないでしょう。
つまり国内旅行が先行し、遅れて海外からの旅行者が戻ってきます。そしてその頃には日本から海外へ出る方も増えるため、(超大ざっぱなイメージですが)以下の図式が成り立つわけです。
一番左の「現在」は、国内旅行・訪日旅行共に需要がほとんどありません。それが「収束前期」になると、国内旅行から回復します。この時にはまだ海外の方は少数ですが、日本から海外へ出る方も少ないため、その分だけ国内旅行需要が増すでしょう。
そして「収束後期」になると、海外へ出かける方が増えて国内旅行需要は落ちます。しかしそれを補うように訪日旅行者が増えていきます。
さらに最終段階の「将来」では、日本の人口減少によって国内需要は減りますが、世界では人口が増加する(&経済発展する国も増える)ため、訪日需要はさらに上がっていくでしょう。
日本人の海外旅行消費が、国内旅行に向けられる
現在(というか、コロナが広がる前)のビジネストレンドとして、訪日外国人は重要です。しかしこれは数字で見れば、まだまだ大きなものではありません。
宿坊(寺泊)が乗ったことでほーりーが何度も見返している観光庁の『令和元年版観光白書』(pdf資料)では、旅行消費額が以下のように記されています。
日本人の国内旅行は77.9%もあります。さらに日本人海外旅行がなくなるため、4.2%分(+海外で使うはずだったお金)も国内旅行に回っていきます。戻りの遅い訪日外国人旅行は17.3%なので、コロナウイルスが収束すれば、3/4以上は回復します。
そして日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数と出国日本人数の推移に寄れば、2019年は以下の通りです。
○出国した日本人数(アウトバウンド) 2008万0669人
○日本に入国した外国人(インバウンド) 3188万2049人
インバウンドの方が多いため、旅行者数自体が戻るのは少し時間がかかるでしょう。しかし海外旅行をあきらめた日本人が多くなる分、直近では日本人比率が増します。
日本人は海外の方より分散して各地の観光地に出かけますし、それだけ地方の宿坊にも足は向きやすくなるでしょう。
さらに新しく宿坊を始める方にとっては、やはり言語や習慣の壁などで外国人対応はハードルがあります。そこに慣れる時間を作りやすくなるという意味では、このインバウンド需要にストップがかかったことは、有利に働くかもしれません。
宿坊に泊まられた方から葬儀を依頼されたり、納骨堂の販売につながっているところもあるので、そんな意味で発展性もあります。
ということで、、、
先日、新型コロナウイルスによる混乱は、宿坊の価値見直しにつながるという記事を書きました。
この内容をまとめると、以下の通りです。
○コロナウイルスによる混乱は、必ず収束する
○世界的な観光産業の発達は、これからも止まらない
○宿泊施設を開業するには時間がかかる
なので新規に宿坊開設を考えている方にとって、今は周りに追いつく良い機会だと述べさせていただきましたが、今回のデータ調査もそれを補足しています。
いきなり慣れない海外対応に乗り出さなくても済むわけで、これから宿坊を作っていくことはお寺や神社の方にとってもやりやすいと言えるでしょう。
宿坊は開くだけでも大変なので、できるだけハードルの低いタイミングを狙うことは、とてもとても大切です。