仏像盗難について
今日、仏像が盗まれたというあるお寺の方からメールを頂きました。
仏像・神像盗難は、ここ数年かなりの被害が出ています。
その多くは海外に流出し、そこで換金されているようです。
私は寺社での盗難に関する新聞記事はスクラップにして保存していますが、
それらを見ても件数の多さには唖然とするものがあります。
寺社は基本的に、セキュリティが高くない場所です。
むしろ、一般家庭と比べても著しく低い。
これは逮捕された常習犯が、はっきりと口にしています。
ただそれは寺社の性質を考えれば当然のことで、
セキュリティを固めて人を閉ざしてしまうことがあれば、寺社は役割が失われるでしょう。
仏像盗難に関する世間での意識を、
宿坊研究会のアンケートで聞いたことがあります。
拝観を制限しても、セキュリティを強化するべき 26%
拝観しやすい環境は維持して欲しい 63%
どちらとも言えない 11%
結果は上記の通りでした。
これはこの問題に対する対策の難しさを、如実に表した数字です。
私自身も拝観しやすい環境は維持してほしいと願っている一人です。
ただ、誰でも受け入れるという立場に立ったとしても、
今よりもセキュリティを高める意識は必要ではないかと思います。
防犯用機材の設置。写真や鑑定による資料保管。
個々の寺社でできることもあるし、
天台宗で行われているような組織的な仏像盗難の救済制度への加入という道もあります。
「盗む人間の意識が低い」
前出の方はそう嘆いていました。
ただ盗んだ人間が、その言葉に痛みを覚えることはないでしょう。
私はこうした犯罪は、モラルの低下、
意識の低下だけを原因とするのは危険じゃないかと考えています。
こうした言い方はおかしいかもしれませんが、犯罪は日々進化しています。
昔はできなかったことが、今はできる時代です。
そうしたものに追いつくためのセキュリティにも目を向けなければ、
あっという間に文化は滅びるという危機感を感じます。
もちろん、ここで言いたいことは盗まれた方を非難することではありません。
ただ模倣犯を加速度的に増やさないためにも、
今一度セキュリティには目を向ける必要があるのではと思うのです。
寺社に防犯システムを持ち込むことが、
どうも敵視されている風潮を感じるこの頃。
少し私なりの意見を述べてみました。