1. TOP
  2. 03.寺社旅研究家のアイディア集
  3. 01.寺社活性化
  4. コロナによる葬儀業界へのダメージは、他業界と性質が異なっていた

コロナによる葬儀業界へのダメージは、他業界と性質が異なっていた

お寺の半鐘

 いろんなお坊さんやお寺関連で働く方と話をしているほーりーですが、コロナによって葬儀が減ったり、縮小・簡略化した事例はよく聞きます。ただ個別のお寺や地域によっても事情は変わり、実際にどの程度縮小したのかは測りかねていました。

 一方で先日、葬儀や終活分野を成長市場と見て、新たに目を向ける企業や学生が増えてきているという記事を連続で書いていました。

 衰退の中に新たな芽が出た2021年エンディング産業展

 葬儀や終活・お墓業界への学生イメージが、大きく変わろうとしている

 そこで今回は全体像を把握しておこうと、改めて葬儀業界の市場動向を調べることにしました。

葬儀業界はコロナでどの程度、ダメージを受けたのか?

 あれこれ探し回ったところ、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査が分かりやすかったので、こちらを引用しながら考察していきます。

 まずは葬儀業の売上高と取扱件数の推移をグラフにして見ました。

葬儀業の売上高と取扱件数の推移

 こちらを見ると右肩上がりで増えていたのが、2020年にすとんと落ちているのが分かります。それでは果たしてどの程度落ちたのか。ここで2019年と2020年の実数を抜き出してみます。

年次 売上高 取扱件数
2019 6001億円 446724件
2020 5135億円 437490件

 取扱件数は2.1%と微減ですが、売上高が14%減となっていました。

 しかし葬儀は基本的に、人が亡くなってから行われるものです。そこで2019年と2020年の年間死亡者数を厚生労働省の人口動態統計から調べてみました。

 それによると2019年は138万1093人、2020年は137万2648人が亡くなっています。なんとコロナが流行して以降、日本の死者数は減っているわけです。これは感染対策によって、他の病気の蔓延も抑えられたことが指摘されています。

 過剰な自粛によって若者の自死自殺者が増え、妊娠・出産数も減少しながら、高齢者の寿命だけが延びていく命の格差に思うことはありますが、ここでは置いといて。減少した死者数を加味して補正を加えてみました。

 437490件×(1381093/1372648)人=440182件(前年比-1.5%)
 5135億円×(1381093/1372648)人=5167億円(前年比-13.9%)

 これによるとコロナで葬儀を取りやめた方は1.5%、縮小規模は13.9%と推測できます。つまり葬儀事態をやめた人はほとんどいなかったものの、参列者数を絞ったり日数を減らすなどの簡略化はそれなりに行われたと言えるでしょう。

葬儀は他の業界と比べてコロナの影響は大きかったのか?

 件数はともかく葬儀の規模は減少した葬儀業界。しかしコロナの影響は広範な分野に及んでいます。そこで冠婚葬祭として一つにまとめられやすい結婚式業界でも同じグラフを作ってみました。

結婚式場業の売上高と取扱件数の推移

 こちらは2015年から調査方法が変わったため、それ以降のデータのみとはなりますが。それでも一番右端の2020年に目を疑うような下落が見て取れます。こちらも2019年と2020年の実数を抜き出してみると、以下の形になりました。

年次 売上高 取扱件数
2019 2538億円 86304件
2020 1116億円 36783件

 取扱件数は57.4%減、売上高は56.0%減と大きく減っています。そして婚姻数(2019年:599007件、2020年:525490件)の補正を加えても、取扱件数は51.4%減、売上高は49.9%減でした。

 まあ、結婚式はコロナの影響を丸かぶりですし、そのダメージも葬儀業界とは比較になりません。というか、自分がこの業界にいたらと思うと、ぞっとしますね(仏前結婚式盛り上げ企画で、少しだけ関わってはいますが)。

 また同様の調査で遊園地・テーマパークは入場者数が60.5%減、売上高は63.3%減となっていました。こちらは結婚式よりさらに打撃を受けた業界です。

 しかしこの2業界と比べた時、葬儀業界のみに起こっているのは一件ごとの規模縮小です。結婚式や遊園地は単純に開催数や入場者数が減ったことで売り上げが下がりましたが、逆に言えば人が戻れば売り上げも回復しやすいと言えます。

 その一方で葬儀に特徴的なのは、件数はほぼ変わらなかったのに、売り上げが減少したことです。これはコロナ禍が落ち着いた後の課題となっていくでしょう。

ということで、、、

 葬儀はコロナの影響をどのように受けたのか。結論を述べると以下の3点です。

 ○コロナの影響は他のひどい業界に比べると、マシと言える
 ○他の業界と異なり、件数は減らないけど単価が下がる事象が際立っている
 ○今後はこの単価をどのように上げるかがカギとなる

 これを総括すれば短期的にはまだよかった(一年で売り上げが14%も減少していて、「まだよかった」というのも感覚がマヒしている気はしますが)けど、長期視点で見ると他の業界より回復しにくいとも言えます。また葬儀の小規模化はコロナ前から進んでいたことなので、すんなり元に戻るとも考えにくい話です。

 それであれば少人数のまま価格をどのように上げていくか。これが業界を挙げての課題になっていくはずです。ほーりーの予想では葬儀のプレミアム化を目指す会社はこれから増えていくでしょう。

 具体的には生前契約と個別カスタマイズに挑戦する流れは生まれていきそうですね。これは亡くなった方とのお別れをどのように考えるか。お金の問題もありますが、これまでの延長線から外れても心と向き合う姿勢が問われそうです。

 また、葬儀会社は90%以上が中小企業と言われていますが、その再編も起こっていくでしょう。これからの多死社会に向けて、一気に成長する会社も出てくるかもしれませんね。

\ SNSでシェアしよう! /

ほーりーの旅ブログの注目記事を受け取ろう

お寺の半鐘

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

ほーりーの旅ブログの人気記事をお届けします。

  • 気に入ったらブックマーク! このエントリーをはてなブックマークに追加
  • フォローしよう!

関連記事

  • 御朱印のマナー違反が多発するのは、悪いことではない

  • なぜ分断を煽るのかと聞かれたほーりーが考えたこと

  • プロの寺社旅研究家を目指すなら、仏像だけは手を出さない方がいい

  • 発信力を掲げた神職研修会で、言挙げせずに七転八倒したほーりーの話

  • お坊さんが投資に手を出すことで得られる3つのメリット

  • お寺が排他的なのは、私たち「よそ者」のレベルが低いからです。