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浅草神社で行われたテクノ大祓は、神社に悪ふざけ力をもたらすか?

先日、東京・浅草神社で行われたテクノ大祓に出かけてきました。

そもそも「大祓詞(おおはらえのことば)」ってご存知でしょうか。このブログはお坊さんの方が読む方多いのでざくっと説明すると、神社で読み上げられる祝詞の中でも代表的なものの一つです。主に6月の夏越の大祓と12月の大みそかの大祓で唱えられますが、昔は時期を限定せずにあらゆる祭りで読み上げられ、様々な祈願に用いられたオールマイティな祈願詞でもあったようです。

そして、『テクノ大祓』。こちらは神主さんよりお坊さんの方が、ピンときやすいかもしれません。ここ数年、お寺界隈で大ブレイクしたものに『テクノ法要』があります。これは福井県の照恩寺・朝倉行宣住職が作られた法要で、所属されている浄土真宗本願寺派の本山である京都・西本願寺や他宗派寺院、さらには幕張メッセで行われたニコニコ超会議にも登場し、宗派やお寺の垣根を越えて活躍しています。

テクノ法要に見る、西本願寺に現れた黄金サイクルの兆し

そのテクノ法要と神社がコラボレーションして生まれたのが、『テクノ大祓』です。祝詞をコンピューターの音源に乗せて唱えたら、果たしてどのようなものになるか。これはすごそうだぞ! と、ほーりーも駆けつけてみました。

テクノ大祓、盛り上がっていました

テクノ大祓が行われたのは、東京にある浅草神社。この日は夏越の大祓の日で、拝殿前には茅の輪が作られていました。

浅草神社の茅の輪

このイベントは、寺社フェス向源とのコラボ企画でもあり、冒頭で向源代表の友光雅臣さんが挨拶されています。それにしても、ラフな服装にもほどがある。

友光雅臣さんの挨拶

そしていよいよ、テクノ大祓開始です。神楽殿に神主さんが上がり、音楽と映像に合わせながら一斉に祝詞が唱えられます。

テクノ大祓

これがまた、期待に違わず、かっこいいです! ほーりーはテクノ法要は何度か見ていますが、今回は祝詞ということで、また趣が異なりますね。

お経と違って抑揚をつけて読まれないので、何か淡々としながら身に迫ってくるものがあります。

大祓詞は私たちが知らずに重ねていく罪や穢れを、いろんな神様がリレーのように受け渡しながら消し去ってくれるというもの。その一番手は瀬織津比賣(せおつひめ)という神様で、罪穢れを大海原へと流し去ってくれます。

テクノ大祓・瀬織津比賣

そして速開都比賣(はやあきつひめ)ががぶがぶと呑みこみ、気吹戸主(いぶきどぬし)が地下の国へと吹き払います。さらにトドメとばかりに速佐須良比賣(はやさすらひめ)が、罪穢れを神様しか分からないような場所へと持っていって消してくれます。

境内には多くの人が集まり、この斬新な祝詞に見入っていました。

浅草神社のテクノ大祓

半年分の罪穢れを祓うこの神事。茅の輪は毎年どこかでくぐっていますが、こんな形で参加したのは初めてです。

ふらっと遊びに行ったのに、主催者の皆様が一番前の招待席へとご案内下さった(なんたる役得!)ので、人より罪穢れが3倍増しのほーりーも清められた気がします。

神社には圧倒的に体験が足りない

以前、ほーりーは東北6県の神主さん達の前で、『神社と人をつなぐ7つの要素』を講演させて頂きました。

ほーりーが神主さん達に語った「悪ふざけ」の大切さ

この時に話したテーマの一つは、タブーの超え方についてです。

タブーのライン

このテクノ大祓も、もしかしたら神主さんによっては眉をひそめるかもしれません。しかし社会には「大祓詞」を知っている人は、般若心経などと比べても少数です。

祝詞は特に神様に向けて読み上げられるものなので、参列者はたいてい「何言っているかよく分からない」と思いながら、神主さんの背中を見ています。

なのでもちろん本義は本義としても、それ以外に神道ってワクワクするものなんだという場をどこかで作っていかないと、一般の人の神社自体への興味は薄らいでしまうと思うんですよね。

このためほーりーは、神社はもっと体験を増やした方が良いのでは、という提案をさせて頂きました。

実際に寺社コン(寺社好き男女の婚活イベント)でも、過去に何度か神主さんから「大祓詞」のレクチャーを受けたうえで、神前で一緒に読み上げるというイベントを作っています。

寺社コンで読む大祓詞

この時は「祝詞ってストーリーがあったんだ」ということに驚かれたり、「ここに登場してきたのは、どんな神様?」と神主さんに質問されたり。これはきっと、後ろで聞いているだけでは刺激されない好奇心でしょう。

また、埼玉県神社庁では祝詞の浄写も行われています。この形式は最近他の地域でも少しずつ増えていますが、自分で書き写せば祝詞への理解や親しみもぐぐっと増します。

埼玉県神社庁の浄写

こうした体験は、メインストリームでなくてもいいのです。テクノ大祓みたいな飛び道具はどこかで一回体験するだけでも、通常の祝詞(大祓詞以外のものも含めて)に対する興味が増します。

10割真面目だと誰も寄り付かず、10割脱線だと収拾はつきません。スタンダードな9割9分に変化球がちょいと加わるだけでも、神道の魅力は伝わりやすくなるでしょう。

ということで、、、

神社社会を見ていると、残念ながら「悪ふざけ力」に関してはお寺社会より10年は遅れています。これはどうしても変わったこと、新しいことを排除して、進化を阻害する要因になります。

ただ逆に言えば、お坊さん達も10年前は似たようなものでした。そこに空気を読まない変わり者がぽつぽつと出て、それに触発される形で仏教への接点はどんどん増えています。

さらに言えば、現在は目立つ人が少ない分、お坊さんより神主さんの方が自分をブランディングしやすい時代です。

仲執り持ちが足りない

本を出すにもユーチューバーとして活躍するにも、神主さんにとってはチャンスです。しかしこの時代の空気を読まないのであれば、神社や神道はどんどんスピリチュアルに取って変わられます(本屋の神社関連の棚とか見ると、すごいことになっていますし)。

「悪ふざけ力」と言っても、冷蔵庫に身体を潜り込ませるようなバイトテロ的なものではありません。本人は真剣に、しかし周り(特に身内から)悪ふざけと叩かれやすいものに立ち向かう力です。

なのでテクノ大祓のような変わり種が、各地の神主さんが一歩踏み出す触媒になっていったらと、ほーりーは願っています。

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浅草神社のテクノ大祓

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