永代墓、合同墓はお寺の破壊者か? という質問に答えてみた
先日、東京・築地本願寺で行われた『宗門の未来を考える会』の集まりで、お墓をテーマに講演させて頂きました。霊園会社アンカレッジの顧問になって5年。いつの間にか、ほーりーもお墓専門家になってしまったようです。
専門家と言ってもお墓を作る実務はほぼ何もしていませんが、価値を伝える方ではかなりの知識を蓄えてきました。
そんなわけで、お墓オンリーの講演は初めてでしたが、新たな一歩を踏み出しましたよ。
議論のきっかけになった築地本願寺の合同墓
今回の講習会で設定された大きなテーマは、築地本願寺に作られた大規模な合同墓を一つの事例に、これから小さな個別寺院はどのように進んで行けば良いのかということです。
ほーりーも築地本願寺へ行く前に、改めて築地駅に掲示されていた案内看板を見てみました。
都心部の駅に直結しているアクセスの良さ。浄土真宗本願寺派の東京拠点とも言える格式とネームバリュー。そんなど真ん中に30万円で入れるお墓ができては、小さなお寺はこれから立ち行かないのではないか。
主催されたお坊さんの最初の挨拶を聞くと、そんな危機感があるようでした。
小さなお寺は安売りしてはいけないと伝えたお墓講演
そこでほーりーがお話させて頂いたのは、『永代墓はお寺の破壊者か?』という講演です。
伝えたいメッセージは、そもそも築地本願寺とあなたのお寺は競合するのか、ということです。
都心駅前の一等地にあり、数億円レベルで機械式納骨堂を建設し、何千基ものお墓を売らなければならない立場であれば、築地本願寺とは真っ向からぶつかります。
ですがそんなお寺は、日本にそれほど多いわけではないでしょう。
実際に昨年アンカレッジは累計販売数が1200基を超えたと発表しましたが、提携しているお寺は現在12ヶ寺です。単純に割っても、ちょうど1ヶ寺100基でしかありません。
しかし逆に言えば、100基の販売でも十分にお寺を支えられる価格(と、規模)で販売しています。100万円×100基としたら、1億円です。これは築地本願寺レベルであればともかく、町の小さなお寺なら小さな額ではないはずです。
ここからは少しポジショントークも含みますが、弱者はむしろ小規模・高価格が生き残る戦略です。お墓に限りませんが巨大な相手に安売り勝負をしかけても、結果は見えています。
アンカレッジが目指しているのは、ある程度のお金を出しても仏事や供養を大切にしたい方とのみつながることです。
そんな人は(お寺にとっては残念なことでしょうが)世の中では少数派です。なので築地本願寺のような巨大寺院だと、メインターゲットにしにくくなります。
しかし小さなお寺であれば、何千人もの契約が必要なわけではありません。むしろ少人数でフェイス・トゥ・フェイスに特化することがお墓やお寺の価値を高めますし、その先にある仏教との接点にもなっていきます。
この辺は以下の記事にも詳しくまとめていますので、ご興味あればぜひどうぞ。
樹木葬の競合は増えたけど、お寺と人をつなげるお墓は増えていない
すみ分けとして考えるなら
○巨大寺院:お寺や仏教に興味がない人に、薄利多売で広く接点を作る
○中小寺院:お寺や仏教に興味があるけど入り口がない人に、濃厚な接点を作る
という形が良いのではないでしょうか。
もしも築地本願寺が合同墓を作らなければ、他の巨大企業や公営墓地が代わりに進出するわけで、その場合にはお寺離れがこれからもっと加速します。
その意味でほーりー視点から見れば築地本願寺の合同墓は、お寺社会全体にとってもプラスではと思っています。
ということで、、、
今回は
◯礼拝空間デザイン室『TSUNAGU』代表の森口純一氏
◯一級建築士事務所UA代表取締役の押尾章治氏
◯宿坊研究会代表、アンカレッジ顧問の堀内克彦(ほーりー)
の3者がそれぞれ講演した後、最後にパネルディスカッションも行われました。そこでテーマになったのは、「お墓のブランディング」についてです。
これも言い方を変えれば、価格を上げても求められるお墓にするにはどうすればよいかという話ですね。
そしてそのブランドではアクセス至便、重要文化財の本堂まで持つ築地本願寺にハードでは勝てません。なので如何にソフト面(言い換えれば、お坊さんや亡くなった家族との接点)を充実させるかにあります。
そのための方法論は三者三様でいろいろ出ましたが、方向はびっくりするほど一致していました。なのでアンカレッジの進む道に、ほーりーもまた確信を深めた一日になりましたよ。