ゲイバーのマスター僧侶に変態と言われたほーりーが考えたこと
ほーりーは毎年、お坊さんや神主さん、寺社関連で活動する方が集まる新年会を企画しています。かれこれ10年続けていますが、今年はゲイバーでマスターを務める僧侶・本多清寛さんがお越しくださいました。
そして飲み会の場で、「今、新宿二丁目のゲイバーでマスターをしているんだけど、来週が最終日」と仰っていたので、ほーりーの好奇心アンテナがピピンと反応し、有志でゲイバーにお邪魔させて頂くことにしました。
ちなみに以前、曹洞宗のオウンドメディアについて記事を書いた時に登場したお坊さんです。
曹洞宗S-laboで一番読まれた記事は「僧侶、ゲイバーへ行く」
中身を3行で要約すると
○曹洞宗総合研究センターの学術大会で、オウンドメディア『S-labo』の事例が発表された
○狙いは公式サイトよりフットワーク軽く、仏教に馴染みのない方にお寺情報を届けること
○その中で一番閲覧数が多かったのは「僧侶、ゲイバーへ行く」という記事だった
というお話でした。
ほーりー、ゲイバー初体験です
ということで、今回はゆかいなほーりーと仲間たちで、新宿二丁目に来てみました。集合場所に駅を指定したら「出口がわからん」と言われ、近くにあったお寺の名前を言ったらみんなピンと来て、なぜかそこが集合場所になってしまったフリーダムな皆さんです。
そして、ここが本多さんが週一でマスターを務めていた二丁目寺だ~!
主が直々に、出迎えてくださいました。いや、それなりに緊張していたので、顔を見てほっとしましたよ。
本多さんはなぜ、ゲイバーのマスターになったのか?
そもそもですが、この本多さん。ゲイではありません。そんな方がなぜ、ゲイバーマスターになったかと言えば、一度お店に来た後、店に立ってみないかとオーナーからTwitterで誘われたためだそうです。
それに対して「いいですよ」と、二つ返事でオーケーしてしまったとのこと。なにその、ゆるい展開!
しかしさらにそもそも、なんでゲイバーに足を運んだか。本多さんはもともと、お寺での結婚式を盛り上げたいと考えられている方でした。このため仏前結婚式盛り上げ企画を行なっているほーりーとも昔から情報交換していたのですが、ある時に同性の結婚式は仏教的にどうなのかと研究を始めます。
上で紹介した曹洞宗総合研究センターの学術大会でも、何年か前に同性同士の仏前結婚式について発表されていましたし。
そして至った結論が、同性同士の結婚式は、(曹洞宗の)教義的には問題ない。しかしそれでは机上の空論にすぎません。よし、実際に同性が好きな方の話を聞こうと、新宿二丁目のゲイバー巡りを始めます。
(ちなみに新宿二丁目は歴史的な背景もあり、ゲイバーがたくさんある地域です)
そこからいくつか回った後、マスターとして誘われたという展開でした。
ちなみに本多さんはバーに立つまで、お酒については全くの素人でした。料理は永平寺での修業中に覚えたそうですが、そこでカクテルの作り方を覚えるはずもありませんしね。
しかし副店長についてゼロから学び、一人でお店に立ってからはお客さんに教わっていたとのこと。いや~、なんというか、すさまじい勢いで飛び込むファーストペンギンですよ。
最終日ともなれば、お客さんと目を合わせながらカクテル作っていましたよ。
ほーりー、ゲイバーにて「変態」と言われる
そしてバーに立った経緯や様々なエピソード、最近のLGBT事情や仏前結婚式についてまで話を聞き、良い感じでお酒を飲んでいたら本多マスターから言われた言葉が、「ほーりーさんって変態ですよね」というものでした。
ええ~! ワタシは至ってノーマルですよ。女性、大好き。
あ、でもエンディング産業展の時、「供養女子コンテスト」より「美坊主コンテスト」を楽しみにしていて突っ込まれたことありますが。
しかし、本多さん曰く「安定した職を捨て、宿坊や寺社旅研究という謎の仕事で生活している。これが変態でなくてなんなのか」ということだそうです。
うーん。まあ。そういう観点なら、変態に入る、、、のか? 確かに一般的な人生ゲームにはないコースに迷い込んだと自覚してはいますが。
そして本多さんの話は続きます。
そもそもこの店に立ってから、普通って何だろうと考えるようになったこと。
お寺はその家が子々孫々まで続くようにと祈願します。しかしゲイの方から「私が末代なの」と言われた時に、お寺が絶対善としていた価値観が崩れたそうです。
僧侶として時代を超えて説き続けてきたことが、目の前の相手を無邪気に傷つけるかもしれない。
レッテルを貼らない。普遍のものなど存在しないなどと言えばあまりに仏教的ですが、ゲイバーで1年以上も働かれた本多さんならではの、一周回った説得力でした。
こういうのね。教科書的にお坊さんから言われても全く心に響かないけど、ゲイの方とひたすら話し続けた方の口から出ると、胸の奥までクリティカルヒットしてきますよね。
そう言えば、昆虫食イベントを行っていた大阪の薬師院さんの時にも、似たようなこと感じましたし。
「うおっ」と思える出会いや経験は、大切だと思う
開店時は私の知り合い&本多マスターだけだったので気楽でしたが。時間が進むと、他のお客さんが集まってきます。そのうち何人の方(もしくは全員?)がゲイなのかは分かりませんが、中にはいわゆるオネエ口調の方もいました。
というか、あまりこうした知り合いのいなかったほーりーとしては、オネエ口調ってテレビがキャラ付けのために誇張している部分があると思っていたのですが、リアルに話す人もいるんだなという衝撃がありました。
さらに言えばそのことに対して、「うおっ」と思ってしまった自分がいました。そういうバーだと、知ってて行ったはずなのに。
「男の子たち」って呼ばれたときは、リアルにびっくりしましたし。
ですが耳慣れない言葉にぎょっとしても、実際に接してみると、とても良い方なんですよね。ケーキ(本多さんのラストだったので、これまた別のお客さんが持ってこられたものですが)を取り分けて下さったり。
そして考えたのですが、こういう「うおっ」と思える出会いや経験は、それこそ普通(及び、その言葉の無意味さ)を考える上ではとても大切だということです。
ほーりーがお坊さんの研修会でよく話している『お寺を盛り上げる7つのアクション』でも、一番最初に「教会に行ってみる」ことを推奨しています。
それはお寺と接点のない方が境内に足を踏み入れる時のドキドキを、僧侶の皆さまにも感じてほしいための提案です。
本多さんはゲイバーでマスターをされる時、お坊さん仲間から「これから先、変な目で見られるからやめた方がいいよ」と心配されたそうです。
それ自体は善意の言葉だとは思うのですが、私はこうした場に飛び込むことこそ、とても出家者的な生き方だと思っています。
ということで、、、
本多マスターはよほど慕われていたのか。お店の常連さんから、卒業の花束やケーキが贈られていました。
LGBTは今、盛んにその大切さが説かれています。ですが中には当事者不在の話も数多く見受けられます。私自身もちょっとゲイバーに出入りしただけなので、偉そうなことが言えるわけではありませんが。
ただお坊さんの間で性的少数者の戒名について話題になることもありますが、そうした方は当事者の中にも飛び込まないと議論は進まないでしょう。
そうした意味でも本多さんのゲイバーマスターは、本人にとってのみならず、お坊さん社会や日本全体にとっても価値あるものにつながっていくのではないでしょうか。
実際に曹洞宗のオウンドメディアで、記事がバズッたわけですしね。そしてほーりーも新たな世界に触れることができたわけです。
今回はやりたいことに一区切りついたとのことで、残念ながら本多さんの二丁目寺は終わってしまったわけですが、ここからまた新しい挑戦が生まれることを期待しています。