ほーりーの手抜きを見抜かれたので、言い訳を語ってみるよ
先日、「ほーりーさん、最近あちこちで同じコラムを書いていますよね」と言われました。直近だと『檀家数減少時代のお寺の方策』がそれにあたります。
これは昨年10月に浄土宗兵庫教区さんの研修会で講師をさせて頂いた時の講演がもとになっています。ここで受けた依頼は「これからのお寺の存続策を話してほしい」というどストレートなものでした。
そこでお話させて頂いたのが、収入&布教が両輪で回るモデルを大小さまざまに組み合わせてお寺(あるいはお寺社会)を成り立たせる「石垣型のお寺設計」という概念です。
この詳細はブログにまとめていますので、よろしければこちらをご覧ください。
そして少し前からこの内容をアレンジした形で、『月刊住職』に連載寄稿しています。
さらに時を同じくして全日本仏教会の機関誌『全仏』でも連載させて頂くことになったので、第一回目をこの「石垣型のお寺設計」から書き出すことにしました。
全日本仏教会の機関誌『全仏』編集スタイルに、変革の意志を感じる
講演でお話してブログに書いて、さらに同じテーマで月刊誌や仏教界の機関紙にも載せたわけです。
また、似たことは『お寺を盛り上げる7つのアクション』でも行っています。様々なお坊さん研修会で講演してそのたびにブログに書き、まとめたものは音声付き電子書籍としても販売しました。さらに月刊住職では7カ月にわたってアクションを一つずつ紹介しましたし、お坊さん倶楽部では10回に分けたコラムも執筆しています。
ちょいと、ほーりーさん。ネタの使い回しにもほどがありますぜ、というわけです。
ほーりーはなぜ、あちこちで同じネタを使うのか?
それでほーりーはなぜ、こんな風にあちらこちらで同じネタを書くのか。はっきり言ってしまいましょう。効率が良いからです。
そりゃー、まあ。媒体ごとに違う話を用意するのは骨が折れます。共通して使えるのなら、その方がよっぽど楽です。ただほーりーはこの「楽」以外にも、戦略的にあえて同じ話題を使うことを意識しています。
それは媒体ごとに違う話を用意するより、ほーりーにとっても、出版社さんなどにとっても、そして読まれる方にも三者三様のメリットがあるためです。
ということで、今回はこのネタを使い回すメリットを紹介します。
コストを下げつつ、質が上がる
これはほーりーと出版社さんのメリットです。もしも一つ一つ、違う話題を用意するなら、ほーりーの原稿執筆にかかる時間は増大します。そしてそれは原稿料にも跳ね返ります。
悪く言えば手抜きですが、良い面に目を向けると省力化です。一記事のコストを下げる、もしくは複数記事を書くことを想定して一つの取材に時間&お金を投入できる。
コストを下げつつ、質を上げるためにはネタの使い回しは必須です。
ほーりーの中で、ネタの熟成ができる
これもまた質を上げることにつながりますが、同じネタを何度も書くと、ほーりーの中で考えが熟成されます。
文章を書くことは、頭の中にあるものを整理することです。それを何度も繰り返すと、同じネタでもいろいろな気付きや発見が増えていきます。
自分で言ってしまいますが、ほーりーの宿坊への考察が他者の追随を許さないのは、19年もの研究が土台にあるからです。しかしそんな人間でも「スーパー銭湯について書いてくれ」と言われれば、素人の域は出ません(なので、実際に依頼されたことがありますが、断ってしまいました)。
そして基本的にほーりーの中では「ネタの使い回し=同じ文章を書く」ではありません(転載前提のものもありますが)。複数のコラムを分解して組み立てなおしたり、事例を新たに付け加えたり、ストーリーや視点を変えてみるなど、それぞれに変化を加えています。
もちろん文章の中を細かく見れば、同じ文が含まれることは多々あります。ですが媒体ごとに特徴や読者層は異なりますし、そもそも指定される文字数によっても構成は変わるものです。
なので同じネタを違う形で、繰り返し書くことは重要です。それは自分の進化につながります。
(余談ですがほーりーはいくつかのお寺と契約して情報発信のレクチャーもしていますが、この「同じネタを違う形で、繰り返し書く」重要性はよく強調しています。そしてこれを伝えると、ブログ更新へのプレッシャーも薄れるのでお勧めです)
たいていの方は、ほーりーなど気にも留めていない
ネタの使い回し戦略は、実はみうらじゅんさんの仕事術にヒントを得た部分があります。
お寺好きクラスタの間では仏像の魅力を広めた教祖様的扱いですが、それ以外にも「ゆるキャラ」という言葉の生みの親であり、「とんまつり(変なお祭り)」「いやげもの(嫌なお土産)」「マイブーム」など、様々な流行を作る神様です。
その著書、『「ない仕事」の作り方』では、こんな手法を紹介しています。
「ない仕事」の作り方 みうらじゅん 著 |
私は、女性ファッション誌からエロ本まで、読む層や本屋の棚も全く違う、多種多様な雑誌で連載をさせていただいています。なので、そのときハマっている「マイブーム」について、一気に全部の雑誌に書くのです。
(中略)
「あれ、また、いやげ物というのが載っている。もしかして流行っているのかな?」と。
みうらじゅんさんレベルでさえ、世間の人は「ネタの使い回し」とは思わないそうです。だとしたらほーりーなんて、それほど手広い分野でコラムを書いていなくとも、差しさわりあるはずがありません。
嬉しいかな。悲しいかな。またこの話題ですかと気が付いちゃう方は、ほーりーの熱烈ファンとして認定しちゃって良いレベルです。
メディアはタイトルしか見ない方も多い
これはほーりーのコラムを掲載して頂く出版社さんやウェブメディアのメリットです。文章にはいろいろ変化を加えるほーりーですが、タイトルや単語は自分で作って統一します。一番上で挙げた『石垣型のお寺設計』を例に取れば、この「石垣型」という言葉は強く意識して作りました。
そうすると何が起こるか。たいていの方は雑誌やウェブメディアなど、端から端までは目を通しません。まずタイトルだけを見て、中身を読むかどうかを判断します。
そしてそこに以前見た言葉と同じ単語があれば、まったく新規の言葉より中身を見てくれる確率が高くなります。
つまり他の媒体で「石垣型」という言葉を見た。そこではスルーしてしまったけど、次の媒体にやはり「石垣型」という言葉が載っていた。さらにまた別の場所にも「石垣型」があった。そうやってステップを踏むうちに気になってきて、ページを開いてしまうのです。
すると出版社さんサイドから見たら、「え、他のところと同じネタなの?」と思われるかもしれません。しかし不思議なことにネタは揃えていた方が、人を惹きつける力が強くなるわけです。人間ってそのくらい、ゼロからの遭遇には警戒心が働くので。
寺社好き男女の縁結び企画『寺社コン』なんて、商標登録までしていますしね。
繰り返し読むことで、脳みそに定着する
ほーりーは、勉強に使うと決めた本は7回読むことにしています。まあ、本によって回数は増減しますが、一回読んで終わっても、記憶はあっという間に消えていきます。
なので時間を置きながら繰り返し同じ本を読むことは、大切なことと考えています。
しかしこうしたことをする方は、世間では少数派です。で、あればほーりーがコラムを書いても、間違いなくあっという間に忘れ去られます。一説によると人は何かを学んでも、48時間以内に80%は忘れてしまうのだそうです。
単に面白い読み物を提供したいだけであれば、それでも問題ないでしょう。現にほーりーは10~20代の頃は小説家を目指して2回の受賞歴があります。そういう文章の書き方も、嫌いではありません(小説だって人生を一変させてしまうパワーを秘めたものもありますので、一過性で終わるものばかりではありませんが)。
ですが今の大きな関心は、勇気をもって一歩踏み出してくださる仲間を一人でも増やすことです。お坊さんの前で冷や汗書きながら講演するのも、一生懸命文章を書くのも、いい話だったねだけで終えられるのは本意ではありません。
だとしたら、あちこちで同じメッセージを発することは、ほーりーを追いかけてくださるファンの方にも大きなメリットです。忘れても忘れても、しつこく思い出させてやるぞという意義込みで書いております。
ということで、、、
『お寺を盛り上げる7つのアクション』の第5アクション「お寺をバリアフリーにする」では、同じ情報を3回発信することを課題として挙げています。
ちなみにこれも概念に、「仏の顔は3度から」と名前を付けています。名前を付けることは繰り返し情報を伝えた時に、前と同じものだよと相手に知らせる役割があります。
逆に言えば名前がなければ同じと思われにくいわけですが、それでは繰り返し効果が薄れるため七転八倒しながら言葉を作っているのです。
そんなわけで、あちこちで見つけて「手抜きジャネーノ!」と言ってくださったほーりー中毒なファンの方に、感謝と共にメディア戦略を種あかししてみました。