独創性のない名産品をオンリーワンにして、地域起こしをする逆説的な方法
私がウェブサイトのコンテンツを作る時、大切にしていることが一つあります。それは情報を百個集めることです。
例えば宿坊研究会では、最初に100軒の宿坊を紹介することを目指しました(ちなみに今は300軒)。これは一つ、二つの宿坊を紹介しても日記に過ぎず、比較検討できる数がそろって初めて情報としての価値が生まれると考えたからです。同様に座禅、写経、精進料理、縁結び、お守りなども、それぞれ100〜300程度集めて紹介しています。
似たようなお話は、世界最大級の寺社フェスを手がける向源代表の友光雅臣さんも仰っていました。「向源」はお寺や神社、日本文化の体験ワークショップを多数集めたイベントです。今年はゴールデンウイークに増上寺で開催されましたが、2日間で6000人の来場がありました。
そしてこの寺社フェスのヒントになったのはフジロックなどの音楽フェスだそうですが、これは多くのミュージシャンが集まることで、たくさんの音楽ファンを魅了するイベントです。すっかり定着してきたB級グルメもそうですし、アニメや漫画の同人誌サークルが集まるコミケも形式としては同じでしょう。
地域起こしをしようにも、うちの町には何もないからな~。そんな話をよく聞きます。そんな時に、「いやいや、本当に何もない町なんてないでしょう。魅力を発掘しきれていないだけですよ」なんて話は日本中どこでも繰り返されていそうですが、目の前にあるものが目の前にあるままで、世の中に通用するなんてことはまずありません。そこには必ず磨いて光らせる作業が必要になります。
そこで地元にある、どこにでもありそうなありふれたものを磨いて輝かせる秘伝。例えばそれがおせんべいだった場合、日本中のおせんべいを食べ比べて紹介したデータベースを作ってみてはいかがでしょうか? 例えば個別のおせんべいはそれぞれちょっと変わっている程度でも、それが100種類集まったらこれはとんでもなく面白いことになります。
そして変わった味のおせんべい、贈答用のおせんべい、料理に使うおせんべいなど、日本各地のおせんべいを探す人が集まるポータルサイトが出来上がります。さらにそうした情報サイトを作っている地域のおせんべいとなれば、まさにおせんべいの研究をし尽くした人たちが関わるおせんべい。おせんべいの中のおせんべいとして注目度は激増です。
もちろんこれは、おまんじゅうでも、お祭りでも、景色でも応用可能です。ついでにもしも先行した類似データサイトがすでにあるなら、テーマをブレイクダウンすることで切り口を変えられます。とにかく辛いおせんべいだけを集めるとか、裏切られて部下に討たれた戦国武将に絞るとか。
地域の名産で慣れ親しんだおせんべいには、たくさんのこだわりがきっとあると思います。ですがどんなにそのおせんべいの味や特徴、こだわりを紹介しても、消費者にとってみればそれはどこにでもある広告に過ぎません。
百個紹介するとなると、なんでライバルを紹介するのにこんなに頑張らなきゃいけないの? と、むなしくなるかもしれません。ですが実はその先には、ライバルを圧倒できる明確な差別化が生まれるのです。