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お寺の境内は一般開放が必須か、弁護士や行政書士に聞いてみました

開かれた山門

 先日、宗教法人はなぜ非課税とされているのか。そしてその根拠となる寺社の公益性についてブログで述べました。

 宗教法人に課税すべき論の方も認めていた、3つの寺社の公益機能

 内容を簡単にまとめると、お葬式や地域の寄り合い機能などで恩恵を受けている方は減ったものの、「建物や文化財など、歴史・文化資産の保護」「広く一般に境内が解放されていること」「困窮者支援や災害時の避難所などの活動」の3点では公益機能を認めている方が多いという話です。

 例えば都心の寺社に固定資産税がかかるようになれば、境内をつぶしてマンションや駐車場に変わるケースが増えていきます。するとその分だけ街中の開けた空間や緑は失われますし、都市環境も悪化するでしょう。

 宗教的な場が日常に溶け込んでいるということは、(私が言うのもなんですが)存外に馬鹿にできないものです。大阪大学の大竹文雄教授の研究によると、子供の頃に寺社がある地域で育った人は、そうでない人に比べて幸せを感じる割合が高かったとも報告されていました。

 しかし公明党が連立与党から離脱して以降、宗教法人への課税について意見を目にする機会が増えてきました。これがすぐに制度改定につながることはないでしょうが、お寺が境内を開放して都市計画の補完的な役割を担うことは、これからもっと大切になっていくと考えられます(なお、神社はほとんど出入り自由な印象があります)。

そもそも宗教法人の境内は、出入り自由が必須なの?

 この話に付随して宗教法人の公益性に関する定義を調べていたら、私が持っている『宗教法人の法務・会計・税務』という本には以下の記載がありました。

 「礼拝の施設は、閉鎖的な場所ではなく、一般的には参拝の目的で、誰でもが自由に出入りできるものであることが必要とされています」

宗教法人の法務・会計・税務

 この部分を見つけた時、私にはかなり衝撃が走りました。ほーりーはこれまで「できるだけお寺は門を開けていこうよ」というスタンスで講演したり、多くのお坊さんと話をしてきました。が、その前提は間違っていて、これだとそもそも境内を開放するのは宗教法人にとって必須事項と読み取れます。

 しかし街中を見渡せば、門を閉じているお寺なんていくらでも見つかります。そんなわけでいくら何でも実態にそぐわないぞと上記文章の根拠を探すべく、宗教法人法を読み漁ったのですが見当たらず(長い文章なので、見逃してなければ)。ついには「こりゃ~、分からん」と、宗教関連に詳しい弁護士の先生にも質問してしまいました。

 すると文化庁が発行している『宗教法人の事務』という本の中には、「礼拝の施設は、私邸の中の施設のように閉鎖的なものであってはならず、公衆に解放されていることを要します」と記載がある旨、教えて頂きました。

 ただこの部分の解釈は、他の専門書などでも幾つか分かれているそうです。このため一般に解放することは絶対事項とまではせず、宗教活動に問題が出る場合は門を閉じたままでもやむを得ないくらいにしておくことが妥当ではとのことでした。

しかし、宗教法人設立時には出入り自由が必須らしい

 そしてこうした話をfacebookで紹介したら、これまた宗教関連にとても強い行政書士の勝桂子さんから、(東京都の場合ですが)宗教法人設立時には「誰でも入れなければいけない」「マンションの場合は1Fか、2Fであっても外階段で直結できなければならない」といった要件があると教えて頂きました。

 補足すると宗教法人は優遇が多いので、設立前には施設や宗教活動の実績などが厳しくチェックされます。ただ一度認証されたら好きにしてという感じなので、すでに宗教法人格を取得しているお寺について、新たに門を開けなさいと指導されることはないようです。

 また先に述べた文化庁の文章も、門を開けているかどうかで裁判として争われたりなどがないので、問題となっていないだけという側面もあります。

 なのでこうした事項を総合的に見て判断するなら、実際に指導されることまではないものの、公的機関はほーりーのスタンスよりも厳しく境内の出入り自由を求めている印象を持ちました。

ということで、、、

 境内に一般の人も入れるようにするのは、簡単なことではありません。その二大ハードルは破損時の対応と防犯です。例えばお寺や神社は普通の住宅に比べて、10倍以上も盗難被害に遭う確率が高くなっています。なのでこうした現実を無視してとにかくお寺は門を開けるべきと言うのは、ちょっと乱暴かなと考えています。

 一方で先日、門前に「ここは私有地であり、公共施設ではありません。知らない方や不審者などの立ち入りを禁止します」的なことを貼り出しているお寺を見かけました。このように無関係な人は締め出して当然という考えも、宗教法人としては問題があります。

 なので例えばいつでもは無理な場合も日程や時間を決めたり、人が在住している時や行事がある時とか、境内のこの部分はOKといったゾーニングなどしてできる範囲で門を開けていくことは必要になっていくでしょう。

 関係者以外立ち入り禁止を貫くお寺が多ければ、宗教法人非課税制度への風当たりも強くなります。増税や物価高が続いて生活の苦しさが増していけば、これまでスルーされていたことにも不満は高まりやすくなるものです。

 なので最初に述べた通り、お寺が公益に資すると多くの方(=無関係な一般人)に認められていくことは、結局はお寺にとってもメリットが多い話になります。

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