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宗教法人に課税すべき論の方も認めていた、3つの寺社の公益機能

人で賑わう境内

 公明党が連立与党から離脱して以降、政治の世界は大きな変化を遂げました。ほーりー的には期待できる方向と、これはちょっとという方向とがありますが、その辺は政治ブロガーにでも任せるとして。

 (これから円安が一気に進むと書いたりしたのは、今のところ大当たりしていますが)

 今回はお寺や神社の影響が大きそうな、宗教法人への課税議論について取り上げます。facebookに書いていたらいろんな方と意見交換できたので、ブログにまとめることにしました。

 まず公明党(そしてそれを支える創価学会)が政権から離れたとしても、それだけですぐに宗教法人に課税される流れにはならないでしょう。ただこれまで抑えられていたふたが外れた気配は感じますし、著名人やSNSではこうした発言をされる方が増えました。

 そして世の中は増税や物価高など、生活の苦しさが増しています。このため何らかの形で不満が高まり火がつけば、一気に政治イシューになることも予想されます。

宗教法人に税金がかからない理由

 そもそもなぜ、宗教法人には課税されないのか。これは制度的な観点と感情的な問題と2つの側面があります。

 まず一つ目の制度的な観点ですが、基本的には「公益法人等」に含まれるためです。これは専門家によっても幾つか言説がありますが、大雑把に言い換えるなら、本来は国や自治体が行うべき活動や用意すべき設備などを肩代わりしているためとなるでしょう。

 そしてそれでは、お寺や神社が肩代わりしているものとは何なのか? これは二つ目の感情的な問題にもつながりますが、時代をさかのぼればお葬式やお墓だったり、お祭りや行事だったり、地域の寄り合い機能だったりなどは、大多数の方が恩恵を受けていた(ゆえに公益性が広く認められていた)ものでした。

 しかし現代ではこうしたものに、ほとんど関わることのない方も増えてきています。

 例えば葬儀は象徴的です。この言葉は「葬」=火葬したり土に埋めるなど、ご遺体を処理することと、「儀」=儀式や供養、そして遺族の心をケアすることに分かれます。

 このうち前半の「葬」については、今でも公に関わる部分が強い領域です。もしも亡くなった人がその辺にゴロゴロ放置されていたら衛生上の問題がありますし、治安悪化や社会の心情不安も招きかねません(厳密には「葬」という文字にも弔いの意味はありますが、ここでは分かりやすくするため省きます)。

 一方で「儀」の部分は、公の概念が揺らいできました。一昔前は亡くなったことを広く社会に知らせる意味もありましたが、現代では極めてプライベートなものと認識される方も増えています。

 実際に東京では火葬料金が高騰していることを問題視し、東京都が実態調査に乗り出したり、小池百合子都知事も体制を強化する方針を表明しています。しかしお葬式の小規模化や直葬が広がっていることについて、税金を使ってお葬式の料金を下げましょうといった働きかけはあまり見受けられません。

 またお祭りや地域の寄り合いに至っては、さらに関わりの有無がはっきり分かれているでしょう。住んでいる場所にもよりますが、賃貸マンションなどでは隣の部屋にどんな人が住んでいるか分からないなんて普通にあります。

現代でも認められている寺社の公益性とは?

本堂へのお参り

 それでは現代でも寺社が残している公益性とは何か? 私が宗教法人の課税について議論している掲示板を読み漁ったところ、お寺や神社に課税すべきという厳しめな立場の方でも、以下の3点については認めている人が一定数いる印象でした(もちろん、何も認めるものはないという方もたくさんいます)。

1.建物や文化財など、歴史・文化資産の保護
2.広く一般に境内が解放されていること
3.困窮者支援や災害時の避難所などの活動

 1の建物や文化財等の保護については、保管やメンテナンスに多大なコストがかかるものです。そして日本の中でこうした資産の多くは、寺社が所有しています。

 例えば大阪府教育委員会文化財保護課の資料(pdfファイル)によると、平成22年6月29日時点で国指定文化財建造物は4363棟あり、そのうち神社仏閣等の宗教施設は2310棟(52.9%)と記されていました。

 こうしたものはある程度の補助金制度はあるものの、所有者の負担もシャレにならないくらいに求められます。なのでもしも寺社に税金がかかって経済的により苦しくなるならば、これらが放置、解体、売却されやすくなることも考えられます。

 また2の境内解放については、防犯と破損対応にコストがかかります。防犯については以前に警察庁(犯罪件数)、文化庁(宗教法人数)、国土交通省(日本の住宅戸数)のデータからほーりーが試算したところ、お寺や神社は一般住宅の10倍以上、盗難被害にあっていました。

 単純に考えれば境内に人が出入りできるなら、それだけセキュリティにお金がかかのは当然です。

 破損については参考になる統計データが見つかりませんでしたが、壁や柱に文字が彫られてしまったり、トイレが汚されて使用不能になったなんてニュースも出ていました。

 そして3の困窮者支援や災害時の避難所については、これこそ本来は政治の仕事であるべきですが、実態として税金だけで全てをまかなうことは困難を極めます。

 東日本大震災以降、行政と寺社の間で防災協定が結ばれる事例が増えました。また子ども食堂を開いたり、困窮者への炊き出し活動に従事する方も増えています。

 ですがこれだって、活動や環境の維持にはお金がかかる話です。特に相手が困っている方であるだけに、無償どころか手弁当で動いている方も少なくありません。

と、いうことで、、、

 これからもしも宗教法人への課税議論が進むとしたら。ほーりーとしては多くの文化財が散逸し、日本の歴史が取り戻せなくなる可能性を危惧しています。また特に都心部で固定資産税がかかるようになると、境内の一部をマンションや駐車場にせざるを得なくなる寺社も増えるでしょう。

 宗教法人に課税すべきという方もこうした予測を伝えれば、「それはちょっと」と感じる方も少なくないと思われます。

 なので上記3点のような活動は積極的に行いつつ、こうしたものの維持には相応のコストがかかることを、世間に説明していくことも重要です。わざわざアピールするのも抵抗を持たれる方はいるでしょうが、社会にフリーライドしていると思われることは危険です。

 生活が苦しくなればなるほど、社会は分かりやすい敵を求めたくなります。外国人への対策が矢継ぎ早に打ち出されたことなどは、まさにそんな感じですし。お寺や神社は維持した方がメリットがあると(大多数の無関係な方に)思って頂くことは、今後ますます大切になっていくのではないでしょうか。

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