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供養・埋葬モデルがないLGBTの映画を、お寺に貸出してます

先日、LGBT(性的マイノリティ)の勉強のため、緑泉寺で行われた『空と、木の実と。』の試写会に参加してきました。

このドキュメンタリー。ほーりーが顧問を勤める霊園会社アンカレッジが、協賛して作られています。アンカレッジはLGBTの方でも安心して入れるお墓を開発しており、この映画を広めることもその一環です。

LGBTは言葉としては、ずいぶん広まってきました。しかし人によってその理解はまちまちで、「LGBTに対応したお墓」などと聞くと、なんか流行りに乗っちゃってと思われるかもしれません。

ただ現在のお墓は婚姻関係にないカップルに、差別的な仕組みになりがちです。これをアンカレッジの伊藤社長はハンセン病の歴史と共に紹介していました。

アンカレッジの伊藤社長

ハンセン病患者の強制隔離を定めた「らい予防法」は2001年に違憲とする判決が下され、当時の小泉純一郎内閣総理大臣からも謝罪がなされています。そしてそれ以降、仏教界も差別解消に向けて動き出しましたが、本来であればお寺から率先して動いても良いものでした。

LGBTも流行り廃りやビジネスの話ではなく、人権の問題です。まだまだ社会で理解が深まったとは言えませんが、それだからこそお坊さんたちは前に出る必要があるのではと、挨拶で熱く語っていました。

自分の性とアイデンティティ

自分は男性なのか、女性なのか。大半の方はこうした問いと、人生をかけて向き合うことなどないでしょう。『空と、木の実と。』の監督を務めた常井美幸さんは、この映画を通してそれぞれのアイデンティティについて考えてほしいとお話しされていました。

ほーりーも自分が男性であることに、疑いを持ったことはありません。そして身近にこうした悩みを持つ方もいない(いたかもしれませんが、打ち明けてきた方はいなかった)ため、LGBTという言葉を最初に目にした時は、まだあまりピンときてはいませんでした。

しかしこれはそろそろ社会的な概念として、知っておかねばと感じて出かけたのが、去年の初めに行ってきた新宿二丁目のゲイバーです。こちらでゲイの方に声をかけられ、思わず「うおっ」と思ったことは貴重な経験でした。知らないこと、慣れないことには悪気はなくても身構えます。これは人間の防衛本能です。

ゲイバーのマスター僧侶に変態と言われたほーりーが考えたこと

上記はその時の体験記事ですが、この「うおっ」と思うことは、理解へのファーストステップです。机上でいくら言葉だけ覚えても、それだけでは足りません。実際に目の前で向き合った時に何を感じるか。そして2回目、3回目と繰り返した時に、その「うおっ」がどのように変わってくるのか。その感覚が理解を養います。

これは昆虫食とも似ています。虫を食べるなんて気持ち悪いと思う方もいますが、世界では20億人が日常的に食しており、人類の中で昆虫食はマイナーな存在でもありません。これもまた知識として知るだけでなく、実際に口に入れてみると、意外なおいしさがあります。

昆虫食を勧められ馬鹿にされたと怒るお坊さんに、仏教は伝えられない

そしてお墓に関して言えば、今はどんなに愛し合ったパートナーでも、法律上の親族関係にないばかりに同じお墓に入れない人がいます。また、お墓に刻む戒名も宗派によっては男女で分かれており、自分が認識する性より戸籍の性が優先されがちです。さらに言えば、Xジェンダー(男女いずれでもない人)の場合など、今の枠組みでは対応しきれないこともあります。

長年連れ添った相手だとしても、パートナーと認めてもらえずにお骨を親族に持っていかれてしまう。自分は男(あるいは女)と思っているのに、違う性別の名前を刻まれてしまう。生まれてからずっと性別で悩み続け、お墓でさえ自我意識がへし折られる。これはもう当事者にとっては、とんでもない苦しみでしょう。

そうした苦悩のほんの一端かもしれませんが、心の中を垣間見せてくれるのが今回視聴したドキュメンタリー映画『空と、木の実と。』でした。

性同一性障害を持った方の心の物語

『空と、木の実と。』は、性同一性障害の診断を受けた小林空雅(たかまさ)さんの人生を9年間追い続けた映像記録です。18歳で胸を切除し、20歳で子宮と卵巣も取り、自分のアイデンティティを模索する日々。

一口に性と言っても、様々な種類があります。LGBTはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの総称ですが、Facebookには50もの性別選択肢があります(日本語設定では「女性」「男性」「中性」の3つですが、カスタム欄に自由表記可能)。

さらに性自認や性指向を定めないクエスチョニング(またはクィア)を含めた、LGBTQや、これらに変わるSOGIなんて言葉もあります。もちろん現在進行形で新しい言葉や定義も生まれているでしょうし、それらを逐一把握したり、この人は○○だからとレッテルを貼らずに見るなんて、お釈迦様でもなければ現実には不可能です(もちろん少しでも、理解しようとする姿勢は大切ですが)。

ほーりーも家族や親友レベルの付き合いでもなければ(それであっても?)、ちょっと会話しただけの相手をありのままに見て理解していく自信はありませんし。今回視聴した『空と、木の実と。』でも、その想像以上の複雑さには驚きました。

まずは知って、知識を得ること。そして少しでも理解を深めながら個人の努力でどうにもならない部分は、こうした方々を制度で支えていくべきです。アンカレッジは霊園会社なので、それがお墓という分野でということになります。

ということで、、、

この『空と、木の実と。』は現在、お寺であればダイジェスト版を無料で貸し出しして、試写会などに使用して頂けます(よければ参加者から、本映画制作者たちへの寄付金を募っていただけるとありがたいです)。ダイジェスト版と言っても42分もあり、しっかりと見応えのあるものです。ほーりーも見たのは、このダイジェスト版です。

もしうちのお寺でもイベントや勉強会などで視聴して、みんなで考える機会にしたいというところがあれば、ぜひぜひアンカレッジに問い合わせてみてくださいませ。

アンカレッジの「空と、木の実と。」紹介ページ

またアンカレッジでは、法律の専門家などと一緒に『LGBTカップルと墓地管理者のためのガイドライン』作りにも取り組んでいます。例えば現在、多くの墓地管理者が厚生労働省により作成された「墓地使用に関する標準契約約款」に準拠した形で規定を定めていますが、こちらにはお墓使用者の「親族及び縁故者の焼骨を埋蔵することができる」と記されています。

ここに「当該使用者を祭祀主宰者と指定した者」も追記すると、親族や縁故者以外にLGBTカップルのお骨を納めることが可能になります。

こうしたものも、多くの方を巻き込みながらより良い仕組みをみんなで作っていけたらと考えています。性的マイノリティな方を受け入れるなんて言ったら、檀家さんたちの反応が怖いというお寺の方ほど、少しずつでも歩んでみてはいかがでしょうか?

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アンカレッジの伊藤社長

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